出会い:3
「オトコ!?男だったの!お前!」
剣を鞘に収めて、こちらを振り向いた美少女改め美少年は、助けてもらったのに礼より先にそんなことを言う無礼者に対して、幼さの残った顔を真っ赤にして恥ずかしいそうに頷いた。それにしても、背が低い。160ぐらいか。
何歳なんだ?と、またしても、礼より先に無礼な質問してしまった。そんな俺の態度に怒るでもなく、びくびくと17ですと答えるとても素直な少年改め青年。
伏せ気味な顔で俺の顔を盗み見ている青年。
何でだろう。こいつと話していると助けられたのに、助けた気になってしまう。
「あ~、質問ばっかで悪い。助けてくれてありがとうな。本当に助かった」
「大したことじゃないです」
俺の返事に小さき声で答え、また黙り込む青年。えーと、私はどうすればよろしいのかね?礼も言ったし、帰ってよろしいでしょうか?何より知らない奴と黙りっこは辛い。
そこで、何年も連れ添ってきたマイリュックを肩にかけて別れの挨拶をしようとしたところで、先に青年の口から小さな言葉が漏れた。
「あの…」
「何だ?」
顔を下に俯き、恥ずかしそうにしている青年。まさか、告白でもするんじゃないのかというぐらい真っ赤になった顔。
残念。俺はいくら顔立ちが良くても、男のプロポーズは受けないことに決めているんだ。
「コッ、この近くに町か村は在りませんか」
ビビった。そんな、大声出さなくても聞こえるよ。俺は耳は悪くないのさ。
「村なら在るぞ。今から、戻るけど一緒に行くか?」
こいつ、気がよえぇなぁ~。そんなことを聞くために勇気を絞り出さんでもいいだろう。
青年が首を縦に小さく振るのを見ながら考えた。この性格じゃ、どんなに強くても勇者とはいかないな。
そこで、重要なことをやってないことを思い出す。
「俺は、ライシス・ネイスト。短い間だけどよろしく」
「アレン・レイフォートです…、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げるアレン。
じゃあ、行きますか。と自己紹介も終わったところで出発。
「あ~、足元に気を付けろよ」
歩き始めてすぐに転んでしまったアレンに手を貸しながら、遅いご忠告。
この姿で俺は、何でこいつに助けられたんだろうと考えてしまう。
というか、俺、助けられたのに偉そうな。
そんなことを考えながら、沈みゆく夕日と木々の中、村への帰路を転ばないように急いだ。
数年後、この木以外に見るものがない普通過ぎる森が、伝説の勇者と賢者が出会ったと言われる出会いの森と呼ばれるとは、この時は全く考えられない場所だった。