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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第37話 追加の魔法講座

「そうだ。強化魔法と防御魔法について教えよう」


 クラウスのこの提案には訳がある。

 もし、追っ手と対峙したら、矢面になって戦うのは自分一人だ。

 その自分も魔力は半分しかない。

 メビウスは、体力を考えると、馬車に結界を張るだけで精一杯のはず。


 だから、この二人には、『自分の身は自分で守る』ことを知ってもらわないといけない。

 場合によっては、残りの二人の少女も守ってもらわないと困るのだ。


 そんなクラウスの思いを込めた提案は、受け手側には唐突な発言にしか聞こえなかった。

 トールは、右に左に首をかしげる。

「なんですか、それ? 武器と防具さえあれば、何も要らないんじゃないですか?」


 生徒が興味津々で食いついてくると思っていたクラウス先生は、あららと拍子抜けしてしまう。

 そこに馬車の震動も手伝って、危うく、前のめりにこけそうになった。

「あのねぇ……。いいかい? 魔法で武器や防具を出す前に、敵が攻撃してきたら、生身で防ぐのかい?」

「いいえ、逃げます」

 生徒の安直な解答に、先生は今度こそずっこけた。


「おいおい。相手が魔法で無数の矢を飛ばしてきたら、どうやって逃げるんだい?」

「あ、そっか」

「はいはーい! 矢が飛んでくる前に、先に攻撃します!」

 女生徒が挙手をするから、さぞ名解答と思いきや、やはり失笑を買うだけの安直解だった。


「それができたら苦労しないよ」

「いいえ、とにかく先手必勝よ! 電撃作戦ね! 前進あるのみ!」

 シャルロッテは、両手でジャブを繰り出す。

 クラウスは、苦笑いをしながら、彼女のジャブを両方の手のひらで受ける仕草をする。


「だから、無理だって。どんなに魔力が強い魔法使いでも、生身では戦えないよ。君達は、剣を使ったスポーツをやったことはないのかい? 剣といっても真剣ではなく、模擬剣だけど」

「模擬剣の意味がわからないわ。だけれど、なんだっけ、ほら、木の刀を振り回すやつ……」


「僕は、スポーツはボールを蹴るものしか覚えていないよ。(シュヴェルト)を使うから、きっと、日本語でケンなんとかじゃないのかな?」

「そうそう、ケンドー!」

「あ、思い出した。そうだよ、それそれ」


「ケンドー? へー、君達の前世では、そういう名前のスポーツなんだ。それって、剣を持つだけ? 防具とかないの?」

「あ、なんかかぶっていたり、身につけていた気がするわね」


「それだよ。どんなに強くても、生身では駄目で、魔法はまともに食らうと強烈だから、自分の身体の強化も必要なんだよ」

「そうなんだぁ」

 駄目な女生徒でも、先生の解説になんとなくだが理解を示した。


「では、解説をするけれど……、ええと、その前に、ローテンシュタイン語は、もう大丈夫だよね? 早口でも」

 生徒は二人とも黙ってうなづく。


 クラウスは、この反応の薄さに不安を覚えた。

「あのね、君達。こちらの世界では、声を出してね。そして、体で感情を表現することも大切だよ。そうしないと、不気味に思われるから」

はい()!」

よろしい(グート)

はいはーい(ヤヤー)

はい()は、一つで」

 シャルロッテは、ぺろっと舌を出す。

お嬢さん(メートヒェン)はそういうことをしない」

「もー、堅苦しいわね!」


「さて、強化魔法とは、身体能力をアップさせる魔法のこと。これで何倍もの高さに飛んだり跳ねたりできるし、着地に失敗して転んでも、怪我することはないよ」


 それからクラウスは、二人に強化魔法のやり方を手取り足取り教えた。

 教え方が良かったのか、二人ともすんなり習得した。


「いいねいいね。その調子。今、自分の手足を見てごらん。白く光っているだろう? それが強化された証拠だよ。着ている服まで光っているのは、服まで強化できたからさ」


「これでどのくらい強くなるのですか?」

「数倍から数十倍ってところかな。今の君達だったら、二階建ての家の屋根まで跳べて、そこから地面に頭から落ちても怪我しないよ。訓練すれば、もっともっと高く跳べるようになる。走る速さも、人間では誰も勝てない速さだろうね。おそらく、馬にも勝てると思うよ」


「スーパーマンですね」

 トールは、頭の中で自分の姿と記憶の中にある超人の姿を重ねていた。

「その言葉はわからないけれど、ローテンシュタイン語のズーパァマンに似ているね。『超人』って意味かな?」


「ええ、そうです」

「なるほど。君達の前世の言葉にも、こちらとよく似た言葉があるなんて、驚きだよ」


 クラウスは、飲み込みの早いトール達が我が子のように思えてきて、ありったけの知識を伝授しようと考えた。

「次は、防御魔法。これは、その名の通り、相手の魔法を防ぐものだよ」

「防具と何が違うのですか?」

 トールの素朴な質問にクラウスは、自分も昔、教師に同じ質問したことを思い出した。

 この手の質問は、時を超えて世代を超えて繰り返すことを改めて実感した。


「広義の防御魔法は、防具も含まれるので、そう言う意味では同じだね。でも、本来の意味は、防具とは違う。相手の魔法の攻撃力を弱めたり、無効化すること。それが防御魔法なのさ」

 トール達は、わかったようでわからない、という顔をしている。


「いいかい? 防具というものは、確かに相手の魔法の攻撃を防ぐけれど、相手の魔法を弱めることはできない。相手の魔法にまともにぶつかって防いでいる感じなのさ。それでも壊れない防具ならいいが、壊れるならもう防具の意味をなさない。わかるかな?」


「はーい!」

「はい。シャルロッテ君」

 挙手をするシャルロッテを、クラウスはあまり信用していなかったが、無視はできない。


「要するに、相手の攻撃をなかったことにする魔法ね」

 クラウスは、まともなことを言うシャルロッテに驚いた。

 でも、よく考えると、自分が言ったことを、ただ単に言い直しただけと気づいた。

「無効化もなかったことも同じだけどね。はいはい、ではこれを教えよう」

「先生! 『はい』は一つです」

 クラウスは、シャルロットにまんまとしてやられ、一本取られたと天を仰ぎ、苦笑した。


 それからクラウスは、二人に強化魔法を解除させ、防御魔法のやり方を手取り足取り教えた。

 これも、二人とも楽に習得した。


「これもいいねぇ。覚えるのが早くて助かるよ。今自分たちの手足が薄い紫色に光っているよね? それが防御の状態になっている証拠。ここで、相手から魔法で攻撃されても、力を弱めたり、無効化できるよ」


「これでどのくらい弱くなるのですか?」

「数値にするのは難しいけれど、今その状態で4分の1以下かな? もっと紫が濃くなれば、ほぼ0。つまり無効化されたのと同じさ。今君達に魔法をぶつけることはできないけれど、いつか練習でやってみよう」

「「はい!」」

 トールとシャルロッテは同時に返事をする。

 シンクロしたので、二人は大いに笑った。


「そういえば、一つ重要な話を忘れていたよ。君達に言っておかないとね。それはね……」

 クラウスは、そう言いながら、今度は黒猫の方へ目線を向けた。


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