魔剣vs魔鎗、そして奸雄現れる 3
ヒョロメガネの俺との決闘宣言。
決闘はしません。利用はします。
魔力は充分に溜まった。後は運次第。
「悪いけど、俺は一対一の決闘なんてまどろっこしいことは嫌いなんでね。一気にあんた達を片付けさせて頂く」
バックに15人もの兵を従えたヒョロメガネの表情が俺のふざけた発言にさらに燃えあがる。
「貴様らは囲まれているんだぞ。何を馬鹿なことを」
「隊長、前回こいつらは不可解な転移魔法を使用しました。気を付けて下さい」
ニンジャ野郎の助言。そのアドバイスでヒョロメガネが身構えてくれると俺も助かる。
「ニーセも足元にも及ばない俺の最大級魔法を見せてやろう。」
敵の近くにいるジンやユキに不通かもしれないアイコンタクト。頼むから、俺の最大級の“魔法”に巻き込まれないで。俺の力を信じて下さい。
「何、貴様ごときがニーセ様を侮辱するか!」
キレるヒョロメガネ。鎗のリーチは俺に迫る。
その鎗の刃は届く訳が無い。
アレンが俺の信頼に応えてくれたから。
「行け!レクスターの“神の裁き”!」
「馬鹿な!そんなものが!」
説明しよう。“神の裁き”とは、魔導大戦にて、リンセン・ナールスの魔導の士であるレクスター・シークスが使用した軍船を一撃で破壊したという有名な上級雷魔法である。ガキの頃に俺はこの魔法を現代に再現すべく練習をしまくった。俺の決め台詞と同時に俺の腕から放たれる一筋の雷光が空へと翔ける。
恐怖に駈られて空を見上げるガンデア兵達。
その恐怖にうち震える者を全て呑み込む無慈悲な破壊の雷撃が夜空から轟音と共に降り落ちる。
訳が無い。俺に上級魔法は使えません。
「ハッタリだ!」
黒フードの男が俺が魔法を空中に放った時点でいち早く気付いて叫んだが遅いね。
俺のパフォーマンスで間抜けに空を見上げた兵隊さんは、閃光の弾丸に撃たれ、疾風の刃に斬られ、俺のショボい初級魔法に吹っ飛ばされた。
「クソッ!こんな卑怯なことに手を貸すとは!」
まぁ、そう言わないでユキちゃん。俺も恥ずかしいの我慢して頑張ったんだから。
「なかなかの役者だな。これで此方が5、相手が4だ」
いやいや、ジンの協力が合っての成功です。ジンやユキが上級魔法が使える訳の無い非力さを信じて行動してくれて助かったよ。後、アレンとエル、良心が痛むから落ちて来ない雷を待たないで。
俺の想像以上の効果を得た、知能を駆使した最大級魔法により、残りは怒りにうち震えるヒョロメガネ、覆面で表情は見えないが絶対に笑顔では無いだろうニンジャ野郎、同じく全く顔色が窺えない黒フードと既に逃げ腰な銃兵が一人。
大局は決まった。数においても、質においても俺たちの勝ちだ。
だが、ここで俺の皮算用は大きく外れる。
レクスターに並ぶほど高名な奸雄が姿を現す。