第317話 白いドラゴンの群れ
トールは、着地したドラゴンの背中から飛び降り、騎兵達に徹底抗戦を伝えた。
彼らの士気は大いに上がった。
ここでトールは、包囲網突破を提案したのに彼らが無言だった理由を、やっと理解したのだった。
トールの提案により、村人を土に埋めることにした。
魔物が彼らを食らう可能性があったからだ。
胸の位置に深紅に輝く直方体の魔石があるが、それを破壊すれば、体が消滅する。
しかし、一人一人にそれをするには時間が掛かる。
なにより、自分達が村人を殺しているようで気分が悪い。
とにかく時間がないので、皆で手分けをして臨時の穴を掘り、村人を埋めた。
墓石の代わりに、近くにあった丸い石が置かれた。
ヴィヴィエンヌの方は、まだ意識が回復せず予断を許さないが、治療中の犬顔の騎兵によると順調に回復しているとのことだった。
彼は、ウサギ顔の騎兵を呼んで、ヴィヴィエンヌのそばで警護に当たらせた。これから彼女を連れての戦闘は、非常に危険だからだ。
そろそろ敵が動き出しているかも知れない。
二匹のドラゴンが周囲の偵察のために飛び立った。
ところが、彼らは、1分もしないうちに慌てて戻ってきた。
北の集団がこちらに向かって動き出しているらしい。
さらに、彼らよりも大きい、白いドラゴンが五匹混ざっているという。
ほどなくして、北の方角から土埃が見えてきた。
先頭集団は、横一列になった百騎ほどの騎兵だ。
土埃の中から、フワッと白いドラゴン達が宙に舞う。
確かに、でかい。
奴らは羽を大きく羽ばたかせ、先頭集団の頭上を通過し急接近する。
攻撃の口火を切るようだ。
トールは、まだ意識を取り戻さないヴィヴィエンヌの治療を部下二人に任せ、颯爽と馬にまたがった。
「ドラゴンは俺が倒す! それから、合図をしたら突撃! 目標は先頭の騎兵! ただし、深追いはするな!」
彼はそう言って、馬上でエクスカリバーを取り出り、敵に向かって突進した。
そして、十分接近したところで馬を下り、両手で柄を握りしめ、剣先を中央のドラゴンに狙いを定めた。
「爆破!!」
彼が気合いを込めて魔法名を叫ぶと、剣先からビームのような強烈な光線が発せられた。
それは、瞬時に中央のドラゴンを直撃する。
爆発音とともに、巨大な火の玉のような炎が膨れ上がった。
同時に、ドラゴンの体が粉々に飛び散る。
その爆風で、両側にいた四匹のドラゴンが大きく飛ばされた。
「爆破!!」
すかさずトールは、左端のドラゴンを爆破。すぐ右隣にいたドラゴンが、爆風の衝撃で体を損傷し、落下した。
同じ要領で、彼は右端のドラゴンも爆破。すぐ左隣にいたドラゴンまで巻き込まれた。
焼け焦げたドラゴンの肉片や、ドラゴンそのものが振ってくるので、真下にまで進軍していた先頭の騎兵が、大混乱となった。
「突撃!」
トールの号令で、軽騎兵中隊が一斉に突撃を開始した。
勇猛果敢な騎兵の攻撃で、敵の騎兵は総崩れとなり、我先にと逃走した。
後続の密集した歩兵も、踵を返し、競争するように逃げ出す。
混乱は拍車が掛かり、将棋倒しになる者や、味方を踏みつけて逃げる者で、完全にパニック状態になった。
軽騎兵中隊は、敵兵の最後尾にいた二百人ほどを斬り捨てたところで、深追いを止めて撤収した。さらなる恐怖に陥れるには、それで十分であったのだ。
敵兵達の後ろ姿は、もうもうと上がる土埃の中へ消えていった。
その時、味方のドラゴンが、トールへ急報を告げに舞い降りてきた。
「今度は南の軍団が動いたぞ!」
「わかった! 西の方は!?」
「まだ動きがない!」
「よし、今がチャンスだ! 全員、南の敵を迎え撃つ! 我に続け!」
トールと騎兵達は、南の方角で徐々に湧き上がる土煙を目指して猛進した。




