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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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330/369

第330話 無人の町

 水晶の魔王の王都は、確かに奇妙な外観であった。

 建物は、細長いペンシルビルのよう。大抵は、雪原のように白い壁だ。

 このペンシルビルの頭に、極彩色の大きくて丸い物。さらに避雷針。

 垂直の白ネギに、カラフルなネギ帽子と言ったところだ。

 この建物には、一切の窓がない。

 出入り口らしいドアが下に見えるが、固く閉ざされたまま。

 人間界にはこのような建物がないので、ドームの屋根を持つ聖堂を見た魔物が、独自の感覚でアレンジし、結果的にこのような不可思議な形状の建物群をこしらえたのか。

 どことなく、芸術的、あるいは近未来的でもある。

 そんな建物が、石畳の狭い道の両側に、所狭しと並んでいるのだ。


 フックスシュタインは、「そこを右」「次は左」「突き当たりを右」とトールに指示をする。過去に攻め込んでいるので、道を熟知しているのであろう。

 騎兵達は、トールの馬の進む方向を頼りに、手綱を引く。

 しかし、先頭を行くトールは気が気でない。

 道は馬が2頭並んでやっと通れるほどの狭さ。

 4、5人が通せんぼをすれば、たちまち行く手を阻まれる。

 曲がり角を曲がると敵が待ち構えているのではないか。そんな恐怖心が募っていく。

 指示通りに曲がる度に、人気のない石畳が視界に飛び込んで、ほんの少し安堵する。

 だが、簡単に引き返せないところまで町の奥深く入った頃になると、その程度では安心できなくなってきた。


 百二騎の騎馬隊が石畳の道を蹴って音を轟かせているのに、様子を窺ってドアから覗いている顔がない。

 彼らは、怯えているのか? すでに、町を捨てて逃走したのか?

 王都なら、活気に溢れているはずだ。

 ついさっきまで、談笑をしながら並んで歩いている魔物が、荷車を押す魔物が、走る子供を追いかけている魔物の母親がいたかも知れないのだ。

 だが、そのような日常の想像図は、すべてが死に絶えたような光景に置き換わる。

 トールは、だんだん、町全体が自分達侵入者に仕掛けられた罠のように思えてきた。


「本当に、ここは王都なのか? 偽物ではないのか?」

「何を馬鹿なことを。魔王がいる王都に間違いない。無人ではない。この先で強い魔力を感じる。ヴィヴィエンヌも同じように思っているはず」

 トールは、後ろをちらっと見てヴィヴィエンヌを探すも、見つからなかった。


「誰もいないことを、どう思う? 罠ではないのか?」

「罠なら、引き返すのか?」


「当然だ! 我々は死にに来たのではない!」

「今更何を言う。臆病風にでも吹かれたのか? どんなことがあっても、その物騒な剣で全てを解決するのではないか?」


「だが、敵が我々をそう易々と――」

「前を見ろ。あそこに頭一つ飛び抜けて高い建物が見えるだろう? 白く輝いている丸い物が3つ並んで見える所。あれが水晶の魔王の宮殿だ。あそこに行けば、無人の心細さから解放される。わんさか出てくるぞ。嬉しくて小躍りするくらいな」

 鎧の背中を前足でトントンと叩くフックスシュタインの言葉に、トールはゾクッとした。

 魔王の宮殿は目前。もう後には引けない。魔王の首を取るしかないのだ。


「その前に、退路を断たれる――」

「ゴチャゴチャとうるさい! 逃げ道をいつでも作っておかないと、戦えないのか!? 魔王の首を取ったとなれば、我々の前に立ちはだかる奴などおらぬ! 大手を振って帰ることができるのだぞ! いいか! とにかく前へ突っ走れ!」


 いよいよ、白く輝いている丸い物が3つ、45度の角度で仰ぎ見るくらいに近づいてきた。

 すると、狭苦しかった道から、急に広場へ出た。


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