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英雄となった愚か者 1

ハシュカレ領をドーヌ領へ向かうために西へと走る馬が十数騎。



う~ん、どうしたものかねぇ。


昨晩、つい調子に乗ってハシュカレ代行領主殿へ“シーベルエとガンデアを止めてやる”と大見得を切ってしまったが、そんなことを出来る力は俺にありません。

どうしたものやら馬に揺られながら想い悩んでいると


「どうした、ネイスト?考え込んでいるようだが?」


「いやぁ、昨日の俺の発言なんだけどさぁ」


この際だから、ユキちゃんに相談してみましょうかな?


「昨日のネイストはさすがだったな!…少し格好良かったぞ」


何故か頬が赤く見えるユキ。その期待感を込めた素敵な笑顔が眩し過ぎるよ。

「何かの大群が来るぞ!…こいつは魔物か?」


ジンによる警告が発せられる。


大群だろうが魔物ごときに負けるメンバーじゃない。更にこちらにはティシア・ハシュカレ筆頭の鎗騎隊小隊が付いている。


負ける要素は無い。その見積りは甘かった。


迫ってくる魔物の大群。ジンいわく、ざっと50。本当に大群。何でぇ?

此方は20にも充たない。でも、そんな数の差を埋める精鋭がいる。魔物ごときに…


「クレサイダがいるぞ!」


ジンが更なる警鐘を鳴らす。

うん、魔物のこんな大群が自然発生はしないですよね。


魔物の第一陣、性懲りのなく狼さんたちが到着寸前、アレンとカーヘルが馬から飛び下りる。俺は真似したら骨折だな。


アレンたちが剣を振るう前に鎗騎隊の鎗が魔物を貫き出す。さすがに騎兵は速い。しかし…


「全員、避けろぉー!」


俺が叫ぶが避けるのはほぼ無理だろう。

上空から弧を描き落ちてくる大量の火球。俺たちの移動が止まったところでクレサイダは敵味方構わず焼き払いにかかってきた。


「やってくれるもんだねぇ、アレン君。ペグレシャンを少しは使えるようになったようだね。あのリンセン・ナールス見たいでむかつくよ」


声が届く位置に来たクレサイダが奇跡を起こしたアレンに負け惜しみを投げかける。


アレンとペグレシャンとの付き合いの長い俺も唖然としちまった。


空から広範囲に落ちてくる火球を光を宿したペグレシャンを一振り。それだけで全ての火球が切り裂かれ消滅する。正に伝説を見た。


「でも、やっぱり君たちごときに扱いきれる物じゃないんだよ、それはね。僕に渡して貰おうか。セレミスキーと一緒にね」


クレサイダの皮肉。しかし、今のペグレシャンの発動でアレンが消耗しているのも目に見える。やはり、ペグレシャンはかなり魔力を喰うものらしい。そんなアレンに魔法を放つクレサイダ。コツを掴んだのか、また光るペグレシャンで防ぐアレン。でも、アレンの魔力は持つのか?


アレンの助けに入りたいが、こちらも魔狼共の対応に手一杯。セレミスキーを使う暇さえ無い。


「やっぱり、まだまだ使えこなせて無いねぇ。魔剣ペグレシャンは全てを切り裂ける剣だよ。君には勿体ないよ」


好き放題ほざくクレサイダ。アレン、てめえにも使いこなせねぇよって言ってやれ。


「…僕は確かに元の持ち主のナールスさんよりはペグレシャンを使えこなせない。それでも、貴方をペグレシャンで斬ります」


アレンのクレサイダへの突撃。クレサイダが魔術防壁を展開するがアレンは紙を切るように一振りで簡単に突破。身をよじるクレサイダに刃が掠める。


「ハッ、ナールスがペグレシャンの元の持ち主だって、馬鹿馬鹿しいね。ナールスはペグレシャンを盗んだコソ泥だよ」


この後、600年前の生き証人クレサイダは語る。


俺が知る歴史を白紙に戻す事実を。

クレサイダの言うコソ泥の仕出かしたことを。

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