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番外編 豪快な隊長と惑乱の魔女との冒険記

僕たちがルンバットに入ってもう3日目になりますが、未だにセレミスキーに関する膨大な確実性のある情報の山と膨大なガセネタの海に埋もれています。

そして、山の中には海があり、海の面積は山を飲み込まないばかりです。


夜の墓。墓石と言うには大きい石柱。セイン・セレミスの墓。

町で聞いた満月の夜にセレミスの墓の前で祈るとセレミスキーが現れるというガセネタをたった今試しました。


「この石の塊、ぶっ壊しちまうか?そうすりゃ、驚いて出てくるかもな」


「隊長に賛成~」


「駄目に決まってるでしょう!」


この上官たちは何故、派手な力任せで解決しようとする。これは敵国での潜伏任務の筈です。


「カー君、シ~。潜伏任務中だよ」


理不尽だ。この人に理屈を求めることは既に挫折しているが。



「ニーセ、何か案はねぇか?」


宿への帰り道に隊長は聞く。


「私も専門外だからね~。早くライ君がルンバットに来てくれないかなぁ。きっと、ライ君なら何かしら掴むと思うんだけどなぁ~。今のうちに情報を集められるだけ集めてライ君に見つけて貰うのはどうですぅ~」


他人任せか。いい気分はしないが、ベグレシャンの時もライシスさんやアレン君の力は必要だった。でも僕は一つ言わせて貰いたい。


「何を言ってるんですか。貴女がハシュカレ中尉をライシスさんにけしかけたんじゃないですか」


「何のこと?私はただハシュ君に“大事はありませんでしたか?”って聞かれたから、しょ~じきに“ライ君っていうとっても強くて、とっても格好良くて、とっても優しい男の人に心を奪われちゃった”って教えてあげただけだよ。少ししか嘘はついてないし、決してけしかけたりしてないよ~」


少し嘘をついた時点で正直ではありません。第一、大半が虚言でしょう。後、十分にけしかけたています。この人はその辺を理解してやっているんでしょうけど。


「ハシュカレ中尉の槍の腕は本物ですよ。もし、ニーセさんの予想通りライシスさん達がルンバットに向かっているとしてもたどり着けるかわかりませんよ」


「大丈夫だって!私の惚れたライ君とアレン君だよ~。ルンバットに向かってるなら多分来るよ~。早く逢いたいなぁ~」


ニーセさんは自信満々に笑う。その顔を見て、僕の顔が固くなるのを感じる。

僕にも何故だかは分からない。でも、彼等がここに来る可能性を信じてしまう。そして、彼らならばセレミスキーを見つけてしまいそうだ。


敵を頼るとはガンデア軍人として情けない。


「なーに?もしや、ライ君やアレン君に嫉妬してる~。大丈夫、カー君もすごく大好きだよ」


「違います!何でそうなるんですか!」


この人のからかいは唐突過ぎて慣れることがない。対応策を立てようもない。

付き合いの浅い頃に、無視という対応法を実行したところ、いきなり抱き着かれて接吻をしようとしてきた敗北経験がある。この人に下手な対応策は危険だと学んだ。


「まぁ、学者達がここに来るか、来ねぇかは賭けだからな。来なかったらそこまでの人間だってことだ。来たら、少し強めに協力をお願いする。これでいいんじゃねぇか」


隊長の言うことはもっともだ。しかし、強めにお願いするは引っ掛かる。


「カーヘル。もう一度言っておくが俺は任務のためにはどんな手でも使うぞ」


隊長は、僕も自分で気付かなかった嫌悪感を見つけたように語りかける。

何でだろう。何で僕は彼らと会うことを望みながら、会いたくないのだろうか。

「アリャリャ、雨が降ってきた~!早く戻ろ~」

走り出すニーセさん。それに次いで走り出す隊長の背中。



早く任務を全うしてガンデアに帰りたい。この二人と一緒に。祖国の為にも。


その為にならば、何でもしよう。例え彼らを殺すことになろうとも。


そう決めた。



「カーく~ん、早くしないと風邪引いちゃうよぉ~。あっ、風邪引いて、ニーセお姉さんに優しく介抱されたいのかな?」


早くライシスさん達に会いたい。彼らが居れば、ニーセさんの僕に対する精神的被害が少しは分散される。


二人の背中を追って、僕は雨の中を駆け出した。


始めに思い付いたこの番外編のサブタイトル


“カーヘル・ドーヌの憂鬱”


脳内会議で即却下されました。


当小説の感想をお待ちしておりまーす。よろしくお願いいたします。

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