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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第314話 魔王の非情な命令

 エクスカリバーを前にして逃げおおせたのは、背が極端に低くて衝撃波が頭の上を通過した四名だった。

「逃げた奴らを追うな! 奴らが恐怖を軍隊へ持ち帰るはず! 近くに隠れていないかだけを確認しろ! また、村人の生存者も確認しろ!」

 トールの指示で、騎兵が周囲の検分を開始した。


 彼らの眼前には、実に(むご)たらしい光景が広がっていた。

 斬り殺されるならまだしも、多くが体の一部を食われて欠損している。

 一緒に検分するトールも、吐きそうになるのを堪えるのに必死だった。

 村人は何をしたというのだ。

 ここまで残酷な仕打ちを受けることでもしたのか。


 ちょうどその時、二匹のドラゴンが舞い降りてきて、口々に報告する。

「西では、三方向の軍勢が合流した。北は水晶の魔王の軍、南は(あお)の魔王の軍だ。奴らは手を組んだと思われる」

「装備は本格的だ。完全にこの土地を制圧しに来たようだ」


「西から向かってきたのは?」

「装備から見て、領地に含まれなかった未開の連中だ。奴らまで動くとは聞いていなかった。誰がたきつけたのかはわからない」


「で、東の我々の支援部隊は?」

「彼らも南北から挟撃されて、東へ撤退している」


「何!? 撤退だと!?」

「そうだ。そして、ちょうどここは突出部で、我々と歩兵との間に、いち早く、南北から敵に割り込まれた。つまり、――」


「我々は孤立したのだな」

「そうなる」


「この近くの敵は、どの辺りにいる? 数はどれくらいだ?」

「四方向とも500ないし600メートル離れている。およその数だが、北は千人、南は二千人、西は数え切れない。だが、東に割り込んできたのは、まだ二百人程度だ」


 その後、圧倒的に囲まれている方が不利であるにもかかわらず、敵は警戒しているのか、攻めてこなかった。

 ドラゴンが偵察に飛んだところ、四方の敵に動きはないとのことだった。

 かなりしばらくしてから、騎兵が全員戻ってきて、生存者0の報告をした。

 三百人以上いたはずの村人が、何の罪もないのに、残忍な敵によって虐殺されたのだ。

 トールは、怒りに燃える騎士達を一箇所に集めた。まだ治療中のヴィヴィエンヌも運ばれた。

 彼は馬にまたがり、全員を上からゆっくりと見渡す。


「お前達、良く聞け! 見ての通り、我々は敵に囲まれた! 敵は、無抵抗の者を手に掛ける極悪非道の輩だ! だが、この俺がこの剣で、包囲網を突破し、必ず全員を連れて帰る! ここにいるヴィヴィエンヌもだ!」


 士気を鼓舞するトールに、騎兵は抜剣して振り上げ、鬨の声を上げた。

 これから、トール率いる軽騎兵中隊の奇跡の脱出劇が始まる――。

 誰しも、そう思った。


 とその時、東の方角から一匹のドラゴンが飛来した。魔王のところへ向かったのとは違うが、味方のドラゴンであることには間違いなかった。

 騎兵達は上空を見上げ、こちらへ急降下するドラゴンをジッと見つめる。

 あの装備は、伝令のだ。

 何があった? 敵襲か? それとも、反撃に出た味方の増援部隊の到来か?

 全員の視線を一身に浴びたドラゴンが、羽を大きく羽ばたかせて着地し、直ぐさま大声で伝達する。

「魔王ヴァルトトイフェル様のお言葉である。全員、心して聞け」

 予想を覆された騎兵達に緊張が走る。

 彼らは、一斉に固唾を呑んだ。


「危急存亡の(とき)なり。総員、任務を最後まで遂行すべし。敵襲あらば、現時点での到達点を断固死守せよ。撤退は死罪なり。以上」


 下達(かたつ)を受けた全員が、時間が止まったかのように凍り付く。

 彼らの耳の中で、「断固死守せよ」の言葉が、いつまでもリフレインのように鳴り響いていた。


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