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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第85話 魔女の連続攻撃

 トールの視界の向こうで、涅槃像の体勢のまま左手をひらひらさせ、破顔微笑するシュテファニーが見える。

「なーんだ、まだ生きているんだぁ」

 彼女は、立ち上がった彼を見ると、今度はへらへらと笑う顔を向けた。

「おいおい、剣は年寄りの杖じゃないよ」


 確かに、トールは長剣を杖代わりに歩いていた。

 まだ足下がおぼつかないからだ。

 左胸の出血も左手の出血も続いている。

 それを気力という見えない包帯で止血し、怪我を意識から遠ざけていた。


「君を倒すまでは、何度でも何度でも起き上がるよ」

「しつこい! マジ、うざいんだけど」

 トールの挑戦的な態度が、シュテファニーの笑顔をかき消した。


「なにせ、僕はこの世界最強の――」

「ぬかせ! この死に損ないめが!」


 彼女は円を描いて、円周上をくるくる回る12個の小さな火球を出現させた。

 それらは魔力が注がれることで徐々に大きくなり、円軌道を広げながら、ビーチボール大に膨れ上がった。

 そして、彼女が指先でデコピンの合図をすることで、高速に発射される。

 火球が回転しながらトールを襲う。


 しかし、彼は目にもとまらぬ速さで長剣を操り、それらを次々とぶった斬った。

 割れた火球が、威力をそがれて四方に散る。

 たとえ半球になった火球が彼の体に当たっても、防御魔法を全開しているのでなんらダメージがない。

 トールはゆっくり彼女に向かって歩み寄った。

 長剣を覆う炎がメラメラと揺らいでいる。


「あれえ!? なんか強くなっている! 何した!?」

 彼女は同じく円を描いて、今度は12個のバレーボール大の氷の玉を出現させた。

 それらが高速に円軌道を描くと、風がプロペラ音のように響く。

 彼女の指先の合図で、氷の塊は冷たい光でらせんの軌跡を残しながら、標的へ急接近する。


 しかし、トールの長剣は柔らかいものでも斬るように、氷をも斬り捨てる。

 彼の前面に届いたのは割れた破片のみ。

 大きな破片が彼の体にバラバラと当たっても、もちろんダメージはない。

 トールはさらに彼女に向かって歩み寄った。


「超むかつくー!」

 彼女はふくれっ面を赤らめ、今度は12個の岩を出現させた。

 1個が直径70~80センチの丸い岩。

 重量感のある岩が高速回転し、唸り声を上げる。

 彼女の合図で、獰猛な獣と化した岩が一斉に彼を襲う。


 しかし、彼の長剣はそんな岩をも斬って捨てた。

 衝撃で砕け散った残骸が体に当たっても、何事もなかったかのように無傷である。

 トールは自分で開けた大穴を、幅跳び選手の格好で軽々と飛び越え、彼女に迫る。


「あきれたー! もっと硬いものじゃないと手応えないとか!?」

 言葉を無視して迫るトール。

 彼女は彼を睨み付けて上半身を起こした。

「なになに!? そろそろ本気出さないと駄目ってこと!?」

 彼女は上半身を起こしたまま、円を描き、今度は12本の短剣を出現させた。

 鋭い剣先の光が円環の軌跡を描く。

 彼女のお決まりの合図で、短剣は我先にと武功を争うように、目にもとまらぬ速さでトールを襲う。


 キーン! キーン! キーン!


 炎の長剣は、暗殺者のごとく襲う短剣をすべてなぎ払った。

 彼は、彼女に後5メートルまで迫る。

 そして、寝そべる彼女の顔へ、炎を纏った鋭い剣先を向け、最後通牒を突きつける。


「何をやっても無駄だ! 観念しろ!」


「ふうー……」

 シュテファニーは、深呼吸のような長いため息をついて立ち上がり、下を向いた。

 そして、おもむろに両手でローブの上から尻の辺りをポンポンとはたく。


「ついに、あたしに立ち上がらせて魔法を使わせる奴が現れた、ってわけね」

 彼女はそう言いながら、ゆっくりゆっくり顔を上げ、切りそろえた前髪の下にある両眼を剣先のように尖らせた。


 シュテファニーとトールの視線は、お互いを射貫くように鋭い。

 それらが、空中で激しく衝突した。


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