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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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312/369

第312話 襲撃された村

 トールの号令で、一斉に軽騎兵隊が踵を返す。

 怒濤の進撃から一転して、迅速な撤退。

 ドラゴン二匹は、周囲を哨戒しながら飛翔する。

 残りのドラゴン一匹は、天空の魔王へ火急の報を告げに帰還を急いだ。

 最前線の歩兵と合流するには、それほど時間は掛からないはず。


 ところが、肝心の歩兵の姿が見えない。

 大地の起伏をいくつ超えても、誰もいないのだ。

 トールの胸中に、モヤモヤした何かが立ちこめてきた。


 すると、前方を見るトールの目に、黒煙が上がるのが見えた。

 あの位置は、ヒヒの顔の村長がいる村。ヴィヴィエンヌが店を構える場所。

 近づくごとに、黒煙の筋が増えていく。襲撃か?

 いや、あれは全て、助けを求める狼煙であって欲しい。

 トールは、馬の速力を限界にまで早めて、矢のように飛び出した。


 悪い予感の方が的中した。狼煙ではなく、放火だった。

 ヴィヴィエンヌの店と居酒屋4軒は、燃え尽きて炭化した柱が数本残っているのみになっていた。

 幸いかな、遺体らしきものは見当たらない。

 その時、風が複数の悲鳴を乗せてきた。

 見ると、あちこちに新たな黒煙がもうもうと立ちこめている。

 鬼の形相になったトールは、宙を舞うように馬に飛び乗り、猛烈な勢いで悲鳴のする方へ駆けつけた。


 見えてきたのは、燃える家。

 全ての家が火炎に包まれている。

 それよりも、家の周りで起こっているおぞましい光景へ目が釘付けされた。

 獣人が、地面に転がる獣人をむさぼる。

 敵兵が、死んだ村人を食らっているのだ。

 彼は鞘から勢いよくサーベルを抜いて、野蛮な獣人を馬上から一振りで斬り捨てる。

 魔物が魔物を食らうのは、未開の奴らだと聞いたはず。

 なのに、奴らは剣も斧も持っていて、鎧も着ている。

 他国の兵士に見える。

 どういうことだ?

 トールに追いついた騎兵達も、彼を見習って、抵抗する獣人をことごとく斬り捨てた。


「トール様! あれを!」

 オオカミ顔の騎兵が剣で指し示す先に、紫色のドレスを着た女性を食らっている豚顔の兵士がいた。

 女性は、ヴィヴィエンヌだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 逆上したトールは、馬から飛び降り、獰猛な獣のように咆哮して、豚顔の兵士へ突進した。

 その恐ろしい剣幕にたじろいだ兵士は、転げるように逃げるも、トールのサーベルで全身を滅多斬りにされた。

 まだまだ切り刻みたかったトールだが、後ろからオオカミ顔の騎兵に羽交い締めで制止され、ヴィヴィエンヌの元へ連れて行かれた。


 仰向けに倒れる彼女の元には、イノシシ顔の騎兵と犬顔の騎兵も駆けつけていた。

 犬顔の騎兵は、両手を彼女の無残な傷口にかざし、手から発せられる柔らかい緑の光で治療中だった。

 彼女の鮮血が、灰色の大地を真っ赤に染めている。

 トールは、首を軽く左右に振りながら、彼女の傍らで片膝を折った。

 イノシシ顔の騎兵が、トールの肩口から覗き込む。

「こりゃ、豚に食われて、ひでえ傷だ。でも、まだ息がありやすぜ。おら、ワンコロ野郎! 治癒魔法全開にして、このお姫様を助けねえと、俺様の剣で貴様の首が空を飛ぶぜ!」

「静かにして! 治療に集中させて! これでも魔法全開! だけど、食いちぎられた左手首と右足首は、どうにもならないから!」


「てめー! のんきなこと言ってねーで、魔法で手足を再生しろ!」

「治癒魔法では無理! それより出血を止めないと、命に関わる!」


 トールは、気を失ったヴィヴィエンヌの血だらけの頬をなで、復讐を誓った。

「野蛮な奴らには、断固として(はがね)の制裁を加えてやる!! 一人残らず、皆殺しだ!!」


 そこに、狐顔の騎兵が血相を変えて、躓きながら駆け寄ってきた。

「トール様! 大変です! 我々は囲まれました!」


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