旅は道連れ、世は… 2
「アレン君も元気だった~。偉いよ~。ちゃんと私たちの剣を持って来たね~」
貴方たちの剣ではありませんよ。ニーセさん。そして、俺の汚い顔の横にある肩にその綺麗なお顔の顎を添えるのをお止め下さい。俺の精神は見た目以上に脆いのです。
「知り合いなのか?」
俺は穢らわしい者として、アレンにだけ尋ねるユキさん。
「えーと、多分そういうことになるかと思います…」
ニーセを視野に入れ、剣を手繰り寄せるも戦意喪失のアレン。俺も何故かこのお方とは殺り合う気が起こらない。勝てる気が起こらない。
「モォ~、ライ君は私というものがありながら、こんな可愛い子を連れて歩くなんて、お姉さん、嫉妬しちゃうな~」
「どうぞ御自由に。その男を連れていかれても私は構わない」
ご聞きの通り性格は全く可愛く無いですよ。
「わぁー、じゃあ貰って行っちゃおうかなぁ。アレン君も一緒に来ない?」
「すいません。それは出来ません」
その通り。俺も行きません。
「ニーセさん、何やってるんですか!他人に迷惑を…、アッ!」
最後まで言い切るんだ。君の言おうとしたように他人に迷惑かけたら駄目だぞ、カー君。街中で剣を抜こうとしないで。アレンも。
「カー君、街の中で剣を抜いたらダーメ。常識無いなぁ。もぉ」
「街中で男性に抱き着いている人に言われたくありません」
その意見に同意、背中と街人の視線が痛いです。純情な成人男性にいつまでも豊満な胸を当ててないで下さい。後、俺の耳元で囁いた“殺るんなら夜じゃないとね”は聞かなかったことにしますから、早く離して下さい。
「それで、ライ君たちはこれから何処へ行くのかなぁ~」
俺を釈放して魅惑のスマイル。残念ながらお答え出来ませんな。無言を貫く俺たちに表情が凍結していくニーセさん。と思えば、急ににっこり。明かに裏のある笑顔。
「アレンクーン」
今度は、アレンに熱烈なハグ。顔が真っ赤になるアレン。俺の純真無垢なアレンを苛めないで。
「オイ、アレンを離してあげてくれ。困っている」アレンは庇ってあげるユキちゃん。俺はどうでも良いのね。
「フフフッ、トーテスかな、ルンバット、彼女とカイナ、それともローキー。ふむぅ、…シーベルエンス」
魔女の抱擁と甘言にアレン陥落。シーベルエンスという言葉に思いきり解りやすいリアクション。
「正直者だなぁ、アレン君は。ナデナデしてあげよう」
泣きそうな目で俺に助けを求めてくるアレン。折角だから、ナデナデして貰え。
「よし、それじゃあカー君、シーベルエンス行きの船のチケット6枚ね」
「待て。枚数がおかしいぞ」
カー君をパシるのはともかくとして、三枚、いや二枚で充分ですよ。
「エッ、なんでぇ~。ライ君、アレン君でしょ、隊長に私にカー君。勿論、そこのとっーても綺麗な美女を置いて行くなんてことはしないんでしょ」
「わ、私はそこまで美人では…、あの、貴女の方がとても素敵です…」
案外、おだてに弱く、頬を染めるユキちゃん。突っ込みどころはそこじゃない。アレンをナデナデしながらニンジャを堕とす恐ろしき魔女。ユキちゃんと自己紹介を始めるという同行する気満々のニーセさん。
こうして、俺の平穏な船旅の予定はまたしても崩れ、いつ襲われるか分からないスリル満点な旅が勝手に幕を開けた。
良く考えたら騎士団に差し出せば良かったんじゃないかと気付いたのは船に乗った後のことでした。
俺もかなり魔女にやられていたらしい。
PV10000hit達成!
やっと達成しました。まさか、ここまで読んで頂けるとは…
今までこんな稚拙な小説を読んで下さった皆様、誠に有難う御座いました。
そして、これからも『勇者との冒険記』に皆様の清き一読をよろしくお願い申し上げます。
よーし、今日は飲むぞ~!いつも飲んでるけど