アルトの秘密
「いいか?誰にも言うんじゃねーぞ?」
「「うん」」
「あい」アルトは、屋根裏の掃除をしていたミク、レン、カイの三人の顔を見回した。
四人の中央に置かれてる一本の鉛筆に全神経を集中させる。
コロッ…カタッ…と小刻みな音を立て、小さな鉛筆が動き始める。
―あと少し…頑張れ!
アルトが、自分のこの能力に気付いたのはつい最近の事だった。園長に頼まれ、暖炉に入れるマキを広い集めていた時、バランスを失い転んだ。
「…ちぇっ。少し欲張りすぎたか?」一本一本広い、最後の一本になった時、
『あれ、こっちにこねーかな?魔法みたいに』そう思って、ジッと見ていたら、そのマキが魔法にかかったかのように、動き出し、浮き、アルトの胸におさまったのだ。
「うっそ…、マジ?」それからも、周囲の目を盗んでは、小石や枯れ枝で試したりした。勿論、失敗することが多かったが…
カタンッ…と鉛筆が起き上り、真っ直ぐ立った。
「凄い」
「お兄ちゃん、魔法使えるの?」
「ちゅごい…」カイが、小さな手を伸ばすと鉛筆は、急に正気を失ったように、倒れていく。
「…っな?ほんとだろ?」アルトは、幼いカイを膝に抱き、柔らかな髪を撫でた。
「あっ、誰かきた!」階段を昇る足音に気付いたレンが、ソッと人差し指を口にあてがう。
ギシッ…
「なんだ、こんなところにいたのか。もうすぐお昼だ。カイ、おいで」お昼と聞いて、食いしん坊のカイが、園長に駆け寄り、抱き上げられた。
「先生、お掃除おわったよ!」レンが言えば、ミクが、
「お兄ちゃん、あんましなかったじゃん!」とちくる。
そんなやり取りを聞きながらも、アルトは窓から見える大きなムーンモル湖を見る。
『本当に、ムーンモル湖に怪物がいるんだろうか?』
ここ数カ月、釣りをしていた何人もの村人が謎の怪物に襲われ命をおとしていた。園長からも、「絶対にあの湖には、近づかないように!」と釘を刺されている。
『もし、僕に大きな魔法がつかえた、あの怪物をケチョンケチョンに倒して、王様からご褒美貰えるかな?』と夢物語な事を考えていた。
「どうしたんです?アルト」園長に呼ばれ、軽く頭を振りながら、階段を降りて行った。
―いつか、大人になったら…
お昼は、昨日みんなでこしらえたまんまるパンと畑で撮れた野菜を沢山使ったスープに、市場で買ったトリガと呼ばれる赤い果実が、テーブルに並び、楽しく話しながらも食事を進めていった。
「本当に、子供の寝顔は天使のようですね」幼いミク、レン、カイ、グレンは、食事を終わらすと眠くなったのか、それぞれお気に入りの毛布を身体に掛け、暖炉の前で丸く眠りについた。
「ダメですよ?行っては」不意に言われたアルトは、肩を縮め、園長を見る。
「あと数日したら、アルトお前は十三になる」
「はい」ここにいる僕やミク達には、誕生日というものがない。棄てられた日、体格等からある程度の予測で狩りの誕生日を持っている。
「明日、みんなで市場へ行きましょう。お前は、いつも我慢ばかりをしています。いいんですよ。お金ならありますから。本でも文房具でも、なんでも買ってあげます。遠慮しないでください」園長は、優しくそういうと、僕の頭を撫でてくれた…
久し振りにこのジャンルを書きます。
今までの作品を全てこちらに移します。五名膜おかけしますが、宜しくお願いします。
誤字指摘なども、ありましたら…