魔剣はいずこへ 1
光を抜けるとそこはボロ小屋だった。
まるで、白昼夢を見ていたように立ち尽くす俺たち。まぁ、身体の素晴らしき疲労感が現実であったことの証明であろう。
俺は大英雄ナールスと時を越えて出会ったのだ。歴史的大発見でもある。
お父さん、お母さん、俺を産んでくれてありがとう。この世界は最高だ!
これまでの人生で最大級の幸福にどっぷり漬かる俺。
「それで、ペグレシャンは何処なんだ」
おっと、おっさんありがとう。俺へのもうひとつの幸福のプレゼントが待っていることを思い出したよ。
アレンは熱心に自分の手に持つものを眺めていた。
アレンの大事に握っているもの。それは 勿論、長い間使い込まれたであろうアレンの愛剣。何の変化も無し。あれ、魔剣ペグレシャンは…。
「ライシスさん、どういうことですか?」
カー君の質問。答えよう、俺にもわからん。俺に代わって答えたのはこの人。
「ペグレシャンは異界の魔剣だから、そもそも剣を構成する物質が違うのかも知れないわ。あの時の光がペグレシャンそのものだったとか」
なるほどね。俺たちの常識で剣の形をしてると考えるのは只の当て付けだな。常識を外れた凄い剣であるはずなのだから。真面目に素晴らしい推理をするニーセさんは続ける。
「とにかく、アレン君の剣にペグレシャンによる何らかの変化が起こっている可能性が高いわ。持って帰って調べてみましょ」
「ライ兄、これどうしよう。本当に持っていって良いのかな?」
アレンの不安に満ちた声。確かに、手に入れたは良いものの間違いなく国宝級の代物。一般人が持っていて良いものだろうか。
ナールスがアレンに託したものであっても、個人で管理するには荷が重い。いっそのことシーベルエ国か研究院に謙譲するべきではなかろうか。
そんなふうに頭を悩ます俺たちにおっさんからの衝撃的な提案がされる。
「お前ら、ガンデアに来ないか?」
俺には、全く思い付かなかったぜ。そんな常識の彼方まで飛び抜けたアイデアは。
普通なら、返しのジョークを捧げるところなのだが、かなり真剣な表情を示すおっさん達。
どうやら、雲行きがとても不味い方向へ。
風は突然吹いてくる。追い風にしろ向かい風にしろ。