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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第53話 一刀両断

 大蛇の真ん中の首は、S字から素早く直線に変形し、大きく開けた口を少年の胸の位置へ突進させる。

 一方、トールは剣で迎え撃つと見せかけて、体を時計回りに回転させながら素早く左へ後退した。

 契約の指輪の力で直感力が高まった彼は、首の動きの少し先までを完全に予測していたのだ。


 すぐには止まれない大蛇の口が、少年の剣先をかすめて通り過ぎる。

 次に、最初につけた首の傷跡が血を滲ませながら通り過ぎる。


 まだ早い!

 伸びきってまで待て!


 邪気を伴う魔物の首がグンと伸びきって、たゆんと揺れた。

 同時に、閉じた口が大きな音を立てた。

 彼はここで右足を一歩踏み込んで、歯が折れるくらいに食いしばり、渾身の力を込めて剣を振り下ろした。


 ザクウッ!!


 トールの耳にまだ残る、あの堅い弾力の肉塊を押し切る鈍い音はいずこへ。

 魔物の生身を無慈悲に切り裂く音は短く、物がぶつかる音を伴わない。

 最高の刀鍛冶が鍛えた鋼は、その研ぎ澄まされた切れ味故、あまり音などしないのだ。


 彼の倍加した力には、肉塊はおろか、硬い筋や骨の抵抗など無力。

 鋭利な刃先は、彼の渾身の力によく耐えて、首のほとんどを切断した。


 ほとばしる血しぶき。

 声にならない大蛇の吐息。

 うつろに宙を向く蛇眼。


 トールは血しぶきを避け、後ろに数メートル跳躍した。

 流れる血潮は、草むらを真っ赤に染め上げる。


 皮一枚でつながったような首は二つに折れ、崩れ落ちた。

 地面にごろりと転がる頭は、無念の表情を見せ、二股フォークのような舌を投げ出す。

 トールの頭の中で描いた勝利の図は、ようやく現実となったのだ。


 残るは後一つ。

 向かって左の首だ。


 奴は3メートルほどの高さから、首長竜のごとく獲物を見下ろしている。

 口角をつり上げ、閉じた口から長くて黒い舌を突き出しては上に下に振って引っ込める。

 わずかに揺れる首は、獲物をいたぶる快楽がこみ上げているのか、小馬鹿にして挑発しているのか。


 一方、トールは振り下ろした剣を下段の構えのように維持したまま、最終敵の動きに注視した。

(これは、すぐには動かない)

 彼の直感は正しかった。

 獲物を狩る時に使うであろう筋肉の動きが皆無なのだ。

 実際に、大蛇はゆらゆらと揺れを繰り返す。


 まだ闘争心に満ちあふれる蛇眼の視線と、トールの敵愾心をむき出しにした双眸の視線が激しくつばぜり合いを見せる。


 そうした中、ついに暗雲に閃光が走った。

 続けて、空気を揺るがしながら轟く雷鳴が、固唾を飲む一同の全身を感電したかのように震わせる。


 トールは、鮮血がしたたる長剣を両手で力強く握り直すと、ゆっくりと中段の構えを取った。


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