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ハシュカレ家の事情 2

俺たちの前へと出るカーヘル。


「ライシスさん、ここは僕に任せてください」


いや、俺に任せられても困りますから、ドーヌ卿のご子息様にお任せしますよ。向けられる多数の鎗に怯まず歩み出るカーヘル。


「カーヘル!カーヘル・ドーヌなのか!」


おっと、この女隊長殿はカー君のお知り合いのようだ。周りの騎兵たちにも動揺が起きる。


「そうです。久しぶりだね。ティス」


馬上から降りるティス(?)さん。


「本当にカーヘル・ドーヌなのか?シーベルエで殉職したと聞いたのだが…無事だったんだな…」


「色々と厄介なことになってね。とにかくハシュカレ卿に話をしたい」


「父上と長兄、次兄ともにドーヌ領に出兵している。現在、このハシュカレ領は私が預かっている。要件は私が聞こう。とにかく私の家に行こう」


そう言うとカーヘルに部下を一人馬から降ろし、カーヘルに乗るように告げる。あれ、俺達は?


「ティス、後ろの皆さんの分もお願いします。皆さんも疲れていますので」


うん、俺も歩いて着いてこいは勘弁だ。ティスさんから溜め息一つ。


「歩かせろ。カーヘルは従者に優しすぎるぞ」


そうです。只今だけは私どもはカーヘル・ドーヌの忠実なる下僕です。


「一応、彼女は僕の上官ですので、下官の僕が馬上では…、あと、皆さんも僕の友人たちですから、無理ならば僕も歩いて行きます」

カー君!俺は君という友人の素晴らしさに何故今まで気付かなかったんだ。


渋い顔をしながらも更に部下を降ろして馬を用意してくれるティスさん。


「私の“一応”部下は本当に顔が利くなぁー」


一応にアクセントを置くニーセ。カー君、今のうちに謝った方が良いぞ。



ハシュカレ家。小さな城だった。玄関をくぐった俺の感想。百人は入るだろうホールには十人横一列に並んでも通れる大階段。上に吊るされたでかい宝石に見えるシャンデリアが光を広すぎるホールにまんべんなく注いでいる。ハシュカレ家、恐るべし。

あのシャンデリアどのくらい金が掛かっているのかな?そのぐらいしか考えられない庶民派な俺にはここは敷居の高過ぎる場所である。


「皆さん、行きますよ」


足の歩みの遅い俺やアレン、エル、ユキの庶民組に比べて怖じ気付く事なく、ティスさんに続いてすらすらと足を進めるカーヘル。それにすらすらと続くジン。貴族とは格の差が違うのだろう。

というか、ニーセさん、貴女は庶民組なのに何故そんなに堂々と?度胸の差を思い知らされました。


30人同時で食事が出来るだろう大食堂。きっと、ハシュカレ家は30人家族なんだ。そんな馬鹿な事を考えながら、長いテーブルに並ぶ椅子に腰をかける俺達。


「紹介が遅れました。ハシュカレ領領主代行のティシア・ハシュカレです」


馬の上で鎗を構えていたとは思えない品行方正な貴族子女様がそこにいた。そして、御名前はティシアですか、カー君、お気を付けを。


そこからは、俺たちの自己紹介の番。俺は辛いですよ。だって、ジンとかはレッドラートだし、ユキ、エル、ニーセさんは軍役職があるし、アレンだって元騎士団員、俺だけですよ、名前しか言うことが無いの。必死に元トーテスの研究員だったことをお伝えしたけど。

最後の俺の自己紹介でハシュカレ代行領主殿の眉が不信に歪む。


「失礼ながらネイストさんは本当に只の歴史学者ですか?」

いや、本当に只の歴史学者です。改めて確認したそうそうたるメンバーと一緒に旅をするのに相応しくない只の歴史学者です。


「ティス、正直に話します。ライシスさんは、シーベルエ国王に意見出来る人物であり、あのシーベルエの知将スミル・マードンを戦術で打ち負かすほどの人物です」


「なぁ!これは大変御無礼を働きました」


ハッハッハ、苦しゅうないぞ。カー君、君は正直にどころか嘘実しか言ってないぞ。


「それで、その皆様方が父にどのようなご用件で此方に?」


よし、カー君、現状をお教えするんだ。あれ、何で俺を見ているの?他の皆さんも?…分かりましたよ、皆さんを代表してこの只の歴史学者が貴族子女様に分かりやすく御高説致しましょう。


もしかして、俺って只の説明要員ですか?

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