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第一話 劉備死す

結構手抜きです。


かなりご都合主義な展開です。

 

 漢中郡郡都南鄭(なんてい)の城内では咽び泣く声がしていた。


「我が君。まさか、まさかこのような」


 声の主は諸葛亮 孔明


 劉備の遺体にすがり付き泣いていた。



 先の五丈原の戦いにおいて蜀軍は曹操の策に嵌まり大敗した。

 そして張飛、趙雲は負傷し、多くの兵を失う事態となった。

 その戦闘の中で最大の悲劇が劉備の死であった。


 曹操の埋伏の計は見事にその目的を果たしたのだ。


 孔明が救援の命を受けて渭水を渡った時には既に遅く、劉備は瀕死の重傷を負っていた。


 孔明は残兵を纏めると直ちに兵を率いて漢中まで戻る。

 殿は黄権と霍峻が行うも魏軍は追撃はして来なかった。


 漢中に戻った孔明は劉備に呼ばれて部屋を訪れた。


 重傷を負った劉備は助からない。

 それを理解している孔明は劉備から後事を託される事になると思っていた。

 だが、床に横たわる劉備を見て孔明はフッと笑った。


 孔明は無表情のまま劉備の枕元に立つ。


「臣亮、参りました」


 ヒュー、ヒューと呼吸音がするだけで劉備は何も言わない。

 いや、何も話せないのだ。

 起きては居るが意思表示が出来ないでいた。


「ふふ、もう何も話せませんか?」


 孔明は微笑する。


「ここまで長かったですな、劉備。ですが貴方の役目もここまでです。後は私が引く受けましょう。何、ご安心下さいませ。私なら貴方よりも上手くやります。これまでそうでしたでしょう。そしてこれからも…」


 劉備は何も言わない。


「しかし、劉封には手こずらされました。あれだけ妨害したにも関わらず生き延びたのですから。ですがそれももう過去の事。うん、何ですかな?」


 劉備の目に生気が宿る。

 その目は孔明を確りと見ている。


「ふふふ、悔しいですか? 私に利用されたと思っていますか? ふっ、その通りですよ。私は貴方を利用したのです。当時の私は無名でしたからな。誰も私の話に耳を貸す者は居ません。ですが、貴方がやって来た。私の居る荊州に。私はこれを好機と捉えました。噂を密かに流し、貴方が私の下を訪れるようにしたのです。そして貴方はやって来た。あの時から始まったのです。私と言う存在が、あの楽毅(がくき)菅仲(かんちゅう)を超えるのです」


 孔明は劉備の顔を覗き見る。


「貴方も分かってるのでしょう。漢王朝の復興等出来ないと? ならば何を成すのか。貴方は王に皇帝に、そして私は……」


「こ、う、めい。お、まえ、は」


 劉備は最後の力を振り絞って声を出す。


「貴方が悪いのですよ。さっさと私に軍を預けないから。では、そろそろおさらば下さいませ」


 孔明はそう言うと劉備の口を布で塞ぐ。


 劉備は抵抗する事も出来ず、静かに目を閉じた。




 劉備玄徳 漢中南鄭に死す


 劉備は後事は全て孔明に任せるとの遺言を残してこの世を去った、と言う事になっている。


 だが、真実は違う。


 しかし、それを知る者は孔明ただ一人であった。


 孔明は主だった文官、武官を集めると劉備の死を伝える。


「くそ、くそ、くそったれー! 兄者ー!俺達を置いて先に行っちまうなんてよ~ 俺は関兄になんて言えば良いんだよ~」


 張飛は地面を叩いて号泣した。


 趙雲は何も言わずその場で涙する。


 その他の者達も生前の劉備を思い出し頬を涙で濡らした。


 そんな中で一人冷静な孔明は指示を出す。


「魏軍の襲来に備えて五丈原を越えた武功(ぶこう)の地に砦を造ります。これを黄権に任せます。霍峻は副将として補佐するように。漢中はこれまで同様に張飛に、魏興上庸の守備には関平を任じます」


「何を言ってやがる孔明。兄者の敵討ちはどうすんだ!」


 張飛は孔明の襟を持ち持ち上げる。

 しかし、孔明は動じない。


「今、それが出きる状況ですか?」


「てめえ~」


「益徳殿」


 張飛の肩を掴む趙雲。

 肩を掴まれた張飛は孔明から手を離す。

 孔明は乱れた服装を整えると張飛と皆に告げる。


「この後は直ちに成都に戻り、劉備様の喪に服し、劉禅様(阿斗)を後継者に据えねばなりません。ぐずぐずしている暇はないのです」


 孔明の言を聞いて一応は納得する張飛。


「けっ、分かったよ。だがな、喪が明けたら必ず兵を出すからな!」


「それを決めるのは貴方ではありません。それを決めるのは劉禅様です」


 そう言われた張飛の顔は真っ赤になった。


「阿斗がそんな事、決められる訳ねえだろうが!」


 張飛は知っている。

 阿斗が劉備と違って争いを嫌っている事を。


「ですがこれからは劉禅様が我らの主です。それから張飛殿。我が君を呼び捨てになさるのはお止めなさい。たとえ貴方と言えど許されませんよ」


「あー! がー! くそったれー!」


 張飛は何度も床に拳を叩き着ける。

 その姿を孔明は冷やかな目で見ていた。


 孔明の命を受けて全員がそれぞれの持ち場に向かう。


 孔明は一人広場に残っていた。

 辺りを見渡し誰も居ない事を確認する。


「ふふ、ふはは、はははは」


 自然と溢れる笑い声。


 孔明はこれからの事を思い笑ったのだ。





 しかし、その姿を確りと見ていた者が居た事に孔明は気付かなかった。


真っ黒孔明全開で御送りします。


感想等有りましたら宜しくお願い致します

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