魔剣vs魔鎗、そして奸雄現る 1
早朝、シーベルエ城城門前に集合した俺たち。
昨日と代わり映えのしない服装の俺とアレンに対して、変化を遂げた三人。
ユキは上をブラウンのポロシャツ。どうやら黒づくめは止めたようだ。
どうせならもうちょい明るい色を着ればいいのに。対象的に明るい赤のフード付きローブを着るエル。とても初々しいです。アレン、ボケ~と見てないでこういう時に一言を褒め言葉を出すんだ。
黒ジャケットのジン。背中に背負った長身のライフル銃が頼り強さと近寄り難さを一層引き立てている。
早速出発かと思いきや、結局、シーベルエンスでの物資調達を終え、首都を立つ頃にははすでにお日様は真上にいました。
誰のせいだ。
分かってます。俺のせいです。
皆さんが俺を捜している間に、ついつい、本屋で本を読み耽ってしまった。だって、シーベルエンスの本屋は品揃えなかなか良いんだもん。俺はこれからの旅で必要な知識を仕入れていたんだ。
だから、ユキさん、冷たい視線を止めてください。少しは反省しますから。
ジンの提案で結局、昼飯をシーベルエンスで食べることになった俺達は昼過ぎにようやくルンバットに向けて出発することが出来た。
ルンバットへはシーベルエンスから南へ三日程歩くことになる。
俺は凄く余裕です。途中に魔物が出て来てもアレンとユキがいればやること無いからね。一人旅の時と違ってゆっくりと風景を楽しめます。と言っても出発時間からして夕暮れはすぐに迫ってくる訳で、すぐに野営の準備に入ります。
誰かさんのせいで今日は殆ど進めませんでした。
その誰かさんは、結構反省していると思いますよ。
誠心誠意を持って夕飯の用意をさせて頂きました。
「凄く美味しいです。ライシスさん、料理上手ですね」
ありがとうエルちゃん。地味に嬉しいよ。
「お気に召さなかったか?」
俺の素晴らしい料理を食べてしかめっ面なユキちゃんに訊ねる。
「認めたくは無いが美味しい。料理はどこで覚えたんだ?」
ハッハッハ、君が認めまいとそれが俺の実力なのだよ。
「実家が宿屋でガキの頃から手伝いさせられた。ちなみに掃除やベッドメイキングもプロ級の腕を持ってるぜ」
剣よりも先に包丁を握らされていたからね。
「他の特技は旅に役立たんな」
そういうことを言わない。アレンはいつもの如く旨そうに黙々と食べているとして、ジンのお口には合ったのかな。
スプーンと皿を地面に置いて俺の方を見てる。え~と、もしやニンジンがお嫌いでした?それとも、お気に召さないだけ?
立て掛けていたライフル銃を俺に向けるジン。まさか、貴方は料理が不味いと暴れる方ですか?
料理をすぐに作り直します。それとも今朝のことでお怒りですか。まずは武器を捨て、平和的に話し合おう。
ジンは蛇に睨まれ動けないカエルな俺に構わず発砲。
俺の後方遠くで、低くて聞き難い悲鳴が上がる。
「敵だ。今のを抜けば後23人。囲まれているぞ」
すでにジンの思わせ振りな行動に嫌な汗が濁濁です。
あんた、この暗闇で狙撃ってどんな眼をしてるんだよ。つうか、どうやって敵襲が判った?
これがレッドラート家の実力かよ!
ある意味、今まで出逢ったレッドラートのお偉方よりもこの男の方が恐ろしい存在だな。
今はそんなことを考えてる場合じゃなかったね。
スプーンを置いた皆に合わせて、俺もオタマを剣に持ちかえることにする。