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二人旅の別れ 3

俺の身体から吐き気を催す音を出しながら剣が引き抜かれると蹴りを受けて無様に地面に倒れ伏す。血が流れ出るのと、アレンが俺の名を叫ぶのをはっきりと理解。これは、致命傷だなぁ。


「アレン・レイフォートだな。一緒に来て貰おうか」


絶賛出血大サービス中の俺の背中を踏んでいる足の上からの低い声と数人の足音が聞こえる。


痛みをこらえて、顔を上げてみると顔を布で隠したまたしても全身黒づくめの男たちに囲まれる。あんたたちは春先のこの時期、そんな薄そうな服で寒く無いのか。

今日はニンジャに縁があるようだ。ご丁寧にカタナが標準装備してらっしゃる。


状況は分からないが、危険を感じて身構える女性と逃げ道を探して視線を巡らす盗賊二人。貴方たちは只今、国際問題に巻き込まれました。


手が震えているアレンが俺の上に君臨する人物に小さな音を発する。


「何と言った」


「ライ兄から足を退けろと言ったんだ!」


アレンの迫力に俺も痛みを忘れるほどビビった。こいつらはアレンの逆鱗をぶっ叩いてしまったらしい。


「お前以外に用は無い。力づくでいかせてもらう。アレン・レイフォートを捕獲。他は始末しろ」



今度、ニンジャは話し合いが苦手で、実力行使を好む人種だと論文を出して学院に提出しよ。生き残れたらね。


とにかく、何時までも踏まれているのは好きではないので、お上の御仁のおみ足に電撃をお見舞いさせて頂いた。


僅かに漏れた苦声と足の力が弱まったところで思いっきり身体を引き抜き足を大地に突き立てる。血が派手に飛び散り、ふらつく身体。そんな俺に迫る容赦無い刃。その間に入るのは、憤怒の化身と化したアレン。そいつをカタナごと叩き飛ばす。


すぐ横では黒き女性の活躍で一人が倒れる。盗賊のお二人は女性の側で俺も脱帽の回避行動。


残りは5人。右足負傷を合わせて6人。アレンや頼りになる女性に警戒したのか距離をとっている。


「貴様ら。不意討ちとは同じカイナ出身のシノビとは思えない卑劣さだな。誰に使える者なのだ?」


「何を甘いことを。シノビは暗殺を生業とする者だ。俺たちが何者だろうと関係無いだろう、お前たちはここで死ぬのだからな」


お話の最中申し訳ない。貧血です。何とか膝と手で身体を支える馬ポーズをする俺。アレンの俺の身を案ずる呼びかけは何とか聞こえるがこの状態は二つの意味でまずい。放って置かれても死ぬし、斬りかかられても死にます。しかも、この状態ですら保つのはもう無理です。


「アレン、俺のことは気にするな。しっかり生きろよ。ペグレシャンを守り抜け。お…、お前との旅は短かったが…楽しかったぜ!」


俺には最後に何を言えばいいのかすぐには分からない。なので、頭に乱雑に浮かんだ言葉を遺言として並べてみました。意識が消えていく。アレンの悲鳴に近い呼び声が聞こえる。

突如、まぶたの上に眩しい光が現れる。もしかして、俺、天国行き?まさかねぇ。



俺とアレンの二人旅はここで終焉する。




この時から、十数年後の話である。数年後に英雄となったアレン・レイフォートは何冊もの伝記が創られる。


そのアレン・レイフォートの伝記には必ず彼と共に旅をした大賢者ライシス・ネイストの功績が記されている。


戦闘を凄い魔法により援護した。

魔剣ペグレシャンを手に入れる手伝いをした。

そして、ライシス・ネイストの一番の功績は、残虐非道で同士殺しと呼ばれていたアレン・レイフォートに愛を説き、正義の道へと改心させたことであると記されている。



伝説なんてそんな物だ。嘘と誇張が含まれている。だが、一つだけ言っておこう。俺は今までアレンにそんな下らないことを教えた覚えも教える必要もなかった。


何故ならアレンの旅はまだ続くのだから。

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