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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第二章 魔法学校編

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第71話 卑怯な手口

 トールは、校庭の真ん中でフェリクス以外に少年一人少女二人が立っているのを不思議に思った。

 それは、残りの特待生五人も同じだった。


 フェリクスは、トールに一対一の勝負を挑んだはずだ。

 となると、あと三人は誰だ?

 見届け人か、雇われた審判なのだろうか?

 でも、なぜフェリクスに従うように立っているのだ?


 トールは一対一の勝負のつもりでいるので、一緒に来た五人を残し、フェリクスの方に向かって歩いて行った。

 フェリクスと四人の視線が、トールの姿に張り付いたかようだ。首まで同じ動きをしている。

(様子がおかしい。あれは仲間? まさか)

 トールは疑問を感じつつも、フェリクスの正面に10メートルくらいの距離を置いて立ち止まった。


 とその時、フェリクスがブーっと口を鳴らして、右手の親指を下にした。

「やいやい、馬の骨君。勝負に遅刻した者は、『不戦敗』が常識なんだが」

 トールは、ムッとして応戦する。

「そんなことは最初から聞いていないね。後からルールを作って適用するのが貴族のやり方なのかい?」


「こちらの世界の常識さ。だから、どこぞの世界から来た奴らとは勝負をしたくない。非常識で困るんだよな。もう勝負は終わりだ。さようなら、退学処分の諸君。そして、観客も帰りたまえ。さあ、撤収、撤収! 授業が始まるよ」

 フェリクスはパンパンと手を叩いて、勝手にお開きを宣言する。

 しかし、観客は座ったままだ。

 トールは、観客が従わないことに安堵する。

「おやおや、君が言うようなこの世界の常識じゃないみたいだね。誰も帰らないよ」


「校長先生! 授業を始めましょう!」

「フェリクスくん。校庭までのかけっこが勝負だったのかね? それなら先生も助かるが、貴族の私闘の決着は、そうじゃないだろう? 普通に魔法で戦うはずだが」

 グラートバッハ校長が強引に理屈をこねて、勝負の回避を止めた。

 教育者たるもの普通は逆だが、特待生の退学が掛かっているので、勝負の続行はやむを得なかったのだ。


「チッ! 平和的に解決してやろうと思ったのに」

 まさか助け船が出てくるとは思っていなかったので、フェリクスは校長にも聞こえるように舌打ちをし、語気を荒げる。

「仕方ない。さあて、校長先生直々に許可された勝負になったぞ。嬉しいだろう? 授業をずっとサボれるよ。なにせ、数秒後には、ここで堂々と目を開けずに寝っ転がるんだからね」


「ほう。君が、かい?」

「何!? ファミリーの力を見せてやるから、思い知れ!」

 すると、カタリーネが扇子をひらひらさせながら、フェリクスの右横から前へ歩み出た。


「ちょっと待った!」

 トールは、右の手のひらをカタリーネに向けて、制するように言う。

「君との勝負じゃないよ」

 フェリクスは、腹を抱えて笑い出した。

「おいおい、こいつ、自分で勝手に試合方法を決めているよ! 誰が僕との『一対一』の勝負だなんて言った? 思い返してごらんよ。僕は一言も言っていないからね、『一対一』なんか」


 トールは、なぜフェリクスの周りに無関係の生徒がいるのか、やっと理解した。

(ということは、やっぱり、あいつらは仲間だ。つまり、四対一だ!)

 でもそれは、間違いである。

 この段階では、五対一であることをトールは気づいていない。

 さっきから校庭の隅で、肘を枕に寝転がってあくびをしている女の子が、フェリクスの仲間であると思っていないからだ。


「貴族はこんな卑怯な真似をするのか!?」

 トールは、顔に動揺の色を隠せなかった。

 フェリクスは、挑戦者の狼狽ぶりを見て呵々大笑(かかたいしょう)する。

「ハハハハハハハハハハ! ヒーヒー、これはお腹の皮がよじれそうだ。え? 卑怯だって? 馬鹿言っちゃいけないよ! ハンディと言ってほしいね。だって、君は――」

 彼は、右手の人差し指でトールに狙いを定める。

「この世界で最強の魔力の持ち主なんだろう? しかも、俺TUEEE!ってうぬぼれるくらいに――」

 そして、ピストルを撃ち、銃口から出る硝煙を吹く真似をする。

「強い相手を倒すには、これくらいのハンディが必要なんだよ! 卑怯という前に、最初から気づけ! このど阿呆めが!」


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