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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第340話 エクスカリバー第2段階

 町を出たトール達は、雪原に無数の足跡を発見した。

 それらは、北の方角へ続いている。

 彼らの推理は正しかった。

 二人は、馬を全速力で走らせた。


 強い風がトールの顔や耳を叩く。サラサラヘアがオールバックのように後ろへなびく。

 まるで嵐の中を走るよう。

 恐ろしい風音が、不安感を増幅する。恐怖心を煽る。

 すると、彼の心の中では、実に様々な(おも)いが去来した。


 悔恨。懸念。疑念。残念。雑念。


 彼はかぶりを振った。

 ネガティブな考えは払いのける。迷いは捨てる。

 全て風の向こうへ吹き飛ばせ。

 なぜなら、それらは何のプラスにもならないからだ。

 確固たる信念を貫くのだ。


 気持ちの整理が付くと、実にすがすがしい気持ちになり、身を切るような強い風が心地よい。

 すると、今度は、さらなる力を欲するようになった。

 エクスカリバーは、3段階に変形すると聞いた。

 トールは、エクスカリバーの柄を強く握りしめる。

「この剣の力が欲しい。もっと上の段階の力が欲しい」

 とその時、彼の視界に闇が広がった。


   ◆◆◆


 トールは、深い森の中を彷徨っていた。エルフの森に似ているが、違うような気もする。

 太い木の幹を触り、灌木を掻き分ける。だが、なぜそんなことをしているのかがわからない。

 そうだ、思い出した。自分の名前を呼ぶ声がしたからだ。

 でも、方角を見失った。だから、こうしているんだ。

「トール……」

 また聞こえてきた。今度こそ声の方を目指そう。

 彼がさらに灌木を掻き分けていくと、何やら光が見えてきた。

 そこには、白いドレスを着た、白髪の碧眼の美少女が後光のような光を纏って立っている。

 彼女の膝の辺りまで伸びる白髪が、無風でもユラユラと揺れる。

「ああ、あなたでしたか。ハルフェ・ドライシュタイン」

「そうよ。剣の力を求めたでしょう?」


「はい」

「あなたの心が強くなったから、次の段階に引き上げようかなと思って」


「ありがとうございます! 是非お願いします!」

「止めるなら、今よ」


「え? 今更……」

英雄の(ヘルデン)爆弾(ボンベ)の一歩手前になるのよ。魔力の消費も大きいし。体が衝撃でボロボロになるかも」


「かまいません!」

「そこまでして、何がしたいの? 自己満足なら、お断りよ」


「僕には守りたいものが、たくさんあるんです!」

「剣が強いから守れるんじゃないわよ。強い心を持っている自分が、剣を使って守るのよ」


「でも、折れる剣では、守れません。気合いだけでは、相手を斬れません」

「もちろん、そうね。ただ、何度も言うようだけと、強い心を持っていることが大切。そうしないと――」


「剣が扱えないのですよね?」

「ええ。それだけではないの。この剣に、あなたの心が飲み込まれてしまうの。その意味がわかるわよね?」


「はい!」

「本当に英雄の(ヘルデン)爆弾(ボンベ)は、魔界どころか人間界も焦土と化す力なのよ。それだけは絶対に忘れないでね」


「はい!!」

「ほんと、まっすぐな少年ね。じゃあ、第2段階に引き上げるわよ。形が変わるからびっくりしないでね」

 とその時、急に目の前に眩しい光が現れる。

 両手を振る彼女も森も視界から消えていった。


   ◆◆◆


 馬から伝わる振動で目が覚めたトールは、危うく馬から転げ落ちそうになった。

 頭を上げた感じでは、うつむいたまま、一時的に気を失っていたに違いない。

 左手は、エクスカリバーの柄を握っている。落としていないようだ。

 そうだ! エクスカリバーはどうなった!?

 彼は、急いで左手の先を見た。

「え!? 何これ!?」


 刀身の長さは、半分以下の1メートル弱。ギリギリ大太刀か。

 幅は、15センチメートルほど。少し広く感じる。

 刀の表面に見える波形の模様の近くに、びっしりと細かな文字が刻まれている。

 黄金の柄には、火を吐くドラゴンの浮き彫り。

 それにしても、重い。

 こんなサイズで、第1段階のエクスカリバーの5割増しだ。


「トール! あれは味方よ!」

 ヴィヴィエンヌの声に、トールは新エクスカリバーから前方へ視線を移す。

 見えてきた。騎兵の集団の最後尾が。

 二人は、さらに馬の速力を上げた。


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