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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第95話 終わらない悪戯

 トールへの悪戯は、次の日も続いた。

 あの時のカルル達の立ち話では、「あんまり『あれ』をやると、ホシが誰だか気づかれる」「明日はやらず、明後日はやるってペース配分」という話だったはず。

 犯人には、気づかれないという自信があったのだろうか。


 科学の実験では、トールの使っていたビーカーがひとりでに割れて、中の液体がこぼれ出す。

 歴史学の授業では、教科書の挿絵が動き出したり、参考書の写真が女性の水着姿に入れ替わったりする。

 魔法学の授業では、やっと花瓶が浮いたかと思ったら、突然、隣にいた生徒の頭上に落ちる。

 食堂では、お盆を持ってウルリッヒと着席した突端、いつの間にか肉料理が魚料理に置き換わっている。


「トール。さっき、肉料理を選んだよね?」

「うん。誰かが、もっと魚を食べろって言っているらしい。余計なお世話だな」


「絶対おかしいよ」

「犯人の目星は付いているんだけどね」


「本当かい!?」

「悪戯は全て魔法だよ。それも、かなり手が込んでいる。魔法を習いに来ている生徒が、ここまで上手なわけがない。だとすると、すでに熟練しているほど魔力のある奴だよ。こうなれば、かなり限られてくる」


「やっぱり、12(ツヴェルフ)ファミリーかい?」

「ああ、間違いない。やればやるほど、犯人は僕ですよ、と言っているようなもの。お笑いさ。でも泳がせておくよ」

 そしてトールは、フェリクス達ファミリーの連中が集まって食事をしている方を向き、語気を荒げる。

「本当に危ないことをやってきたら、この手でぶっ飛ばす!」

 フェリクスはビクンとなって、目を白黒させ、うつむいた。

 トールは、微笑する。


 その後、トールへの悪戯がパッタリとやんだように見えた。

 休憩時間にシャルロッテとマリー=ルイーゼとヒルデガルトが、トールの席にやってきた。

「あんた、まだ悪戯されていない?」

「もし悪戯されていたら、私もそいつを探してとっちめてやるよ」

「私も協力を志願」


 トールは教科書を机の上でトントンとさせながら、皆を見渡して答える。

「ああ。今日は静かに授業を受けられたよ。活字も踊らないし、挿絵も動かない」

「そうでもないみたい」

 ヒルデガルトが、トールの背中に回って、何やらペリペリと剥がしている。

 彼女が、彼へ小さな紙片のようなものを渡す。

 そこにはこう書かれていた。

『六日後、お手並み拝見 漁師(フィッシャー)


 トールは、一番後ろの座席にフェリクス達の姿を探した。

 しかし、連中はもぬけの殻だった。


 ついに、彼の元に挑戦状が叩きつけられたのだ。

 しかも、堂々と名乗っている。


 ウルリッヒが「どうしたんだい?」と言いながら近づいてきた。

「ああ。漁師(フィッシャー)からの挑戦状だよ」

「フィッシャー!?」

 ウルリッヒが目を丸くする。


「知っているのかい?」

「知っているも何も、ファミリーの序列五番手のフィッシャー侯爵家に間違いないよ! あのシュテファニーでも歯が立たないって言われている。そんな奴に目をつけられたのかい!?」


 彼の言葉で、その場の空気が凍り付いた。


「トール。あんた、どうするのよ!?」

「今度こそ、私達が加勢しようか!?」

「補佐ならなんとか」


 トールは、彼女達の言葉を受けつつしばらく考えていたが、やっと口を開いた。

「ありがとう。状況によってはお願いするかもしれないけど、みんなを危険な目に遭わせたくない。だから、ここは任せて」

 本人がそういうなら、とシャルロッテ達はそれ以上口を挟まなかった。


 それから、悪戯はパタリとやんだ。

 ただ一つを除いては。


 それは、トールが学食(メンザ)でメニューの何を選んでも、運んでいる途中で魚料理に置き換わることである。

 彼は気づいた。

 あの時、てっきりフェリクスが料理を入れ替える悪戯していたと思っていたのだが、そうではない。

 漁師(フィッシャー)の仕業だったのだ、と。


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