プロローグ
初めまして。kisiです。
何年間、何回書き直したかわからないStella Notesシリーズですが、もうこのバージョン以上に書けることが無いと思います。
完結してしまったらどうしようという不安と戦いながらの初投稿です。
あたたかく見守ってください。
光に惹かれたものは未だ正義を謳い、虐げられた弱者は闇の世界へと還る。
かつて千年続いた戦争は、一人の女神の戯れが引き起こしたものだったとも言われていたが、真実を知るものはもう当事者である光神と魔王、そしてその嫡子だけだろう。
この神域には多種多様な人間の想像上の生物、精霊、そして神が住まう。少ない数ではあるが、人間も多少存在している。
そしてここで生きているものの半数以上が、光神か魔王を信仰していた。
光神につくものたちは正義を貫き、魔王につくものたちは慈愛を貫いた。
光も闇も住み分けがなされていたのだ。
しかし、女神が消えたあの日から、戦争は始まった。
神域は色を失い、最も美しかったレーマという地域はその一帯が窪みとなり、草木も生えぬ荒野と成り果てた。
千年という超長期戦となったこの大戦争で、光神と魔王は疲弊に疲弊を重ね、それでもお互いの戦力が削りきれるまで戦うつもりだった。
だが、やはり限界だった。
二柱はほぼ同時に、その存在を保つことが難しくなった。
そしてそのまま休戦協定を結び、それぞれの信者を引き連れて魔王は魔界へ、光神は天界へと引き返した。
休戦後、神域には再び色が戻った。
しかし彼らは今尚、敵を滅ぼす機会をうかがっている。
特に、あの女神の遺物が見つかってからは。
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温もり、優しさ、愛おしさ。
全てはすぐに溶けてしまう綿飴のような夢だったのだ。
そうでなければ、またその光に縋ってしまうだろう。
手を伸ばせば届くはずの距離だ。
後少し、少しで届くはずなのに。
口を開ければ水が体を満たしてしまう。
足掻けば足掻くほど、呼吸が苦しくなる。
間違いなく、もうすぐそこまで夜が迫ってきていた。
短い生にお別れを。
あぁ、どうか。
どうか次は、私たちに本物の愛を。
意識を失う直前。
私が見た世界は、星の瞬く美しい世界だったんだ。




