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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第四章 追憶のバトルゲーム
52/195

幕間 夜闇に灯る蒼の光

今回の幕間は短くなっております。


 明日へ向けた準備。

 英気を養う夕食。

 身を清める入浴。

 その全てを済ませた《蒼の双星》一同は寛いでいた。

 そして唐突に、カイトがアンナとジャスミンに連れていかれた。

 そう、女二人にだ。

 レオとジャック、そして俺は気づかれているとわかっていながら後ろを着けていく他なかった。

 

「カイト……」

「貴方……」

 

 美女と美少女に詰め寄られるという羨ましい事態に陥るカイト。だがその相手があの二人のためそんな桃色展開など期待できない。

 十中八九怒りによる連れ出しだろう。

 

「手、抜いたわよね?」

「手、抜いたでしょ!」

 

 見事に被る詰問の声。

 肩を跳ねさせたカイトはその問いの意味を図って答えた。

 

「いや、抜いてないけど……」

「嘘!、私わかるもん!」

「貴方の魔力はあんなものじゃないはずよ。どうして手を抜いたのかしら」

「いや、だから──」

「隠し通そうったってそうはいかないわ!」

「ええ、意地を張るなら相手を選ぶ必要があること、身を以て教え込んであげるわ」

 

 カイトが第一回戦で負けたときにはまだ〔破導〕を取り戻していなかった。だからその真偽は定かではないが、俺としても理由が聞きたいところである。

 アンナとジャスミンが勘違いするなんてあり得ないからな。

 

「どうしても話さない悪い子にはこうよ」

「二人でたっぷりシゴイてあげる!」

「え……?」

 

 ガシッ、と両腕を捕まれ、水と草の魔法に拘束されるカイト。

 それはまるでこれから斬首刑に遭うような囚人のようで、ドアの隙間から覗く俺達は同情に眉をハの字にしてしまう。

 奥に消える瞬間、恨めしそうなカイトの眦が強く印象に残った。

 

「まあ、自業自得だろうよ」

「手抜きだから、ね」

「俺は見てないからな、アイツの擁護ぐらいはしてやれる」

 

 事情を知らないのだ。

 味方ぐらいしても何も言われない。

 

「いや、アレはどこからどう見ても手加減だったよ」

「ああ?、どういうことだ?」

「カイトは終始相手の力量に併せるように魔法を使っていた。そして必ずカイトが負けていたんだ」

「あれだろ、カイトの対戦相手のルシフェルって奴が俺と戦いとかずっと言ってたからとかじゃねぇのか?」

「それはつまりカイトが手を抜いていたということになるね」

「そうなると許さないのがあの二人ってわけだ。特にアンナな、アイツ兄貴のユーリの手を抜く姿を見て育ったからかそういうのに過敏で厳しいんだよ」

 

 皇帝の手抜き……?

 あの人智を超えた力を持つあのユーリ・ハリスが手抜きなんて……

 

「強すぎるからな、ユーリが本気を出せば一つの都市が軽く消し飛ぶってことだ」

「それは……簡単には信じられない話だね……」

 

 あり得る。

 あの魔力ならあり得る。

 今の俺なんか指を鳴らすだけで消し飛ばされるだろう。そんな皇帝の本気なら都市ごとき消えても不思議ではない。

 なんせ、『頂点』なのだから。

 誰も彼を止める存在がいないのだ。

 だからこそ、あの温厚な態度なのだろう。

 本当の皇帝を知ってしまえば民衆は耐えられない。

 恐怖で身も心も持たないだろう。

 

「カイトは御愁傷様、ってことでアディン」

「何だ?」

「疲れてるだろう?、君は早く寝たらどうだい?」

「今僕に君の力について詳細を教えてくれればみんなに伝えておくけど?」

「いや、ありがたいがこれは俺の問題だ。疲労なんかで疎かにしていいもんじゃないからな」

「その答えを聞けて安心だよ」

「だな」

「やっぱり試したのか、試せてないけどな。わかってたし」

「むしろ今のに気づいていなければ、アディンの意志がどれだけ堅かろうとも寝かせていたよ」

 

 苦笑混じりに微笑むジャックはやはり頼りになる。

 全部一人で済まそうとしていた俺が馬鹿らしく感じてくるな。

 レオだってこの時間は汗を掻かない程度に苦手な魔法を練習しているというのに。

 

「ホント、俺は仲間に、家族に恵まれたな…」

「で、これから本当の家族を助けに行くんだろ?」

 

 ニカッ、と思わずこちらも釣られて頬を緩ませそうになるほどその笑顔は眩しく、どこまでも俺の胸に宿った黒い炎を赤の炎で塗りつぶしてくれる。

 

「マジで、ありがとな」

「何だい、気持ち悪いなぁ」

「ああ、気色悪ぃ」

「お前らなぁ!?」

 

 頭を乱暴に掴まれ、肩に手を回され、面白可笑しそうに笑う二人。

 それに釣られて俺も笑みを作ってしまう。

 

 

 

「ふふ、元に戻ったみたいね」

「やっぱりアディンはああでなくちゃね」

「お、俺は……」

「「カイトはうるさい」」

 

 はしゃぐ三人を微笑ましそうに、嬉しそうに眺めていた二人は、ボコボコにしたカイトの講義をピシャリとはたき落とすのであった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

 

 満ちる静寂。

 六人の男女が円に並んでいた。

 その全員がそれぞれの右手で拳を作り前に突きだしている。

 強い眼差しに決意の光を宿し、醸す気迫には魔力が見えるよう。

 そしてその一人、紺の髪の少年が口を開いた。

 

「みんな、明日からよろしく頼む」

「おうよ」

「ああ」

「頼まれたよ」

「わかったわ」

 

 少年の言葉に応える四人。

 そして最後。

 

「うん、頑張ろうね!」

 

 深緑の髪の少女が満面の笑みでそう言った。

 そして彼らはそれぞれの自室へ戻り、明日への英気を養うのだ。

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