闇に覆われた洞窟で 4
日の光が無いために時間感覚が薄れている。もうどんぐらい経ったのやら
俺に引っ付いて寝ているユキ。美女に抱き着かれて寝られる、俺の人生で経験のない体験にやっと俺の精神が順応してきた。
ですが、腕や肩が痺れて来たのですが。ユキちゃん、この態勢は寝辛いでしょ。地面に降ろしてやろう。
弱まったユキの腕を外しにかかる俺。ユキの手を触ると更に力が増す。寝てるんだよね。ユキちゃん。
「アッ、ライ兄、居た!大丈夫だった?」
どうやら、アレンたちが探しに来たようだ。
あれ、どうしたアレン?顔が朱色に染まって…!
ウン、君は大いなる誤解をしているよ。これは決して如何わしいことをしているんじゃないよ。
「ライシスさん、ユキさんは無事ですか?…ゴメンナサイ」
エルちゃん、何故に謝る必要がある?勿論、俺も謝る必要は無いよね?
カー君、言いたいことがあるならはっきりと言ってくれ。その無言の責めはやめて下さい。
とにかく、ニーセが来る前にユキちゃんを俺から引き剥がさなくては!慌てて、引き剥がそうとする俺。
「…イヤダ」
艶やかな寝言を漏らすユキちゃん。事態は悪化。俺とユキの密着度は更に増して、俺の肩はユキの顔置き場に…。
「あー、スマン。もう少し気を利かしてゆっくり来るべきだった」
ジン、その気を俺を窮地から救う為に利かせて!ユキちゃん、本当にそろそろ離してくれないと…
「ウワァ~、二人はラブラブだなぁ~」
地獄の使者が来てしまったか!心なしかニーセ様の声がいつもより冷たく感じます。
「私たちが貴方たちを心配して探してる間に君たちは何やってるのかな?」
勘違いでは無かったようだ。ニーセはお怒りだ。そして、俺たちをかなり心配してくれたようだ。
「…あの、ご心配をお掛けしました」
更に目が細くなるニーセ。ヤバい、雷が落ちるか?
「でぇ~、御詫び代わりに二人はどこまでいったのか、お姉さんに教えてくれるよねェ~」
やはり、そう来ますよね。どこもいっていませんよ。
俺の事実に忠実な申し開きが始まるが、一向に俺を解放しない眠るユキちゃんが俺の論説への反駁題材へとなっていた。
ガンデアへと向かう洞窟の中、俺の周りの環境は変化しつつありました。
ユキが俺の横に来る頻度が上がりました。それが引き起こすもう一つの不可解現象は他の皆さんが俺たちから距離を置いてくれます。多分、皆様の素晴らしき曲解から来る所作なのでしょう。
いや、別に美女と二人きりというのが嫌な訳ではないですよ。
「ユキちゃん、ライ君と、とぉ~ても仲良くなったねェ~」
こういうニーセのからかいに対するユキの対応もかなり変化しました。
「そうかもな」
俺の顔を僅かに伺い見て、微笑を浮かべながら意味深な発言をするようになりました。
ユキちゃん、本当にどんな心境の変化があったの?
俺はこの複雑な心境を生み出す場をどうやり過ごせば良いのでしょうか…
これでユキがライシスをいじめるこの章は終わりです。
次の章の主役はニーセにより影が薄れがちなカーヘル主体なお話。