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黒龍のヴェンデッタ・ルード  作者: 陽下城三太
第一章 蒼の双星
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第二話 ミーティング


 陽が傾き始めた頃。

 青を基調とした大きな建物の門、その前で一人の少年と二人の男女が対峙していた。

 男女は青と赤で、少年の方は短い髪と瞳共に黒で統一されている。

 この状況の始まりは、男女が一人の少年を連れて自分達のギルドへと戻ってきたとき、その門にもたれ掛かって瞑目している少年を見つけたときからだった。

 二人が近づくと少年はスッと立ち、見上げ言った。

 

 

「二人のギルドに入れてもらいたい」

 

 

 勿論二人は困惑し、背後と抱えた子どものこともあり、黙ってじっと見てくる少年と視線を繋いでいた。

 その硬直状態が続いていたのだ。

 後ろに付き添う少年の方もどうしたものかとオロオロしている。

 だが、これを打開した者がいた。

 

「────っ……ん……」

 

 静寂を破る呻き声。

 出所は赤髪の青年──レオが腕に抱く森でモンスターに襲われていた少女だった。

 

「ここ…は……──っ!?」

 

 自分の置かれている状況を理解したのか鬼の形相で暴れだすが、レオの腕力を前に少女は抜け出すことができない。

 

「はな、離してっ!」

「ちょ、暴れるな──」

 

 逃げられるのは面倒だと腕の中で暴れる少女を地面に下ろし、その腕を掴む。

 

「──っ!」

 

 だが少女は逃げようともせず身体を反転、地を蹴り翻りながら自分の腕を掴む青年を登りその首筋に歯を突き立てた。

 ──否、突き立てようとした。

 しかし少女の歯は肌に届くことなく、青年の空いた手によって顔面を鷲掴みにされていた。

 

「大人しくしろ……ったく。──アンナ、そいつらを連れてギルドに入っとけ」

「わかったわ」

「ほら行くぞ」

「た、助けてっ、誰かぁ!!」

 

 少女が叫ぶも虚しく、通りを行く者は誰一人存在しない。

 万力のような手に捕まれた顔は段々と痛みに歪み始め、ようやく少女は大人しくなった。

 観念した少女は手を引かれるままに蒼の建物へと歩いていくのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

「さて、取り敢えずお前らに名乗って貰おうか」

 

 ギルド──ここでは建物のことを言う──に入った五人は居間へと訪れていた。

 座る二人の前に立つ三人の子供達の様子はそれぞれ、アディンは緊張した面持ちで、黒髪の少年は笑みを相貌に張り付け、少女はそっぽを向いてふてぶてしく立っていた。

 

「僕はアディン・ネルヴァ、こっちは家族のクロ。召喚魔法が使えるよ!」

「カイト・バレイムです」

「……………ジャスミン・ユグド」

 

 三人が名乗りを終えると同時に、組んでいた脚を変えてアンナが言った。

 

「見たところ召喚、無属性、植物系の魔力のようね。丁度よかったわ。で、これからここで暮らすにあたって留めておいてほしいことがあるから、聴きなさい」

 

 一つ、強さを求めること。

 一つ、裏切らないこと。

 一つ、仲間を大切にすること。

 順に指を立て、腕を下ろした彼女は付け加えた。

 

「最後に、絶対に死ぬことは許さないわ」

 

 その強い眼差しに、そっぽを向いていたジャスミンでさえ気圧される。

 

「いいわね?」

 

 有無を言わせない様子に三人は頷くことしかできず、次は隣で苦笑するレオが口を開いた。

 相方の冷たい態度に対し謝罪を告げ、子供達のこれからの進路を示す。ここ《蒼の双星》でレオ達と共に切磋琢磨し強くなるか、宛もなく路頭を迷うか。選びようもない選択肢に渋々首を少し動かしただけであったジャスミンに対して、残りの二人は快諾した。

 

「アンナ」

「そうね、戦いましょうか」

「「「──っ!?」」」

「ああ違う違う、そんなに怖がらなくてもいいぞ」

 

 レオが青髪の美女の名を呼ぶと、彼女は物騒な言葉をもって反応した。子供達三人はそれを頭で噛み砕くと同時に、揃って驚愕を露にする。

 だがそれを青年が訂正した。

 

「戦うのは俺らだ、お前らはそれを見て現実を知って、目指してもらう」

「見本ってところかしら。レオは近接、私は後衛だし為になるわよ」

「お前のどこが後衛なんだ…」

「ちゃんとA級魔導師の資格取ってるじゃない」

「そうだな……、まあついてこい。仮想空間の説明も一緒にやるからよ」

 

 ニシッと歯を見せたレオに連れられ、一同は巨大な白色の空間へと足を踏み入れた。

 入り口のみが黒く、他は全て白の半球型で、床は凹凸が無いにも関わらず滑ることはない空間である。

 

「ここで戦えばどんな傷もつかないし死なないのよ」

 

 武器の類いは使用するものを空間に反映させ、魔法はその表面だけを具現させて視覚と自覚に影響を及ぼすことで怪我も死にもしない空間を成立させている。

 

「そこで見とけ」

 

 静かに子どもらを一瞥し、互いに距離を開けてレオとアンナが向き合う。

 

「【『聖厄(セントディザスター)』】」

 

 紡がれた詠唱、そして現れた一振りの美杖。

 名を神器『聖厄(セントディザスター)』。

 神器とは、神の力を宿した武器、の略。

 この世界には、様々な『器』が存在する。

 神器、封器、霊器、魔器。

 封器とは、ダンジョンを攻略した者が手にすることができる武器で、この世界にたった一振りしかないものとなる。因みにその権利を放棄することもできる。この封器は特定の文言を詠唱することで、その力を解放することができる。

 霊器とは、精霊に認められ彼ら直々の贈呈により使うことができるようになるものだ。この霊器に込められた精霊の力を使いこなすことができるようになれば、『霊装』という精霊を自分の身で模し、その力を限りなく再現することができるようになる。

 魔器とは、普通の武器だが特殊な力を持ったもののことを指す。この魔器以外の『器』は全て不壊属性を持ち、特定の魔法が使えなければこれを破壊することはできない。

 

「───行くぞ」

「ええ、掛かってきなさい」

 

 アンナとレオ。両者が構えるのは『神器』と『封器』。

 ギルド《蒼の双星》の団長と副団長が今衝突する。

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