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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編
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第7話 巨体を一撃で倒す少年

 トールは上昇しながら右手に魔力を集める。


立方体(ビュルフェル)!!」


 彼が魔法名を発すると、底知れぬ魔力が手のひらに集結し、光の立方体となってふくれあがった。

 イメージ通りに大きくなるそれを見て、彼はうなずき、さらに魔力を込める。

 立方体の表面は燃えているかのようにメラメラと揺らぎ、時折、外に向かってバシバシッと電光が走る。


 どこまで大きくなるのか!?


 彼は上昇を続け、まだまだよとばかり、魔力をつぎ込む。

 あまりに大きくなりすぎたので、彼は右手を高く上げた。

 そうして、空への上昇が頂点に達したときは、光の立方体は1辺が7~8メートルはあるかと思われるほど急成長していた。


 おそらく、彼と魔物との距離は40メートルはある。奴の背丈を考えると、地表から50メートルくらいだ。


 そんなに距離を置いて、彼は敵を恐れたのか?

 いやいや、この技は接近戦では危険すぎるのだ。だからこれだけ距離を取る。


「この高さからぶつけると潰れるよ。さて、()けられるかな?」


 自信たっぷりにつぶやいた彼は、この立方体が敵のちょうど頭上にあることを確認すると、光の立方体の上に跳び上がり、空中で180度回転して頭を下にし、落下する姿勢を取った。


 そうして、空中で即席にこしらえた魔法陣を蹴って、メラメラと燃える立方体を上から両手で押さえつけながら急速に落下した。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 トールは、万有引力の加速度も感じながら、渾身の力を両手に込める。


巨人の(ギガンティッシェ)圧迫(プレセ)!!!!」


 その魔法名を叫び、一度肘を曲げてから急速に伸ばし、その弾みで光の立方体を投げつけた。


 勢いの付いた立方体は、彼が落下するよりも遙かに早く敵に急接近する。


 巨大な落下物の標的となった哀れな魔物は、とっさに身を交わそうとしたが、時すでに遅く、頭を直撃され全身が光に包まれた。

 あっという間に地表の巨体を押し潰した落下物は、容赦をせずまっすぐ地表にめり込み、まるで隕石の衝突のように地中で激しく爆発する。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……


 閃光を伴ったお椀型の爆発は、直径30メートルくらいに膨張し、強烈な爆風を伴って周囲を無慈悲にも根こそぎ吹き飛ばし、大地を激しく揺さぶった。

 閃光は数秒で消えたが、轟音はしばらく辺りにこだまする。

 砕けた岩石は雨のように降り注ぎ、粉塵はさらに長く視界を遮った。


 落下の途中で横にそれることで衝撃波から身を避けたトールは、しばらく空中を漂い、粉塵が晴れる頃にゆっくり降りてきた。

 しかし、まともに粉塵を食らった彼女達は、ゲホゲホと咳き込みながら、現場に近づいてきた。


「いつ見てもサイコー」

 目をしばしばさせながら、ぱちぱちと拍手して勝者を祝福するのはマリー=ルイーゼ。


「だからイヤなのよ、巨人の圧迫(これ)。後先を考えるとか、なんとかしなさいよ」

 口を手で押さえて隣人にうるさく苦情を申し立てるのはシャルロッテ。


「穴の直径約15メートル、深さ20メートル強」

 軍用ゴーグルのずり落ちを直して冷静に分析するのはヒルデガルト。


「ど派手にやるのもいいが、もうちょっと穴を小さくできないかな? 片付ける方も大変だぞい」

 珍しく、少しはシャルロッテの肩を持つニャン太郎。

 確かに、大物を倒すという大義名分があっても、現場をめちゃくちゃにするのは、やり過ぎ感もなくはない。


 これがトールの悪い癖である。

 加減を知らないのだ。


 穴の中では、潰れるとは考えにくいあの巨体が、血の池地獄に沈んでいた。


「何もここまでしなくてもなぁ。……まあ、精進するんだな。やり過ぎると、とことん恨まれるぞ」


 ニャン太郎は、目を覆いたくなるような無惨な姿に変わり果てたラスボスの最期にちょっぴり同情し、トールの未来を大いに憂う。


「……わかってるって」


 穴をのぞき込んでいたトールは、前屈みの姿勢から腰を伸ばし、頭をかいて反省した。


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