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神の降りた地 1

2000年という莫大な年月の中で一度も崩されたことの無い外壁。神々しく彫られた神と膝まずくセレミス。


これで2度目となるが、この偉大な歴史的建造物の前に立つと神聖さを感じずにはいられない。いつもに増して危険な旅というスパイスが感嘆をより高める。


ルンバットに着きました。ここの歴史的建造物は何度見ても良い。俺には分からんが歴史だけではなく美術的、宗教的価値もあるはずだ。


敬虔なるセレミス教の信者達はこの歴史的建造物の価値の凄さが分かっているのやらその彫り細工にセレミスと同じく膝まずきルンバットへ入っていく。

その彫り物は2000年も原形を保ってるんだぞ。2000年前の遺物に俺たちは対面してるんだぞ!

ひれ伏すな!しっかり見ろ!そして、2000年というこの歴史的奇跡を噛み締めろ!


「ライ兄、通行許可下りたよ」


すまん。アレン。一人で我を忘れていた。宗教家に言っても仕方ないことを心で叫んでしまった。


シーベルエ自治区セレミス教本山ルンバット。シーベルエ領土にあり唯一自治権を認められている領土。というよりも認めざるを得ない領土。


「何と言うか。右も左も真っ白で左右線対象、迷いそうだな」


ユキちゃん、そこが素晴らしいんじゃないか!因みにルンバットでは外観保護法に町並みが統制されている。この昔の町並みを遺すことの素晴らしさが分からないのかねぇ、この女は。


「でも、とても綺麗ですよ。やっぱりセレミス様は凄いです!」


初めて来たのか俺並みに興奮するエル。俺の歴史的見解とは少し異なるがこの反応は歴史家としても嬉しい。


「あの…、ライ兄。セレミスキーについて教えてくれる?僕はあまり知らないから」


くそぉ~、やるな、アレン。シーベルエ国人で知らねぇ訳無いだろうが。

俺の語りたい欲求を汲み取ってわざわざそんな質問をしてくれるお前は最高だぜ!

何でこんな良い子が同士殺しなんて呼ばれるんだ。シーベルエ騎士団の馬鹿どもにはうんざりだぜ。


とにかくこんな可愛い生徒の疑問に答えない教師はいない。ジンの良案で宿に向かいながら、ルンバット、セレミス、そしてセレミスキーについて俺の講義を行なってやろう!


ルンバットは現シーベルエ国領土の最南端で技術国家ローキーとの境に位置をしており、シーベルエ統一戦以前の当時においては、ローキーと現シーベルエ国にあった小国を繋ぐ商業都市だった。そのルンバットを変えたのは只の町医者だったセイン・セレミス。セレミス教信者が言うには神の意志に忠実であり、神に代わりに善人を救い続けた神の代行者である。


そのセレミスは俺たち歴史学者の観点では、ある夜に異界フォトイットから魔鍵セレミスキーを召喚した。敬虔なセレミス教信者は神が降臨されるために敬虔なるセイン・セレミスにセレミスキーを授けたということが歴史的事実になっている。


その神の使者セイン・セレミスがこの聖地ルンバットの“神の丘”にて神という被召喚者をこの地に降臨させて、数々の奇跡と言う名の魔法を起こしたことでルンバットは神の地へと変貌する。


その神を頼った人たちによりセレミス教が布教されて、シーベルエ統一戦の頃には、初代シーベルエ国王ですら自治権を認めざるを得ない強い一大宗教国になっていた。


神を呼び、聖人と称された後も町医者として尽くしたセレミスは寿命を全うして亡くなった。その時に世界7大秘魔具の堂々と名を連ねるセレミスキーの行方は失われた。


歴史学的通説ではセレミスの墓にセイン・セレミスと眠っている。セレミス教通説では、セレミスとともに役目を終えた聖具セレミスキーはセレミスの魂と共に神のお膝元へと帰ったらしい。


「ということは、セレミスの墓を掘り起こせばセレミスキーが有ると言うことか?」


その可能性は歴史学的に考えても高いね。だが、それは自然に則して何でも神様にしてしまう多宗教国民のカイナ人的単略な考えだぜ。


「熱心なセレミス教信者が許してくれるなら、学者は既に掘り起こしてるけどな」


シーベルエ国ですら、勝てなかったセレミス信者の反発を買う度胸は俺には無い。


最もセレミスキーをパクろうとしている事がばれた時点でヤバいけど。


宿屋の扉を迷わず潜るジン。あの襲撃の後、毎日寝ずの番に尽くして、日中の僅かな休憇時間しか寝ないジンを今日ぐらいはゆっくり寝かせてやりたい。

俺も今日ぐらいはベッドでゆったりと寝たい。


そんなささやかな神のへの願いは神の降り立ったという聖地でも叶わなかった。


「ライクーン!待ってたよォ~」


甦るこの声、そしてこの抱き付かれる柔い感触。


あぁ、聖地で俺を待っていたのは神の使者ではなく悪魔の使者だった。


歴史学者が神を信じたらいけないと決意した。

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