再びふなれな船旅 1
所変わってターシーへ向かう船の狭い客室。
騎士団総長が私が騎士団総長であるうちにシーベルエンスを出た方が良いでしょうの助言に従って新騎士団総長に会いたくない後ろめたさを持つ俺たちはそそくさと乗船しました。
「それで皆さん?なんで俺達の部屋に集合なさっているのですか?」
俺の素朴な疑問です。俺はシーベルエ国の重役達との謁見でとても疲れているのですが…。
俺とアレンだけのまったり空間はこの狭い部屋の中の人口密度の高さに壊されつつあります。
「私はネイストがトーテス行きを即断即決したから、何か戦況を覆す姑息な策があるのかと思ってな」
俺を労る気が無い代表格ユキちゃん。なるほど、姑息な手を使うことにかけては、天才的なこの俺の考えを聞きたいと言うことかね。
「そんなものは行ってから考える!」
ハッハッハッ、残念だったなユキミ君。
「呆れたな。何も考えずに行動する愚か者だったとはな」
何なの。その態度。温厚な俺だって怒るよ。
「ここまで考え無しな馬鹿だったとはな」
さらに追い討ちですか、オイ。何かなユキちゃん、俺を罵りに来たのかな。
周り、特にジン、ニーセも不信の目で俺を見ないで!
「ライ兄、本当は凄い作戦を考えているけど、今は言えないだけだよね?」
「えっ、そうだったんですか?やっぱりライシスさんはしっかり考えているんですね!」
アレン、エルそんな信頼と期待のこもった瞳で俺を見ないで!
俺が何か考えないといけなくなるからさぁ。
「ホォ~、それは期待できるな。」
ユキさん、態度が全然期待してないと語っているよ。
「ところで諜報部隊准尉殿。勿論、敵の数ぐらいは分かっておりますよね?」
してやったり。
「北方騎士団の兵力は五千、ナールスエンドの騎士団がそのまま加われば三百、ガンデアから後数百の援軍は見込めるだろう。それに対してトーテス駐留騎士団は五百に満たないし、援軍は当分来ないだろうな」
くそ、しっかり仕事してるじゃないか。
「絶望的だねぇー。ライ君のスッゴい作戦がなければだけどねぇー」
俺に当て投げって酷くないですか?俺、只の平民ですよ?戦術ド素人ですよ。
よし、ここはジンに助けを…
「期待してるぞ、ライ」
「あっれ~?名将レッドラートの息子さんが他人任せな訳ぇー」
よし、押すんだ。ニーセ様。
「俺なんかよりライの方が頭が回る。邪魔はしたくない」
その信頼は嬉しいさ。でも、無理だよ。
「ジンさん、ネイストに過大な信用しないほうが良いと思いますが?ネイストには無理でしょうし」
ハッハッハッ…、ユキちゃんは本当に俺の凄さを理解していないようだ。
やってやろうじゃないの。このハッタリの達人、ライシス・ネイスト様が君ごときでは思い付かない奇策を用いてあげようではないか。
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