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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第88話 火球攻撃

 シュテファニーが左手を高く掲げた。


(フォイエル)(クーゲル)!!」


 彼女が魔法名を発すると、左手の上に金色に輝く魔方陣が出現し、その上にポッとバレーボール大の火球が出現した。

 朱色に輝く球体は、何かが中で対流しているように見え、その周囲には太陽の紅炎みたいな光が時々吹き出している。


「これがねぇ。見てな。もっともっと大きくなるんだよ」


 彼女は、底知れぬ魔力をこれでもかと火球へ注ぎ込んでいく。

 すると、それは主の期待通り、みるみるうちに膨れ上がっていった。


 生徒達は、うわーっと歓声を上げる。

 それは、恐怖というよりは、ショーを見ているような喜びの声だ。

「すごい、すごい!」

「わー! きれい!」

「ねー、見て見て! あんなに大きくなった!」


 観客の見守る中、ついに火球は、8メートル前後の巨大で邪悪な球体に膨れ上がった。

 この大きさになると、周囲はポカンと呆れた顔で埋め尽くされる。

 そして、ザワザワ声が湧き起こり、やがて、恐怖の声に変わっていく。


 トールは鎖を力ずくで引きちぎろうとした。

 いけそうな感触はあるのだが、鎖はまだ肉にガッチリと食い込んでいる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 トールは渾身の力を込めて、肉体で鎖を断ち切ろうとする。


 シュテファニーは、何かにとりつかれたような顔をして、鎖にもがく獲物を見下ろす。


「さあ、潰れて死ね! 魔女の(ヘクセン)圧迫(プレセ)!!」


 彼女は魔法名を叫ぶと、巨大な火球をトールへ向かって全力で投げた。

 火球はあらゆるものを焼き尽くすようにじりじりと音を立てる。

 そして、燃えさかる勢いが衰えぬまま、ぐんぐんとトールへ近づいていった。

 とその時、鎖が悲鳴のような金属音を上げて引きちぎられた。

 トールの力が勝ったのだ。


 自由になったトールは、眼前に迫る火球に向かって、長剣を大きく振りかぶる。

 逃げる暇などない。

 指輪は左手にある。

 攻撃は強化しないが、自分の最強の力を信じて、剣圧で叩き斬る!


 そう心に決めた彼は、無意識のうちに、一段上の力を潜在能力から引き出した。

 最強の力に一歩近づいたのだ。


「いっけええええええええええええええええええええっ!!!」


 トールは大きく振りかぶった長剣へ瞬時に魔力を注ぎ込み、ありったけの力を込めて振り下ろした。

 強靱な長剣が、主の期待を超えて、あり得ないほどの強大な風を巻き起こす。

 その剣圧は、大地に向けたなら、確実に地割れが起こるはず。

 それが、空中でメラメラと燃えて落下する、太陽のような火球めがけて突進した。


 両者は互いに激しくぶつかる。

 ドオオオオオンという腹に響く衝突音。

 それに続く、雷鳴のような爆発音。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……


 あり得ないことが起こった。

 トールが放った剣圧で、巨大な火球が大爆発を起こしたのだ。

 目撃者達は己の身を守るため、全員が地面に伏せた。

 彼らの背中を、爆発の強烈な光が赤々と照らす。


 剣圧は、まだ勢いが衰えず、火球を放ったシュテファニーを襲う。

 彼女はとっさに顔の前で両手を交差し、防御結界を展開した。

 しかし、剣圧は防御結界をものともせず、それを粉々に打ち砕き、シュテファニーを紙屑のように吹き飛ばした。


 衝撃で気を失った彼女は、空中高く大きな放物線を描く。

 そして、隣にある年中組の校庭の真上まで飛んでから落下し、地面に激突。

 彼女の体は、地上で数回跳ねて、砂塵に包まれた。


 もちろん、彼女は身体に強化魔法も防御魔法も展開していたのだが、あれほどの剣圧をまともに受けたのでは、(ただ)では済まされない。

 グラートバッハ校長を始め、駆けつけていた教師達は、一斉に彼女の救出へと向かった。


 とてつもない爆発音が鳴り響いたので、さらにたくさんの生徒と教師が箒に乗って集まってきた。

 おそらく、全校生徒と全職員が校庭に集まったのではないか。

 魔法学校あげての大騒ぎになった。


 トールは校長達の後ろ姿を見送ると、フェリクスの方へ体を向けた。

 そして、ゆっくり歩み寄った。

 フェリクスの後ろに隠れるゲルトルートとカタリーネ。

 アルフォンスは地べたに倒れたままだ。

 当のフェリクスは、ブルブル震えているのが遠くからでもわかる。


 トールは、フェリクスの顔へ長剣を向けながら、さらに歩み寄る。

「さあ、次は真打ち登場かな?」

 しかし、フェリクスは動かない。


 トールは、剣を向けたまま後5メートルまで迫った。

「どうした? 何突っ立っている? さあ、やろうじゃないか、一対一の真剣勝負を」

 でも、フェリクスは微動だにしない。


 トールは、2メートルまで迫って立ち止まった。

 そして、剣を目一杯伸ばして威嚇する。

 1メートル半の長剣が、炎を揺らめかせ、フェリクスの鼻先に迫った。

「けしかけたのはそっちだろ! 怖じ気づいたか!? それとも、また卑怯な奥の手でも考えているのか!?」

 大人に叱咤される子供のごとく、フェリクスが涙目になっているのが見える。


 トールは、仲間を傷つけられた怒りに燃えて、すっかり自分の怪我のこと、激痛をも忘れていた。

 彼は、畳みかけるように吠える。

「さあ、来いよ!! 僕の仲間を巻き添えにした償いもしてもらうからな!! 覚悟しろ!!」


 とその時、トールの右側から声が掛かった。


「ちょっと待ったあああああっ!!」


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