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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第63話 魔力測定

 開かれた扉から地下室に入ってきたのは、民族衣装姿の少年一人と少女三人、そして黒猫だった。

 彼らを連れてきたアンジェリーナは金髪灼眼の天空の精霊だが、自分は部屋の中へは入ってこないで、すぐに扉を閉めた。


 クラウスは少年少女達を手招きで自分の方へ誘導する。

 黒猫は部屋の隅で遠慮し、壁にできた人影に紛れた。


 彼らは一応は誘導に従ったが、見慣れない服装の多数の大人達がジッと彼らの動きを目で追っているので、警戒心をあらわにした。

 そして、お互いが肩をくっつけて寄り添うように集まり、壁際にもたれかかった。


 クラウスは笑顔で、ただし目だけは笑わないで彼らに声をかける。

「怖がることはないよ。君達がこちらの世界で魔法学校へ行くために、お父さんお母さんの代わりをしてくれるかもしれない人達なのだから」


 その言葉が多少は効いたのだろうか。

 いや、ドレスを着た女性が皆優しそうな顔をしてこちらを見ているので、それで安心したのだろう。

 少年少女達は、お互いにくっつけていた肩を少し離し、壁際からもわずかに距離を取った。

 表情も硬さが少し和らいだようだ。


 それを見ていたクラウスは大人達に向き直り、こう切り出す。

「では今から、こちらの装置を使って、彼らの魔力の潜在能力、その他をご覧に入れます。その前に」

 彼は、警備兵の方へ目配せした。


「どなたか、我と思わん方は、ご自分の能力を測定してみませんか?」

 しかし、その言葉に誰も動こうとはしない。

「陛下の御前で恥をかくとご心配ですか? この子らとの比較ですよ? まだ子供ですよ?」


 促されても、やはり誰も動かない。

 人前で恥ずかしいというたぐいではない。

 クラウスが妙に自信たっぷりなので、怖いのだ。

 彼は、あからさまに『子供が勝ち』という顔をしている。

 警備兵達は、互いに顔を見合わせていた。


 このとき、突然、地響きのような声が地下室を揺らした。

「では、全員測定せよ!!! 低くても解雇はせん!!! 測定を恐れる者は即刻解雇だ!!!」

 またもやローテンシュタイン皇帝の雷のような一喝が落ちたのだ。


 声の振動で、部屋にある実験装置までビリビリと揺れる。

 大勢の者が耳を押さえ、髪の毛が逆立つほど震え上がったのは言うまでもない。


 五名の警備兵は、極度に緊張した面持ちでガラスケースへ近づいた。

 中にフリッツ警備隊長の姿も見えた。

 ゴクリとつばを飲み込む者もいる。

 右手と右足が同時に出て歩く者もいる。


 無理もない。

 少年少女の数値に負けたのなら、解雇されないまでも、高貴なお方の前で大人として面目丸つぶれである。

 何より、敗北感にうちひしがれるのは必須だからだ。


 正に運命の測定である。

 誰もが小刻みに震えていた。


 一人当たり60秒程度の短時間の測定だったが、中には1時間もかかったように感じた者もいただろう。

 全員が、ガラスケースを出ると顔が青くなっていた。足下がおぼつかなくなった者、うなだれた者もいる。


 一番高い数値が出たのはフリッツ警備隊長で、結果は以下の通り。ただし、知力の細かい項目等、一部の測定項目は省略している。


 魔力最大容量:7000

 魔力最大強度:2500

 耐性力:1580

 持久力:2240

 瞬発力:3410

 知 力:5550

 生命力:10600

 経験値:7800

 スキル:正義の盾、正義の剣


 クラウスは、気落ちした警備兵達を励ますように声をかける。

「みなさま、お疲れ様でした。日頃の厳しい訓練の結果、一般人よりも大きく上回る数値が出ておりますから、決して卑下することはありません」

 彼の言葉にホッとする者も多かったが、『それは糠喜びで、これから坂の上で少年少女達に尻を蹴られて下へ転がり落ちるような惨めな思いをするのだ』、という不安がどうしてもぬぐえなかった。


 クラウスはまず、少年を呼び出す。もちろん、一乗(いちじょう)ハヤテが転生した少年だ。

「私達は彼をトールと名付けました。トール、ここへ入って」


 ハヤテは、おっと、今はトールだが、おとなしくガラスケースに入る。

 このくらいの年頃の少年は、聞き分けがなくて、反抗したりイヤそうな顔をしたりするものだが、素直に従っているので、大人達の好感度を上げた。


 クラウスが扉を閉めた時に見せた目をぱちくりする仕草とちょっと微笑む姿が、美少年のそれに似ていて、とても可愛く、さらに好感度を上げた。

 でも、警備兵達にはそれが余裕綽々で、不敵な笑いを浮かべているようにしか見えなかったのは残念であるが。


 クラウスはケースの扉を閉めて、横のボタンを押す。

 測定が開始され、ケースの表面に白い数字が1項目、また1項目と表示されていく。

 観察者達は2、3歩ケースに近づき、ガラスの表面に次々と表示されていく数字を凝視する。

 まもなく彼らは息を飲み、顎が外れたかのように口をあんぐりと開け、その口に手を当てる

 そうして、観察者の全員が驚愕の表情を露わにした。


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