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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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350/369

第350話 20対1

 ティルダは、ヴィヴィエンヌの剣の構えを見ても全く動じることなく、横一列に並ぶ親衛隊の後ろに悠然と退いた。

 続いて、列の真ん中から三人が後ろに下がり、隊長の前で壁を作るように並ぶ。

 残った左右の八人ずつ、合計十六人は、一斉に剣を構えた。


 まず、左側の八人が飛び出す。

 たちまち、円形に取り囲まれるヴィヴィエンヌ。

 中心から周囲までの距離は、互いに一歩ずつ歩み寄って剣を伸ばせば、切っ先が触れそうなほどの近さ。

 八人は、左右が等間隔になるように綺麗な円を描いて、切っ先を円の中心へ向ける。

 軍帽の下から覗く両眼は、血に飢えた獣さながら、ギラギラと輝く。


 とその時、ヴィヴィエンヌの斜め右の二人が、腕をわずかに動かした。

 だが、これは注意を引きつけるためのフェイク。

 彼女が目だけそちらに動かすと、左側の二人が剣を頭上に振り上げ、飛びかかる。

 衣擦れの音で反応した彼女は、体を左に向ける。

 振り下ろされた2本の剣。迎え撃つ2本のサーベル。

 甲高い金属音が響き渡ると、2本の剣は、腕ごと二人の頭上へ弾き返された。

 驚く二人の胸に、真横に走る鎌風。

 仰向けに倒れた軍服に、鮮血の帯が広がる。


 直ぐさま、後方から二人が剣を下段に構えて突進。

 振り上げられる2本の剣。

 だが、それらは、左回転しながら振り向く彼女の1本の剣に、右へ弾かれる。

 そして、遅れてきた1本の銀閃が、顎の下に走る。

 宙に浮く二つの頭。吹き上がる鮮血。崩れ落ちる胴体。


 今度は、ヴィヴィエンヌの左右から、二人が剣を右上に振り上げて襲いかかる。

 だが、二人の視界から、彼女の姿が忽然と消えた。

 魔法ではない。回避行動が早すぎるのだ。

 その直後、右の一人は、つむじ風になったヴィヴィエンヌの抜き胴で斬られた。

 そして、瞬時に背後へ回った彼女に腰を蹴られる。

 もう一人は、斜めに振り下ろした剣を止められない。

 そこに、蹴られた仲間が飛び出して、肩口から袈裟懸けに。

 膝を折る仲間の背後から、ヴィヴィエンヌが出現。

 彼女の一振りが、向かい側で呆然とする顔を、胴体から切り離した。


 続いて、ヴィヴィエンヌの左右から、二人が剣を突き出して走る。

 またもや二人の視界から消える彼女。

 2本の剣は、微香が残る空間を突いて、一直線になって停止。

 その直後、横にそれたヴィヴィエンヌが、二人の首に剣閃を描いた。

 軍帽をかぶったままの二つの頭が落下。

 遅れて、首のない軍服が血しぶきを上げて倒れ込む。


 一瞬の決着。まるで、早回しの活劇。

 ヴィヴィエンヌは、残った親衛隊へ不敵な面魂を見せつける。


 だが、待機していた右側の八人は、物怖じなどしない。

 先陣と同じく、素速くヴィヴィエンヌの周りで円形に展開。

 再び訪れた睨み合い。

 とその時、軍帽の下の眼球に映る魔女は、頭の上から四肢の先まで、さらにサーベルの切っ先まで、薄紫色の光を纏った。

 離れたところにいても、ビリビリ感じるような魔力。

 八人はその威容に圧倒され、金縛りのように動けない。息詰まる沈黙。


「躊躇するな!」

 廊下に鳴り響くティルダの一喝。

 声の方向へ目だけ向けるヴィヴィエンヌ。

 その隙に、一人が仲間へ目くばせする。気脈が通じる親衛隊の間では、それが攻撃の合図。

 合図を送られた二人とその向かい側の二人が、剣の柄を力強く握った。


 四人は、剣を素速く振り上げ、ヴィヴィエンヌを左右から襲いかかる。

 同時に振り下ろされた4本の剣。

 そこへ、薄紫色の光を纏う2本のサーベルが迎え撃つ。

 鼓膜を刺す金属音。

 残響の中、4本の剣は、持ち手の腕ごと頭上へ弾き返される。

 強い衝撃に顔を歪める四人の胸と腹に、2つの陣風が平行に走った。

 うつむきに倒れた四人の鮮血が、絨毯を染めていく。


 残るは四人。

 ヴィヴィエンヌの右の二人は、剣を頭の右に構え、鋭い切っ先を向けながら迫る。

 少し遅れて、左の二人が、剣を振り上げて飛びかかる。

 中央の彼女が串刺しになったところを斬り捨てる算段。

 だが、2本の剣は、薄紫色の残像を突く。

 その時すでに、ヴィヴィエンヌは、前方宙返りにひねりを加えて、突進した二人の背後に着地。

 2本のサーベルが二人の後頭部から腰にかけて、背骨に沿ってまっすぐ切り裂く。

 反対側の二人は、仲間に突き出された剣を前にして動けない。

 そこへ、ヴィヴィエンヌが、背中を斬った二人を横へ避けながら、前へ飛び出す。

 2本のサーベルの切っ先は、棒立ちの二人の心臓を突き刺し、背中から突き出た。

 軍服に鮮血の花が咲き、みるみるうちに大輪となる。


 20対1の圧倒的不利が、瞬く間に4対1。

 ここまで、睨み合いも入れて60秒も経っていない。

 ヴィヴィエンヌの虚勢のような「2分」の言葉は、誠のようだ。

 天井に張り付いたトールは、目にもとまらぬ速さの凄まじい剣戟に、右頬の痛みも忘れてガクガクと震えた。


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