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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第346話 破られた呪縛魔法

 トールは、このエクスカリバーで、巨人に変身したオスカルだけをピンポイントで吹き飛ばしたかった。

 しかし、巨体に似合わず、ヴィヴィエンヌ相手に蝶が舞うような動きをするので、狙いが全く定まらない。

 下手をすると、ヴィヴィエンヌや味方まで巻き沿いにする。

 敵味方入り乱れる所へ、カノン砲を撃ち込むようなものだ、と思えてきた。

 躊躇する彼は、心の中が迷いで一杯になり、「どうしよう」「何もできない」「でも何かしないと」のループに陥った。

 こうなると、乗っている馬が右往左往する中、ただただ揺れるしかなくなる。


 彼は、シミターを1秒間に3回振り回す巨人と渡り合う彼女や、次々と勇猛果敢に敵を斬り捨てる味方の戦いぶりに目を見張る。

 すると、それらにすっかり心が奪われた。

 一瞬で全てを灰燼に帰す、未来兵器のようなエクスカリバーではなく、汗が飛び散る肉体が、両軍の雌雄を決する白熱戦を描いている。

 殺戮なのに、なぜか『美』を感じる。

 次第に、馬上から戦記物の絵巻や屏風絵を鑑賞している気持ちになっていく。

 響き渡る金属音や、剣の摩擦による火花が、妙に心地よい。

 戦いの中で唯一人、完全なる傍観者。

 そこだ! そこを攻めろ!

 これはオートモードのゲームをプレイする感覚か。


「何やっているの!! その剣で壁を突破して!!」


 ヴィヴィエンヌの一喝が、トールの横っ面を張り飛ばした。

 華麗な絵巻物を見ているようなゲームの世界から凄惨な現実世界へ引きずり戻された彼は、声の主を探す。

 真っ赤な顔をした彼女が、倍の背丈の巨人相手に、猛烈なつばぜり合いをしていた。


 守りたい人がいる、と言っておきながら、この(てい)たらく。

 先ほどの戦いで、疲れが出てボーッとしたとは、チープな言い訳。

 強者揃いの仲間に囲まれて、バカ殿のごとく、良き眺めかなとは、非常識も甚だしい。

 敵を前にして武者震いまで忘れて、のほほんとしているとは、ドラゴン達に散々言われた通り、「鎧を脱いでこの場を立ち去れ」だ。


 トールは自分の右頬を思いっきりひっぱだいて、馬から飛び降り、壁に向かって突き進む。

 幸い、戦う集団の間隙ができていて、自分の前には壁しかない。

 あと10メートルのところで、彼は立ち止まり、仁王立ちになった。

 そして、両手でしっかり握ったエクスカリバーを、頭の真上に振り上げる。

 近くに味方がいるので、爆裂魔法は危険。

 だから、こいつを剣圧で叩き切る!


 とその時、彼の左から飛び出した巨人が、壁の前に立ちはだかった。

 巨人は瞬時に輝くと、光の中から燕尾服のオスカルが現れた。

 トールはドキッとしたが、ためらいを捨て、剣を振り下ろし始める。

 オスカルは、睨み付けながら、燕尾服の襟を正す。

 両者の眼から発せられる視線が空中で激突した。

 だが、オスカルの眼力が優勢。

 たちまち、トールは金縛り状態が始まった。

 振り下ろされる剣が、垂直90度から60度の傾き辺りまで来たところで、突然のろくなる。

 50度、45度、40度。

 でも、少しは動く。完全な金縛りではない。まだ声も出る。

 彼は、声の限りに叫ぶ。


「動けええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」


 魔力と魔力のタイマン勝負。

 体内でマグマのように対流する魔力を使って、全身を鎖で締め付けるような魔力を断ち切るのだ。

 できるはず! いや、できる! 諦めるな!

 剣は、40度付近で止まったが、持ち手の体に同期して小刻みに震えている。

 一方、オスカルの方は耐えきれないのか、顔が歪み始めた。彼も全身が震えている。

 拮抗する魔力。つばぜり合いと同じだ。

 すると、トールの全身からピシッピシッと音がして、何かが徐々に切れて、少しずつほどけていく。

 もう少し。あと、少し……。


「行っけええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!」


 赤鬼のような顔のトールが力の限り叫ぶと、無数の見えない鎖が一度に断ち切られた。

 止まっていた剣先は、一瞬で振り下ろされ、石畳を深く抉る。

「――っ!!」

 その時、剣先から発生した縦方向の円弧状の衝撃波が、オスカルを丸鋸で切るように、瞬時に切断。

 左右の二つに分かれた彼は、無念の顔を上に向け、両手で虚空をつかんだ。

 血しぶきを上げる二つの肉体は、時間差で後ろ向きに倒れた。


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