漆
「ずっと探していた。私と同じ普通に生きたいユーザーを、こんなにも沢山いたなんて」
香花の店の奥にある小さな秘密の茶屋で、香花、モノコ、エルル、シャーリィ、ローレン、蝶夜が香花特製ハーブティを飲んでいた
「ほかにもいるのですよ。ここから少し離れたところに何人か」
香花はにっこりと笑った
蝶夜も嬉しそうに紅茶を飲む
ローレンは蝶夜の目をじっと見つめ彼女の記憶を見た
「なるほどな。弟を探してるのか」
蝶夜はローレンの言葉にこくりと頷いた
「ちょっとローレンひとりだけ納得しないでよ」
エルルはまだ蝶夜を疑っているよるでむっすっとしている
そんなエルルをなだめるように後ろから抱きしめ頭を撫でた
が、ふたりはそんな関係ではない。シャーリィも本能でやっているわけで意識などしていない
蝶夜は自分のことを話し始めた
両親がユーザーに殺され弟が行方不明なこと
「つまり蝶夜さんは、ユーザーに連れ去られた弟を探しているですね」
「だが、それは俺たちも疑う余地があるんじゃないか?」
ローレンの言葉に蝶夜はきょとんとした顔をして少し考えたあと首を横に振った
「それはない、多分両親を殺した犯人は私の母体だった母の血縁者だと思うの。」
「その根拠はよくわからんが。なぜお前は国側につく?お前もユーザーならわかるだろう」
自分たちをこんな姿で作り出した国家
そして用がなければあっさりと自分たちを殺そうとする国家
「私は・・・両親を弟を連れ去ったユーザーが許せない。けど、だからって全てのユーザーが悪いわけじゃないんだ。あなたたちのように普通に生きたいユーザーもいる。だから国に言われるがままユーザーを捕まえるのではなく相手を自分の目で判断できる第六課に入ったの」
蝶夜はユーザーを殺すのではなく『捕まえる』といった
エルルの頬が少し緩んだ気がした
蝶夜はまっすぐに彼らをみた
「ねえ、お願いがあるの。弟を探すのにあなたたちの力をかしてほしい」
同じユーザーである彼らにしか頼めない頼みごと
香花はニッコリと笑いなんの迷いもなく言った
「もちろんです!」
「ちょっ香花!」
エルルはいきなりで慌てるがにこにこと笑っている香花に強く言えなかった
ため息をつきびしっと緑色の指を蝶夜に向ける
「あんたたちが、あたしらを見逃してくれるならてつだってやるよ!fack you!」
蝶夜はもともと彼女たちを捕まえる気なんてなかったので笑顔でエルルの手をとる
「ありがとう!」
蝶夜は香花に似ている気がしてこれ以上何も言えず頬を膨らました
それを見てシャーリィはエルルに大好きなぺろぺろキャンディを口に入れてあげた
「弟さんの情報は俺たちに任せてください。得意分野ですから」
シャーリィはそう言ってエルルを連れて部屋を出た
「俺たちも全力で協力しよう」
ローレンとモノコも笑い蝶夜の頭を撫でた
☆
「・・・ロワ」
暗い部屋に何台ものモニターが砂嵐となっている
モニターの前には大きな社長椅子がある
黒い影はそれに向かって声をかけた
「ふーこが星野蝶夜を狙っている」
そういうと椅子の端っこからひょっこりとうさぎのパペットが顔を出した
うさぎのパペットはパクパクと口を動かす
「それは困ったな。彼女を殺してちゃいけない。ナミル、ほかの食事を用意してあげて」
「・・・わかった」
黒い影 ナミルはそういい部屋を出て行った
「ああ、楽しくなってきた」
うさぎのパペットはパクパクさせる彼はそう言って砂嵐のモニターを見つめた