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闇に覆われた洞窟で 2

身の凍る水の中から震える身体を引っ張り出す。浅瀬があって良かった。

さすがの北国育ちな俺もこの寒中水泳には心臓が止まりそうだ。


ユキにはもっと辛いだろう。ぐったりと俺にもたれ掛かっている。

何とか手のひらに火を灯して、もう片方の腕でユキを引っ張りながら、なだらかな坂を這い上がり、上へと帰還する。


皆とはぐれちまった。マジで怖い。濡れた服の着替えも無いし、燃やすものも無いから火を起こせない。俺の手のひらに魔力を糧に灯るちっぽけな炎しかない。マジで凍死する。特にユキの衰弱は酷い。


取り敢えず、煙草で落ち着こう。そう上着を探った時に俺の指に当たるセレミスキーを保管する小箱。

セレミスキー、召喚魔法において、確実なイメージがなくとも、必要な召喚対象を選んでくれる優れ物。俺の知識に無かろうとこの場に相応しい召喚対象を呼んでくれるだろう希望の魔具。

困った時の異界人頼みだ。


なけなしの魔力を叩いて呼び出した異界フィフレの精霊。確か火を司るプロネ。姿は燃える大鳥。とても有り難いことにその燃え続ける羽根を沢山残していってくれた。


その炎が俺たちの服を乾かし、身体を暖めるもユキは俺の隣で蹲り震えている。


「ユキ、大丈夫か?」


辛うじて顔を上げて頷くも、大丈夫で無いことはその蒼白な顔が教えている。


エルが居れば何かしたやれるのだが、俺には医術の心得はほとんど無い。もう一回、異世界頼みといきたいところであるが、如何せん俺の魔力は底をついている。


隣で震えるユキを見て居たたまれなく俺は、生乾きで悪いが俺の外套をユキに羽織ってやる。


「大丈夫だ…」


そう小さく言って、その外套を震える手で返そうとするユキ。モォ、素直じゃないなぁ。


「ユキちゃん、こんなときぐらい甘えろよな。ユキちゃんは普段強いんだから無理に強がる必要無いって」


なるべく優しく言ったつもりだ。


「…私は強くなんか無い。ネイストの方が…強いだろ?」


ポツリという言葉。だから、俺はユキちゃんが勘繰ってる程俺は凄く無いって。


「じゃあ、その弱いユキちゃんは、今回ぐらいは強い俺に甘えろよ」



今回だけはユキの傍迷惑な想像に乗ってやろう。

相当疲労困憊のようだが、寒さのせいでか寝ることも出来ないようだ。


「ちょっと、失礼するぞ」


今度はしっかり断ってユキの額に触れる。今度は何の抵抗も無いがその額は俺のオデコと比べてとても熱い。


「…あったかい」


俺の手のひらに対しての感想だろうか?意識も衰弱しているようだ。とにかく、ユキを暖めないとこのままでは非常にまずい。

しょうがない。俺の上着をもう一枚脱いで着せてやろう。


「ネイスト…、甘えるぞ…」


胡座をかいたまま、上着を脱ごうとした手が止まる。


俺の背中にはユキの腕が巻き付く。俺の胸にユキの顔が沈む。そして、俺の耳にユキの言葉が入る。


「あったかい…」


いやいや、あったかいじゃないですよ。俺は恥ずかしさで全身が火炙りになったぐらい熱いですよ。


「ゆ、ユキちゃん。離れようか?」


「嫌だ、甘える」


僅かに腕に力を込めるユキちゃん。

ヤバいって、ユキちゃんの身体の柔らかい感触とか、ユキちゃんから仄かに香る良い匂いとかが俺に総攻撃してくるんだって。


あれ、ユキちゃん?もしや、寝ていますか?寝ちゃいましたか?

つまりあれですか?ユキちゃんが起きるまでこうして居ろと?



こうして、ユキの悩ましい寝顔と寝息は、俺を不眠不休でいたぶり続けましたとさ。

何とか一日四話更新を達成。

日付は明日に変わるだろうが、寝ずにもう一話挑戦ダァ~!

明日の朝、起きれるかなぁ?

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