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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第86話 羽毛のように舞い降りる魔女

 睨み合っていたトールは、瞬きをした。

 その途端、シュテファニーが、視界からフッと消えた。

 一瞬の出来事に驚くトール。

 どこだ!?


 すると、生徒達が「あー!」と声を上げる。

 どこを見ている!?

 トールは彼らの方を見た。

 目線が上だ。

 彼もそれに従う。


 すると、シュテファニーが両手を挙げて両膝を曲げ、ふわりと宙に浮いている。

 ジャンプをしたポーズだ。

 彼女はスローモーションのように落下して、彼の頭へ迫っている。

 まるで、風に舞う羽毛のようにゆっくりと。

 そして、可愛い少女の微笑みを投げかける。


 彼は、天使がふわりと舞い降りてくる錯覚に陥り、ボーッと見とれてしまった。

 とその時、時間が早回しになったかのように、シュテファニーが素早く腰を回転させ、空中で回し蹴りをする。

 瞬時に、強烈な右足の蹴りが、彼の後頭部に直撃。

 肉体同士がぶつかり合う鈍い大きな音。

 トールのうめき声。


 彼は不意を突かれてよろめくも、辛うじて長剣を杖代わりに体勢を立て直した。

 強烈な蹴りだが、強化魔法と防御魔法のおかげでダメージはそう多くはない。

 しかし、目の前に残光がキラキラと輝く。

 目から星くずが吹き出すようだ。

 ぐるぐると世界が回るようなめまいも残る。

 そのせいかわからないが、彼女が見えない。

 どこだ!?


 また、生徒達が「あー!」と声を上げる。

 上か!?

 トールが宙を仰ぎ見ると、彼の右肩に彼女が立っている。

 向きは彼と向かい合わせになる向き。つまり、彼の後ろを向いている。

 不思議と体重をほとんど感じない。

 鳥が止まっているかのようだ。


「スカートの中を見んなよ! 変態!」

 彼女が下目遣いで毒づくと、右足でトールの顔面を、サッカーボールのように蹴飛ばす。

「がはっ!」

 トールは、蹴られる瞬間が見えなかった。

 しかし、放物線を描いて10メートル以上吹っ飛んだのだから、相当強烈なキックだったに違いない。

 土埃を上げながら転がる彼は、自分の首がつながっていることを確認した。

 そのくらい強烈なトーキックだったのだ。

 頭を動かすと、首の骨がギクギク音を立てる。


 まだ手にしていた長剣を杖に辛うじて立ち上がったトールは、頭の上にシュテファニーを見た。

 彼女は、両手を挙げて両膝を曲げて、音もなくふわりと宙に浮いている。

 またもや、ジャンプのポーズ。

 それが、羽毛のようにゆっくりとゆっくりと落下。

 彼女の曇りなき笑顔。

 天使の微笑み。

 再度トールは、その艶やかな浮遊に魅入られる。


 しかし、それは、魔女の薄ら笑いだった。

 またもや、時間が早回しになったかのように、彼女が素早い回し蹴りを繰り出す。

 強烈な回し蹴りが棒立ちになった彼を容赦なく襲った。

 今度は、連続で三発。

 まるで練習用のサンドバッグのように、無抵抗に蹴りを受け容れてしまった。


 倒れ込んだトールは、四つん這いになって、首を左右に振る。

 長剣は手から離れ、完全に無防備状態。

 めまいがひどく、このまま胃が空になるまで吐きそうだった。


 その時彼は、背中に誰かが乗ったように感じた。

 重さがほとんどないので、彼女だろうと思った。

 彼は上を見上げ、彼女の姿を確認しようとする。

「またスカートの中を見るのか! この変態! 潰れろ!」

 呪いのような響きの言葉が降り注ぐと、背中に強い蹴りが入った。

 すると、ずしんとくる重力が彼の全身を襲う。


 トールは四つん這いができなくなり、地面へペシャンコに押しつぶされた。

 自分の体重の何倍もある強烈な重力で、全身の肉が潰れそうで、骨がギシギシ音を立てる。

 息も詰まる。

 しかし、彼は必死で耐えた。


 1分で重力が消えた。彼には1時間に感じるほどの長い拷問だった。

 息も絶え絶えのトールの頭の上で、しゃがみ込んだ魔女の声が降り注ぐ。

「あれえ? おかしいなぁ。この重力魔法で潰れないなんて」

 トールは、自分のサラサラヘアが無造作に握られるのを感じた。

 そして、頭を後ろに強く引っ張られた。

 首の骨が鳴った。折れる一歩手前だ。

 海老反りになった彼は、彼女の顔が見えないから、背中に乗った彼女が頭を引っ張っているのだと思った。


「そっか。こいつ、こんな強力な防御魔法使っているんだ。どうりで火も氷も岩も弾くわけだ。だったら、そのうざい魔法を解除してやる」

 シュテファニーは、トールの頭髪を解放して立ち上がる。

 そして、まだ彼の背中に乗ったまま、彼の頭を思いっきり右足で踏んづけた。

 されるがままのトールを笑い、ぐりぐりとつま先を後頭部に押しつける。

「一緒に強化魔法も解除できるんだけど。今から同時にやってやるよ。待ってな」

 彼女はさらにつま先に力を入れる。


 トールは頭蓋骨が割れそうなほどの激痛で、うめいた。

「そんなことできないと思っているよね? でもねぇ、あたしはできるんだよねぇ、底辺のファミリーと違うから。覚悟しなよ! 今から解除の呪文を唱えるから」

 そして、おかしくてたまらないという顔をしながら、左手を高く上げた。


「これで終わりだ! 出でよ――」


 とその時、シュテファニーは、「キャーッ!!」と絹を裂くような叫び声を上げた。

 一体、彼女に何が起きたのか!?


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