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第三話 全てこいつが悪い

この人が居なかったら漢王朝はもっと続いていましたよね?

「私は亡き父の意思を継ぎ、漢王朝復興の為に尽力する事をここに誓う。長く険しく苦しい道のりでは有るが、皆の協力が有れば必ず為し遂げられると私は信じている。ここに居る者達だけではない。遠い場所に居てこの場に立てぬ者達も含めて皆で為し遂げるのだ!」


 漢中王に即位した劉封の演説に歓呼の声を上げる大勢の人々。


 しかし、一部の者達はこれから起きるであろう出来事を想像して震えていた。



「さて、ふふふ。どうして私がここに居て、王に即位したのかと言う顔をしているな、孔明?」


「あ、あなたは、死んだ筈では?」


 成都城の大広間にて文武百官が揃った場、その広間の玉座に座る劉封とその前に立つ孔明。


 本来なら玉座に座っているのは劉禅である筈なのにと言う疑問が孔明派閥の者達にはあった。


 しかし彼らは式典の最中にそれを指摘出来なかった。


 なぜなら、完全武装した兵達が劉封を守っており、さらに孔明の側近と成っていた陸遜が劉封を最上段まで案内した為に何も出来なかったのだ。


 陸遜達は武器に手を掛けており、何か言おうものなら切り捨てると言わんばかりの態度であり、しかも、漢中王となる筈の劉禅が劉封を案内しているのを見て皆呆気に取られていた。


 そんな中で劉封は漢中王即位に名乗りを上げたのだ。


 漢中王は劉禅ではなく、劉封が成った。


 その事実は覆らない。


 それに劉禅は劉封の傍らに居て、自ら進んで臣下と成る事を宣誓してしまった。

 こうなると誰も劉禅を漢中王にと言えなくなった。

 そして、孔明が何も言わずに劉封に平伏してしまったのが全ての誤りである。

 孔明が劉封を否定すれば、あの場で何か言えた可能性も無くも無かったのだ。


 それなのにと孔明派閥の面々は思わずには要られない。


 そして、この場だ。


 今まで劉備が最終的な決定権を持っていた。


 しかし今は漢中王と成った劉封が全てを握っている。


 孔明及びその派閥面々は冷たい汗をかいていた。


「それは我が張良が説明してくれる」


 我が張良と言われた劉巴は一歩前に出ると軽く劉封を睨んだ後に発言した。


「そもそも、王は上庸で亡くなって等いない。負傷はされたが、傷を癒す為に江陵に居られたのだ」


「そんな報告は受けてはいない!」


 孔明は珍しく怒気を含んだ声をだした。

 しかし、そんな声など気にしないのが劉巴である。

 彼はその後も坦々と説明する。


「これは敵を油断させる為の策である。曹操を油断させ、上庸、宛を得る為の策よ。その為には味方を騙す必要があったのだ。それに王が負傷し、江陵から動かせなかったと言う事実もある」


「私も満足に動けるようになったのはつい一月前の事なのだ」


 劉巴の説明に捕捉を入れる劉封。

 そんな劉封をギロリと睨む劉巴。


「ならば我らが五丈原から戻ってからでも報告が出来た筈では?」


「報告したら貴様が手を回してしまうだろうが」


「そんな事をする訳がないではないか!」


 怒鳴る孔明に対して劉巴は冷静であった。


「貴様が王を殺すと言う」「証拠がここに有る!」


 劉巴が言い終わる前に広間の入り口から徐庶が現れる。

 その徐庶の後ろには孟穫が居た。


「全てはこの男が吐いた」


 徐庶は劉巴の隣に立ち孔明を見る。

 その目には怒りの炎が見える。

 しかし、その声色は冷気を帯びたように冷やかであった。


「孔明。貴様は確かにあの時言ったな。自分は手を出していないと、だが、自分以外の者には手を下させたのだな?」


「それは違う。私ではない。私はその男の事は知らん。元直、信じて欲しい。私は何もしていないのだ!」


 徐庶に身の潔白を訴える孔明に対して皆の反応は冷やかであった。


 孔明が劉封を排除する為に動いていたのは孔明派閥、劉封派閥の者達なら知らぬ者は居ない。


 それなのにこの期に及んでしらを切る孔明に皆が呆れていた。


「ふん。貴様の言いそうな事だ。だが、証拠は揃えている。衛兵、この罪人を牢に連れていけ」


「や、止めろ。私に触るな!」


 孔明は衛兵に捕らえられ広間から連れ出された。


 その姿を徐庶は先ほどとは違って悲しみの目で見ていた。


「証拠が有ると言うが、どんな証拠が有るのだ。そこに居る孟穫の証言が証拠と言うのか?それは言い掛かりではないのか?」


 孔明派閥の許靖が皆を代表して劉巴に問う。


「私を直接殺そうとした言う証言だけでは不足か?」


 許靖の問いに答えたのは劉巴ではなく劉封であった。

 しかし許靖は劉封に対して敬意を払わず高圧的な物言いをした。


「それもその男の独断ではないのですか?それにそもそもその男は王の直接の配下では有りませぬか。丞相、いえ、孔明殿とは何の接点も有りませぬぞ?」


「本当にそう思っているのか、許靖?」


 劉封の声色は優しく、また笑顔ではあったがその目は笑っていなかった。


「王に対して不敬な態度だな、許靖殿。言った筈だ。証拠なら有ると」


「では、その証拠を見せて頂きたい。しかし、もしその証拠が孔明殿の関与が無かったならば如何するのですか?」


 許靖は強気な態度を崩そうとはしなかった。

 そんな許靖に劉巴は懐から竹簡を取りだし、許靖に投げつける。

 許靖は投げられた竹簡を受け取る事が出来ずに落としてしまうが、それを拾い上げて読む。


 そして、許靖の手が震えていた。


「それが証拠だ。まだまだ有るぞ。それに貴様の関与も書かれた物もある。それに対してはどう弁明するのかな?」


 許靖はその場で膝を着いた。


「連れていけ」


 劉巴の冷たい言葉の後に衛兵に連れていかれる許靖。

 その姿を見ていた孔明派閥の面々は次は自分かと顔を真っ青にしてしまう。


「本来ならば宴を催す事になるだが、それは罪人を裁いた後になりそうだな」


 そう言うと劉封は立ち上がり皆を見回す。


「そう心配する事はない。裁かれるのは首謀者とその協力者だけだ。自らの仕事に卑しい事の無い者は怯える必要はない。皆職務に励むように」


「「「はは」」」




 多く臣下が下がった後に残ったのは劉封と劉巴、陸遜と徐庶、それに法正であった。


「それで、父上を、劉玄徳を殺したのは誰だ?」


 劉封の声には怒りがあった。

 劉封には劉備を殺した者に心当たりがあったが、それを聞かずには要られなかった。


「孔明です」


 それを答えたのは法正であった。


「なぜ止められなかった!」


「よせ孝徳。終わった事だ」


「子初!」


 劉封が劉巴に詰め寄る。


「助からなかったのだ。医師はそれを認めている。それにまさか、孔明が手を下すなど思わなかったのだ。伯言や孝直を責めるな。そもそもお前が……」


「……すまん。そうだな。俺にお前達を責める権利はないな」


 劉封は謝罪を口にして劉巴から少し離れる。


「いや、それは」「我らが」


「良いんだ。俺が甘かったんだ。孔明を少しでも信じた俺が悪いんだ」


「孝徳」「我が君」


 落ち込む劉封の肩に手をかける陸遜と劉封の側に立つ徐庶は心配そうな顔をしていた。


「それで、孔明をどうする? このまま縛り首か? それとも斬首か?」


 空気を読まない劉巴は残酷だ。


「それなのですが、私の案をお聞き願えますか?」


 法正の目が妖しく光る。


 それを見て四人は法正から少しだけ距離をとってしまった。



「なぜだ。なぜ計画通りにならん。私の完璧な計画が~」


 孔明は牢の中で頭を抱えていた。


「劉封ー!!」


 孔明の絶叫が空しく牢に響いた。


次で終わりです


感想等有りましたら宜しくお願いします

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