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3.ロドリゲス・ファミリー(5)

 アヤメは乗馬の経験があるとのことで、二人乗りで戻ろうとしたが、何故かシュバルが抵抗した。アーバンがなだめることでようやく二人揃って背に乗り、少女の元へ戻ることができた。


「シュバル!」

 出迎えた少女はシュバルの鼻面に抱きつくと、嬉しそうに尾を振った。


「本当に取り戻してくれたんだね。保安官のお兄ちゃん、ありがとう!」

「保安官さん、ありがとうございます。おかげで娘を悲しませずに済みました」

「気にすることはない。何かあれば頼ってくれ。そのために俺は来たんだからな。アヤメ、行こうか」


 立ち去ろうとすると、シュバルがアーバンの服を噛んで引き留めようとした。

「な、なんだ? 離すんだ、シュバル」

「ダメだよシュバル。お兄ちゃんは忙しいんだから」


 シュバルは首を振り、小さく鳴く。

「うん……ああ、そうかぁ。なるほどね」

 少女がしきりに頷き、アーバンのことをにやにやと見遣った。


「なんだ? シュバルの言っていることがわかるのか?」

「シュバル、お兄ちゃんのことが好きになったんだって! だから一緒にいたいんだってさ」

 照れたように耳を折り畳むシュバル。


「よかったじゃん、アーバン」

 そんなアヤメには、ツバを飛ばした。


「何で私に!?」

「シュバル、女の子だから」

「ええ……?あー、そういうこと」

 アヤメは瞬時に理解したが、アーバンは何もわかっていなかった。


「ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃん。シュバルも一緒に連れってってあげてくれない?」

 少女は言った。


「それはいい。保安官さんは足をケガしたようだし、早く進むなら馬が最適ですよ」

「ありがたいが、いいのか? 危ない目に遭うかもしれないぞ」

「シュバルの気持ちがわかるの。大好きなお兄ちゃんの役に立ちたいって」


 アーバンは嬉しいような困ったような顔でアヤメに訊ねる。

「どうしようか、アヤメ。確かにこの申し出はありがたい。馬の足ならば夕方には詰め所にたどり着くだろう」

「私の言うことを聞いてくれるならねー」


 ここに着くまでアヤメが手綱を握ったが、ことあるごとに言うことを聞かずアヤメに反抗して移動に支障が出ていた。

「シュバル、お姉ちゃんの言うことも聞かなきゃダメ。でないとお兄ちゃんに嫌われちゃうよ」


 シュバルは何度もアヤメの目を見ては背け、を繰り返し、葛藤を見せる。やがて観念したように耳をパタンと折り、受け入れる姿勢を示した。


「言うこと聞くってさ。でも、お兄ちゃんの恋人の座は譲らないってさ!」

「だから、そういう関係じゃないって」

「お兄ちゃんはお姉ちゃんのこと、好き?」

 少女が無邪気に聞く。

「ああ。いい奴だからな」


 人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られるという。シュバルは分別のつく馬だから蹴ることはしないが、かといってライバルに手心を加えるつもりはない。

 だから、ツバを飛ばした。


「邪魔したつもりなんてないんですけど!?」

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