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二人旅と別れ 2

小柄な身体に似合わず豪快に音を出すアレンに対して、鋭い風切り音を奏でる黒き女の剣。地面に根を張ったように足を動かせないアレンに対して、素早く全身を動かし、攻撃を畳み掛ける女。


正直に言いましょう。二人の腕の動きに俺の目には重労働だそうです。目が痛いです。ついでに頭も


黒き女は恐らく東方カイナの出身であろうことを示す細身の剣、カタナを扱っている。

カイナ出身ということでまずシーベルエ人が疑ってしまうのは、カイナの誇る諜報員、カイナの言葉で言うならばニンジャである可能性がある。聞いた話だとニンジャは全身を黒づくめにするのが大好きらしいですし。


噂話だが、ニンジャは幼少から鍛え抜かれた潜伏、窃盗、暗殺のプロフェッショナルだそうだ。


カタナという剣の利点の風による抵抗が少なく速い剣撃と鋭い突きを巧みに使いこなすニンジャ疑惑の女に、防戦一方だったアレンも火がついたようで攻撃へと転じる。普段はケンカを売ることは苦手であるし、買うのもヘタクソであるが、一度決心が付くと迷うことなく買うアレンは強い。


立場の交代し黒き女の劣勢という俺たちの大チャンスの到来。


「アレン、そこまでだ。」


俺の声が届き、距離を取るアレン。驚いたことにアレンの息使いが僅かに乱れている。相手も同じ状況ではあるが、俺には手が出せない強敵であることを再確認。

「まぁ、お嬢さん、少しお話しませんか」


戦闘を止められ、素晴らしく鋭い視線を向けてくる女性の俺たちの第一印象を払拭するため、フランクで優しさを全面的に押し出す努力をする。


「ふざけるな!奸族が!勝ったつもりか!」


努力の甲斐があり、盗賊から奸族にランクアップしました。


「まぁ、落ち着いて」


「貴様らと語る口は無い。次は本気でいかせてもらう」


確かカイナ人は礼儀を重んじると本に書いてあったような。俺の態度が悪いのか、あの本が適当だったのか。


剣を鞘にしまう女性。そのシーベルエなら戦意が無い事を示す行動を見てアレンも大剣を下げて、警戒を解く。また、本の知識だが、このアレンの判断は失敗だ。

「アレン、気を抜くな!」

黒き女が無駄の無い動きで刀を鞘に収めたまま、アレンの懐に飛び込む。見えない腕の動き。


二つの鉄が鳴ると同時にアレンが後ろに吹き飛ぶ。倒れたアレンの首もとには、いつの間にか抜かれたカタナが当てられる。


これがイアイヌキと言うものか。鞘から引き抜く勢いをのせて速さと力をあげるカタナだからこそ出来る一撃必殺。

俺の声が間に合って必殺にはならなくて良かったが、本で読んだ時は誇張し過ぎだろうと思っていた。実際に見て、あの本、過小評価し過ぎだろうと思った。


「盗賊にしては、素晴らしい腕だが私の勝ちだ。武器を捨てろ」

また、立場が逆転してしまいました。いや、さっきよりまずいです。アレンが動けない俺に打開策を考える気もありません。



この危機に背景と同化し地面に座っていたこのお二人がやっと動き出す。


「あの…、すいません」


貴女は自分の罪を告白するのですね。神に代わって俺が赦してあげよう。


「別に礼はいらない。私は盗賊が大嫌いなだけだ。」


うん、あなたが笑いかけた方々はその大嫌いな盗賊様です。


「そうですよね。盗賊なんて最低な行為ですよね、ハハハ…」


オイ、盗賊男!貴様の行為は、神が赦しても俺は赦さん。


「いえ、あの実は…、私たちの方が盗賊でして…」


「申し訳ありませんでした。」


よし、彼女には後でなけなしの2Gを恵んであげよう。神のごとき優しき俺は、続いて自分の罪を認めた元盗賊男には2シルバーを恵んでやろう。嫌がらせに。



この告白により、俺の話をとても聞きたくなった女性に話を聞かせてあげる。


「本当にすまなかった」


盗賊たち宜しく並んで地面に手と頭を付ける女性。


「あのぅ、もう良いですから顔を上げてください」


顔を赤らめながら、殺されかけた事をあっさりと許すアレン。

まぁ、ここまで必死に謝る女性を怒ることは出来まい。出来れば、命の危機が去ったところで早いところターシーへと去りたい居心地の悪さです。美女に頭下げさせて喜ぶ性癖は持っていないもので。

これで、今回の面倒事は終了。とはいかなかった。

俺たちは一つの問題が解決すると次の難問が出てくる定めを持たされているようで



俺たちの命の危機は去ってはいなかった。主に俺の。だって、誰も居なかったはずの俺の背中から剣が刺さっているんだもん。しかも、貫通しています。



勘違いでなく確実に俺たちの命を狙う人たちが舞台に乱入してきた。

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