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シーベルエ城の夜に 2

広大な部屋に俺一人。

アレンは俺がこの部屋を探検している間に何処かへ出掛けました。


そこで、俺は誰の気兼ね無しにベランダで煙草を吸っている訳ですよ。

久々の一人だぁーと気分転換をしたいところだ。


アレンと出会ってから一人旅は終わっていたし、また一人旅がしたいなんて考えられない。一人が嫌いになったようだ。結論、この僅かな一時でもアレンが居ないと寂しいです。そして、もう一本吸うことにします。


一人の時間には俺の頭が労働したいと訴えてくる。

何で、俺はここにいるのかなぁ?

今回の王達の依頼。俺は嬉しかった。まさか、自分がこんな大きな仕事をするとは思わなかった。まさに、俺がガキの頃に描いた好シチュエーションだ。

だけど、ガキの頃の予定では今の俺は凄い剣術が使え、凄い魔法を使える人間になる筈だった。剣は愚か魔法も中級がやっとな軟弱者になるとは予想外だろう。


俺に何が出来るというんだろう。アレンを見守ることか、背中から刺されることか。

少しは誇れるだろう歴史の知識とやらもセレミスキーを見付けられる自信にはならない。今まで、お国の誇る最高頭脳達も達成出来なかった。

こんな出来もしない頼みを引き受けるなんて俺もお調子者になったもんだ。


こんなに怖いのは高学院の試験の結果待ち以来だ。誰か側にいて欲しい。誰かが近くに居れば、バカなことを考えて過ごせるし、何より強がる理由が出来る。

そんな俺の願いをすぐに叶えてくれる神様。


「ユキミだ。入るぞ」


「どうぞー」


出来れば他の人間が良かったが、この部屋で孤独死するよりはマシだな。


「アレンは居ないのか?」


「お散歩に行った。俺を置いてね」


少し愚痴が出た。八つ当たりである。


「お前は煙草を吸う以外にやることは無いのか」


「ここではね。ところでどうした?」


「…ネイスト、今まで済まなかった」


頭を下げるユキに俺唖然。まさか、ついに俺とタバコの切っても切れない縁をぶった切ることの残酷さに気付いたのか!


「私はネイストやアレンが怪しく思い、探るためにお前達に同行していた。疑って本当に済まなかった」


ユキちゃんは真面目だねぇ。


「怪しい奴探るのが仕事だろ。別に気にしてねぇよ。俺が気にしてるのは、没収されたタバコが返ってくるのか」


「あれは海に捨てておいた」


その残虐な行為に対して謝れ。土下座でも許されると思うなよ。


「アレンが居なくて好都合だな。ネイストに一つ聞きたいことがある」


ユキの真面目な顔が俺の顔にグイッと急接近。その黒い瞳には俺が映っている。何かを決意している目だ。まさか、お子様が居ると出来ない方向へ?ダメだよ。いくら美人でも俺に心の準備が出来てないから。それに俺のタイプはお淑やかな女性だ。くそぅ、ニンジャめぇ~、色気を使うのは反則だぞ。

俺の戸惑いを知ってか、呼吸音を感じる位置にある朱色の唇は開く。


「ライシス・ネイスト…」


俺の喉は勝手に息を飲む。


「お前は何者だ?」


俺の口からは溜め息一つ。

もう一度確認しておこう。俺はこんな女全然タイプじゃないからね。


「只のひ弱で歴史マニアな旅人。それでは納得出来ないか?」


かなり精神的疲労を感じているので適当に返しておく。


「ドラゴンの吐く猛火を一瞬にして消し去る程の魔法を使えるのにか?」


なんじゃそれ。俺にそんなことが出来るなんて知らなかった。どこの化け物だよ。いや、ニーセ様ならやってしまいそうだ。驚いた俺の反応をどう取ったのか、ユキは続ける。


「誤魔化すな。アレンが言っていた。ネイストは一瞬にしてドラゴンの吐く炎を消し去った。この程度ならば、私でもかなり本気を出せば出来るが」


貴女もやはり俺の届かない領域の人なのね。知っていましたが。言っておこう。痛みで本人が炎を出すのを止めました。


「更に同時にドラゴンを瀕死にしたと言う。そんなことを出来る魔導士がひ弱なのか」


その妄言の発生源はかなり勘違いと誇張があります。偶々アレンの視界が不良だっただけです。偶然に俺の弱い魔法がドラゴンさんの脆いところに当たっただけなのです。しかも、目を潰しただけでは瀕死とは言えません。アレンが凄いだけです。

俺の弁明。しかし、浮かない顔のユキちゃん。


「ならば、今日の王の前での態度はどうだ。普通の庶民にしては威風堂々としていたぞ」


俺をどうしても平々凡々な人物にはしたくないらしいね。


「敬語が苦手な駄目人間なんだよ。緊張しないのに必死だったし。俺は一人では何もできない人間なのよ」


もちろん自分で言ってて虚しいよ。ユキの顔が離れる。


「私にはそうは見えないがな。逆にネイストの方が私より色々出来るように見えるが?」

真面目にそんな世迷い言を言うユキに苦笑が漏れる。


「ユキちゃんみたいな美人にそんな格好良く見られて嬉しいよ。まぁ、実物はもっと小さい男だけどね」


「別に格好良いと思っている訳ではない。…私は自分の部屋に戻る。明日は遅れるな」


怒らせちゃった。憤怒したままユキちゃんは俺のおやすみ~に答えずに出ていってしまいました。


またしても、一人ぼっち。早くアレン戻って来ないかなぁ。


俺の方がユキちゃんより色々出来る。

具体例を置いていって欲しかったよ。

タバコを美味しく味わえるとかか?

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