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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第361話 トールの捨て身の攻撃

 魔王は、右手を彼女の方へ突き出した。

 その刹那、肉に硬い物が突き刺さる音。

 魔王は目を見開き、ビクリとする。背中に何かが突き刺さったのだ。

「させるか!」

 叫び声を後ろから浴びた魔王は、首だけゆっくり右に回して後ろを振り返った。

 そこには、鬼のような形相のトール。左手には、エクスカリバー。背中を突き刺しているのは、それだ。

「あいにくだな。さっき、女が剣を突き刺してどうなったか見ただろう? この体は、そんな物は通用せんのだ」

 そう言って彼は力むと、トールが体重をかけて押しているにもかかわらず、エクスカリバーが体から押し出された。またしても、傷口がみるみるうちに塞がっていく。


 不敵な面構えの魔王は、回れ右をすると、トールに向かって胸を張った。左胸の勲章が、いらつくほど自慢たらしい音を立てる。

「どうだ、思い知ったか。剣を突き刺しても、無駄だということを」

「無駄ではない!」

 再び、エクスカリバーが力強く突き出され、魔王の左胸に深く食い込んだ。

「頭の悪い奴だ。何度やっても同じ」

「いや、違う。この剣は、刺すだけではない」


「何?」

「教えてやろう。こういうこともできるってことを。爆破(シュプレングンク)!!」


 彼が魔法名を力強く叫ぶと、魔王の左胸の傷口から、強烈な光が発せられた。

 まさかの事態に驚愕する魔王は、瞬時に光の玉に飲み込まれる。それは、真正面のトールをも容赦しない。

 轟音を発しながら、光は巨大な玉に膨れ上がった。

 周囲に強烈な爆風が広がり、転がっていた肉塊や瓦礫が高速に宙を飛ぶ。

 穴の縁にぶら下がりながら爆風に必死に耐えるヴィヴィエンヌを、土砂が間断なく襲う。

 体が斜めになるほどの風圧と土砂の圧力。彼女は歯を食いしばり、固い地面へ指先を突き立てた。


 轟音がこだまする中、風が収まると、彼女は急いで穴の縁から這い上がった。

 トールと魔王が立っていた地面は、爆発のため、大きく抉られていた。

 周囲を見ても、姿が見えない。

 二人は、もしかして粉々に吹き飛んだのかも知れない。

「トール!! トール!! トール!!」

 まだ粉塵が漂う空間に、呼びかけの声がむなしく響く。

 答える者はいない。

 彼女の視界は、溢れる涙で、たちまち(にじ)む。

 そして、両膝を折り、両手を地面に突いて嗚咽した。

「トール……、生きていて……、お願いだから……」


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