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聖都燃える 3

人々の悲鳴と銃声、魔法による轟音。そして魔物の咆哮が辺りを支配する。聖地ルンバットは地獄に早変わりだ。


「馬鹿な!何故、魔物がこんなにも!」


ユキちゃんの言う通り、魔物が集団において、都市を襲う前例は無い。一つの前例を除いてはね。


「現界召喚の使用か」


空から急襲を仕掛けたフォムファルコンを撃ち落としたジンが俺と同じ見解を述べる。流石はシーベルエの騎士団員。


「現界召喚ってこんなにも多く喚べるもの何ですか?アッ、動かないで下さい」


「でも、娘を探しに行かないと!」


「その足では無理です!」

壁際で、ジン、アレン、ユキという鉄壁に守られながら負傷した民間人を治療しながら聞くエルちゃん。


ユキは、私が探して来ると直行してしまったが。


「医術師様、この人もお願いします。クソッ、どうして魔物がこんなに!」


頭から血を流し意識が混濁な聖騎士を担いできた若い聖騎士団員。聖騎士はこのルンバット自治区、セレミス教団のお抱え騎士団。


「現界召喚だ…。ルーシェト、勉強不足だぞ」


「…減らず口が聞けるならまだくたばりませんね。先輩」


「ハハッ、まだ…地獄には堕ちねぇよ」


言葉が消える先輩聖騎士。


「今、手が離せないんです。意識を手離さないように話し掛けて下さい!」


今のエルちゃんは凄く怖い。いつものエルちゃんじゃない!続々と現れる怪我人に気が立っているらしい。


「嬢ちゃん。怒鳴らなくても大丈夫だって、くたばりゃしねえよ。でも嬢ちゃん、良い嫁になるぜ。おじさんのとこに嫁に来ねえかぁ」


ウン、このおじさんはそう簡単にくたばらねぇな。


「そんな情けない姿で口説いても女の子は落とせません…ヨット」


魔狼を槍で突きながら軽口を叩く。


「それで、現界召喚って何なんですか?」


槍で魔物を牽制しながら聞くルーシェト君。俺が説明したいところだが、憎まれ口を叩きながらもエルの言う通りに先輩に呼びかけるルーシェト君の気持ちを尊重しよう。説明はこの先輩聖騎士に任せて、俺は魔物を追っ払うために魔法を放つことに専念しよう。


「俺も詳しいことは知らねぇがな。異世界ではなく、この世界から召喚する魔法だ。異界召喚と違って魔力を…、喰わねぇ。ルビー戦争…知らねぇかなァ…」


意識が覚束ない先輩聖騎士。


「寝ないでしっかり教えて下さい!先輩!」


「起きて下さい!貴方の番です」


ルーシェトに続いてエルも叫ぶ。


「寝てねぇよ。これだから、若い奴は…」


びびらせるなよなぁ。


あぶねぇ!

サンキュー、アレン。今のはお前が居なければヤバかったぜ。


「ルビー戦争の発端でルビー砦で使われたのが…、現界召喚だ…」

それだけ言うと沈黙する先輩聖騎士。


「先輩!先輩!センパーイ!!」


叫ぶルーシェト君。

「大丈夫です。傷は塞ぎました。貧血で寝ているだけです。起きたら、高カロリーな物を食べさせてあげて下さい」


「叫んで損した。人騒がせな人だ」


全く同感だ。俺の心配も返せ!ただし、涙声のルーシェト君の先輩想いな気持ちに心が暖まったよ。

僭越ながら、この太っ肝な先輩に代わって現界召喚の説明をしよう。

要は、異世界から喚ぶよりは魔力の消費が少ないのがネックだ。ただし、話しの解る異世界者に比べて魔物との契約は難しい。主な条件は飯。

100年前のルビー戦争ではルビー砦の衛兵達を食い散らかして良いと言う条件だったとシーベルエ国史上最大の反逆者カメルは語っている。

シーベルエでは、御上の許可なく現界召喚魔法を使うことは禁じられている。


俺の説明が終わった頃に、子供を抱き抱えたユキが戻って来る。

たくさんの魔物を引き連れて…。


俺も得意な雷魔法とジンの援護射撃。その攻撃を掻い潜り何匹かの魔狼が両手が塞がるユキに襲いかかる。間に合わねぇ。


自分を犠牲にする覚悟を決めて、魔狼の爪から子供を庇うように地面に身を丸めるユキ。


路地裏から出て来た影が魔狼をその大剣で吹っ飛ばす。


その直後に、後続の魔物達は魔法で焼き払われる。


その火難をのがれた魔物は素早い細剣の餌食となる。


「よお、学者!無事のようだな」


「だから、ライ君達なら大丈夫だって言ったじゃないですか~」


「良かった。無事だったんですね」


全く、心強い宿敵が来てくれたもんだぜ。


おっさん達がくそ喰らえなこの事態を引き起こしたの元凶で無い可能性が出てきたがかなり嬉しいぜ。

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