魔剣vs魔鎗、そして奸雄現れる 2
夜を切り裂く銃声。この暗闇の中で闇に向かって撃ちまくるジン。ジンが適当に撃っていない証拠に人の呻き声、倒れる音が聞こえる。
さすが、伝説の弓兵の子孫。夜の射的もお得意なのね。
嬉しいことに俺達の出番はない。
とはいかないようだ。
「三発避けられた。三人は手練れがいる」
そう言いながら、弾倉を帰るジン。撃った弾数合計八発。他が18人。
俺達にも敵の動きが察知出来る位置に敵が来た。こちらは丸見え。
弾丸と魔法が飛んでくる。俺達を囲むエルの防御魔法に防がれた。
ジンはライフルを木の上に向けて発砲。その弾がかすったか、木の上から飛び降りてジンに斬りかかる黒づくめ。その間に素早く入るユキ。
二人の剣、いや、カタナが合わさる。黒づくめは俺の背中をぶっ刺して、踏みつけやがったニンジャ野郎だ。
エル、ユキの女性陣は動けない。
俺達男性陣が何とかしねぇとな。
また、暗闇に銃を向けるジン。
発砲する前に暗闇からジンを狙って言葉通り凄い速さで伸びてくる棒。先端には鋭利な刃。
一発撃ったが弾丸は弾かれ回避に移るジン。
「気を付けろ!そいつは曲がる!」
俺の忠告通りに曲がる。ジャケットを僅かに裂かれたがジンは何とかかわす。
また、ジンの方向へ曲がる刃。
アレンが咄嗟にジンの前に入り防ぐ。それと同時に、棒の伸びる先へと弾を放つジン。
その正確な射撃を避けて出てきたのは、メガネのヒョロ男。そして、手に普通のサイズに戻った鎗。
魔鎗エレウイク。なかなかシンプルな能力の秘魔具。能力は今見た通り、魔力を込めるだけで伸び縮み自在、くねくね曲がり操作も簡単。故にペグレシャンと違って、戦いの素人さんでもとても使い安いです。このメガネのヒョロ男は素人さんでは無いようですが。因みに、異世界エレフェルトにて、当世界には存在しない物質で造られているため、限定一本の品でございます。残念ながら、在庫は既にありません。
段々と集まって来た恐らくガンデアの部隊が周囲に展開。ざっと15人。その中の黒いフードコートが一人、異様な空気を纏っている。ユキとつばぜり合いを止めて、ヒョロメガネの側に下がるニンジャ野郎。
「アレン・レイフォート。ペグレシャンを渡せば一人を除いて命の補償をしよう」
ヒョロメガネの提言。
「一人って誰ですか?」
ナイスだ、アレン。俺が魔力を溜める時間を稼いで置いてくれ。
「ライシス・ネイストだ!」
俺ですか?え~と、俺は貴方に恨みを買うようなことをしましたか?つうか、貴方が睨んでいるジンサ・レッドラートさんですよ。
「ライシス、知り合いか?」
ジンさん、お願いですから今だけライシス・ネイストになっていてくれませんか?俺は、魔鎗エレウイクをかわせません。
「貴様がライシス・ネイストか!聞いていたよりも格好良く無いな…」
「悪かったな。あんたよりはましだぜ。ヒョロメガネ。テメェと違って女の子に格好良く見られちゃうのよ、俺は」
つい挑発と自意識過剰発言。ごめん、あんまり怒らないで。ヒョロメガネは怒りにうち震える。
「成る程な。そうやって俺の純白の天使、ニーセ様をたぶらかした訳か」
ウン、理解不能の事態に陥った。ニーセの表現には純白な天使よりも漆黒の悪魔の方が似合うと思いますよ。
俺の苦い表情をどう解釈したのやら、ヒョロメガネの宣言。
「ライシス・ネイスト!ニーセ・パルケストを賭けて決闘だ!」
絶対に断ります。
勝てる自信は無いし、勝ったとしても俺に得はありません。
そんな俺の見解は全く知らず、ヒョロメガネは殺る気満々です。