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王の権威 2

北方騎士団長ウォッチ・レッドラートの権力で簡単に城の中に入れる俺たち。さらにアレンのIカードを見た門番やアレンを知る何人かの騎士団員たちはとても歓迎してくれる。『同士殺しのアレン・レイフォート』の言葉を目を細めて口にしてくれる。生温かい視線が有難いよ。



「ライ兄、ごめん」


顔を伏せながら言うアレン。やっぱり、可愛いなぁ、こいつは。下らない大人の戯れ言に責任を感じているらしい。


「俺も謝っておく。お前の元同士に魔法をぶっ放したいわ」


「あの…、ユキさんもご免なさい」


続けざまにユキにも謝るアレン。そっちはもっと謝る必要はねぇよ。


「私の仕事は、正確な情報を知ることだ。噂に流れない、私の目で見た正確な情報をな」


少しはニンジャの仕事に好感が持てたぜ。


「ところで、ユキさん。そろそろお話頂けないでしょうか。…あんた何者だ?」


俺とは異なり自分のIカードだけで通行許可を得たユキ。この広い城内を迷わず進む歩みを止めて、こいつに似合わず自信の無さが満ち溢れる顔。


「私は、シーベルエ騎士団諜報部隊所属准尉ユキミ・クロツキだ」


これで良いかと話を打ち切って歩き出すユキ。今までよりはよろしいんじゃないですか。人を疑うことを知らなくただ驚きを表すアレンを置いて、ユキちゃんに続いて歩き出す。



階段を二つほど登りユキの歩みが止まる。目の前のドアには、騎士団総長執務室の文字。


「諜報部隊准尉、ユキミ・クロツキ、只今帰投しました。他、アレン・レイフォート、ライシス・ネイストを連れて参りました」


部屋の中から入って下さいの御言葉が聞こえる。俺の緊張はピークを迎える。



扉の向こうに居たのは、ロマンスグレーの似合うお爺様。代々騎士団総長を輩出するレッドラート家、現当主スコルト・レッドラート。その騎士団総長と話していた明らかに身体付きが武官ではない眼鏡の男。そして、来客用のソファーで顔をふせて眠る俺と同じ年頃の金髪男。


「クロツキ准尉ご苦労様でした。レイフォート君、ネイスト君も遠いところわざわざご足労御掛けしました」

ジェスチャーでソファーに誘う騎士団総長。控え目な二人に先駆けて俺は座らしてもらおう。対面に眠る男は起きる気配はない。

眼鏡の男が慌てて起こしに掛かる。


「自己紹介といきましょう。シーベルエ騎士団総団長スコルト・レッドラートと申します。以後お見知りおきを」


息子さんと似た口上の騎士団総長に乗せられて俺とアレンも名乗る。北方騎士団長を思い出してあまり油断出来ない。


次にソファーに寝る男を起こす手を止め俺たちに向き直る眼鏡の男。


「失礼しました。シーベルエ国執政官長バーク・ロンタルです」


これまた、現代シーベルエで高名なバラマキ大臣殿でした。現シーベルエ唯一の平民出身の執政官にして、様々な公共事業、福祉活動に湯水のように金を使う事からこのニックネームが付けられている。

他の執政官は平民執政官の平民の人気取りと揶揄されるが、俺はこの人には足を向けては決して寝られない。俺の高学院の学費の半分は、この人によって国から支払われたのだから。

シーベルエ国の軍事と政治を支えるツートップ、只の平民には戦々恐々だ。


自己紹介を終えて、またソファーの男を揺するロンタル執政官長。レッドラート騎士団総長もその不届き者が起きるのを待っている。俺としては早いところ用事を済ませてこの息苦しい部屋から逃亡したい。俺がそいつを蹴り飛ばしましょうか?


俺が蹴る前にロンタル執政官長のいい加減に起きなさい!の一喝で寝ぼけ顔をあげる男。目は開ききっていないがなかなかのイケメンだ。こんな大物に囲まれて良く爆睡出来るな、お前。きっと将来は大物に成るぜ。


そんな未来予想中の俺を残して、俺の隣に腰掛けていたアレンと後ろに立っていたユキちゃんは、床に立て膝を付き頭を下げるポーズを慌てて行う。


周りのパニックから取り残され、俺は呆然。

寝ぼけてまた夢の世界へ旅立とうとする男の襟を引っ張り起こし、ロンタル執政官長がこの男を紹介する。

「こちらは、現シーベルエ国国王で在らせられる、クーセリング・シーベルエ陛下です」


またロンタル執政官長の起きなさいの怒号が起きる。


俺も立て膝付いた方が良いのかという心配は、部屋に響き渡る大きな欠伸で消滅した。

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