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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第一章 異世界転生編

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第34話 にわか魔法授業

 クラウスは、道が悪路になったせいか、揺れが激しくなった馬車にハラハラしていた。

 少々がたついている馬車の車軸のきしむ音が気になる。

 折れやしないだろうか?


 それより、車と違って馬は生き物だ。

 いずれ疲れたり、腹が減ったり、喉も渇く。

 止まってしまったときは、追っ手がやってきて、決戦を覚悟しないといけない。


 一方、向かいの座席に座っているトールとその横のシャルロッテは、すっかり仲良しになっていて、馬車が坂道を下ると「ジェットコースターだ!」とはしゃいでいる。

 二人は、前世のことを少しずつ思い出しているらしく、「クレープ」とか「ジェーポップ」とか「ケータイ」とか、いろいろな言葉を交えて楽しく語らっている。


 そんな会話に混ざりたいクラウスには、ジェットコースターもクレープも聞いたことがない単語ばかりだから、彼らと一緒に笑えない。

 かといって、外を見てもどこまでも続く牧草地帯なので、飽き飽きしている。

 では黒猫の相手でもしようかと思えば、そやつは自分が座っている右横の座席で丸まって、そっぽを向いている。

 それでもかまおうとして黒猫の顔に手を伸ばしても、眼中にないふりをするから、憎たらしい。


 退屈で仕方ないクラウスは、貧乏揺すりを繰り返す。

 とその時、彼は、気を紛らせる良いアイデアがひらめいた。

 彼らの魔法の訓練にもなるから、一石二鳥に思えたので、即座に決行した。


「ねえ、君達? 魔法の練習をしてみないか?」


 とは言ってみたものの、魔力を消費するので、彼はあまり派手な魔法をお手本として見せてやることができない。

 そもそも、狭い馬車の中でもあるし、烈風なぞ起こせば、車体がバラバラになる。


 ならば、たとえば、造形魔法であれば目の前にちょっとした人形とか、奇天烈な物を見せてやれるので、子供達の好奇な目を集めることができる。

 しかし、これは意外に魔力を消費するのだ。


 それ以前に、クラウスは、手のひらに載せるサイズの小物を作るよりも、ど派手な壁や、物を無慈悲に吹き飛ばす突風のようなものが得意だ。

 他にも、大きな木槌を出現させて、ぶんぶん振り回すこともできる。

 普通、やりやすさは逆のように思えるが、作り出す物の大きさというより、本人が魔法のアウトプットに結びつくイメージのしやすさなのだろう。


 彼は仕方なく、昔、自分が魔法を習いたての頃に覚えた手品のような魔法を披露することにした。

 これなら魔法の消費も微々たるものだ。


「いいかい? 見ていてごらん」


 彼は、右手の人差し指を立てると、まるでそれがロウソクであるかのように、爪先に炎をポッと点した。


 ローテンシュタイン帝国の子供達なら、ここで満面の笑顔で拍手喝采のはず。

 ところが、目の前の異世界転生の子供達は、目を輝かせて真剣に見入っているだけである。


(張り合いないなぁ……。でもまあ、この真剣な眼差しは、教師としては嬉しいけれど)


 彼は左手で、炎ごと人差し指の先を握り、手を離すと炎が消えるところまでを見せた。

 まるで、手つきは手品師だ。

「さあ、君達もやってごらん」

 彼はジェスチャーを交えて、見物している二人に促した。


 トールもシャルロッテも、右手の人差し指を立てる。

 しかし、何も起こらない。


「心の中でイメージしてごらん」

 クラウスはアドバイスするが、それでも何も起こらない。

 彼らは、変化がない指先を見つめているだけである。


 こういう駄目な生徒を教えて成功させ、達成感を味わわせるのが教師の役目である。

 とはいえ、彼は非常勤講師で専門は薬草学なので、実は、魔法の実技の教え方は不得手なのだ。

 先ほど戦いで見せた魔法は、自己流ではないのだが、生徒に教えるとなると訳が違う。


 そうは言うものの、一応講師の資格を得るために、一通りの学科は基本的な知識なら持っている。

 クラウスは、畑違いではあるし、教え方も慣れていないが、できる限りのことはしてあげたいという気持ちに突き動かされた。


「心の中で、何かが燃えるイメージを持ってごらん」

「「……」」

 駄目だ。


「力まなくていいよ。でも、集中して。燃える物が何か、どう燃えるかをイメージして」

「「……」」

 これでも駄目だ。


(原因がわからない。

 もしかして、この子らは、火炎魔法が使えないのかもしれないな。

 潜在能力はあるが、力が眠っているのだろうか?

 それとも、実は、魔法を全く使えないとか??)


 果たして、彼らは、魔法の力が発揮できるのだろうか?


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