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未来脚本  作者: ぼなぁら
9/15

幕間4

 「この通り、捜査三日目は最初から最後まで苦々しい結果となりました。」

 今でもあの日のことを思い出すと、腹の底からムカムカする。

 「結果として、新たな犠牲者を出してしまった。未だに自分たちの不甲斐なさが許せません。」

 「当時は警察も世間から相当叩かれたと聞きます。やはり笠原さんも?」

 「そうですね。ある意味では当然のことだと思いますが、バッシングはそれなりにありましたね。当時の私は、ネット関係はほとんど見ていなかったのですが、おそらく掲示板などにも色々と書き込まれていたのではないでしょうか。」

 俺自身が叩かれることに関しては、正直なところあまり気にはならなかった。なんせ俺は刑事だった。恨まれるのも貶されるのも慣れている。それに、俺には家族もいなかった。どこまでいっても俺個人より被害が広がることはなかったのである。

 「DNA鑑定の結果が出たのは、この二日後と聞いていますが、それまでの心境を教えていただけますか?」

 「苦しかったですよ。当時はそんなこと言えませんでしたけどね。何より井上に申し訳なかった。彼が死ぬ必要はなかったのですから。彼は本当に純粋というか、人を疑うことのない人間でした。本当に、出してはいけない犠牲だった。」

 「田村に関してはどうでしたか?この段階では、田村のことを怪しいと思っていたのですよね。」

 「田村は、そうですね。今でも彼には少々複雑な感情を抱いていますよ。まさかあんなことになるなんてね。」

 「今では日本屈指の売れっ子脚本家ですからね。」

 そうなのだ。田村はその後の『愚行の行方』の公演が話題になり、いくつかの作品を経て担当した映画が大ヒット。現在でも度々名前を聞くほどの有名人となった。

 「私は映画や舞台には疎いのですが、田村の作品だけはチェックするようにしています。なんというか、気になるんですよね。作品の中身よりも、田村が作っていると言う事実の方が。」

 「以前、『愚行の行方』のテレビドラマ版も作られましたが、そちらは観ましたか?」

 「当然です。DVDも買いましたよ。」

 我が家には田村が担当した作品のDVDがいくつもある。しかし、俺は別に田村のファンになったわけではない。もしかしたら、俺は今でも田村のことを疑っているのかもしれない。もちろん事件はすでに解決している。それでも、どこか……。いや、栓なき考えだ。

 「さて、先を続けましょうか。真犯人について、語らなければならないことが山ほどありますからね。」


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