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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第304話 エクスカリバーの一撃

 トールは、馬を後ろへ振り向かせた。

 そして、中央にいる、声を発したと思われる獣人を睨み付ける。

「どんな礼儀だ?」

「馬から下りて、這いつくばって、これから通りますのでよろしくお願いいたします、って言うんでさあ。そして、戦いの魔神様に、祝詞を上げて武運長久を願う。武人たる者、一応の手順は守ってほしいもんで――」


「そうか。なら、お前がやれ。代表を務める名誉を与える」

「それは、一番偉いのがやる仕来りですぜ」


「関係ない。よく知っている者が担当しろ」

「滅相もない。偉い人を差し置いて――」


「よく考えたら、戦争をしに来たのに、そんなのんびりした仕来りで事を始めるなど、時間の無駄。今から破ってやる。一刻も猶予はないのだ。付いてこい」

「やなこった。罰が当たる」


「脱落者は、斬り捨てる! 硬い(ハルトゥ)切っ先(シャルテ)!!」

 トールは、左手を真横に伸ばす。

 すると、その先に黄金色に輝く幾何学模様と古代文字の魔方陣が出現した。

 魔方陣から、サッと突き出るのは、2メートル近くある大剣。

 第一段階のエクスカリバーだ。


「おっと、危ない危ない……。わかりやしたぜ。好きにしてくだせえ。で、その剣でこれから大人数を相手にするんですかい?」

「だから、こうしてここまで来たのだろう?」


「その剣の威力を見てねえんでさあ。ここで拝ませてくれねえですかね?」

「なら、見せてやるから、黙って従うな?」


「うーん」

「即答できないなら、今この場で斬る!」


「はいはい。もう黙って従いますぜ」

「じゃあ、向こうに二階建ての大きな家が見えるだろう? 見てろ」

 そう言ってトールは、50メートル先にある農家の家に向かって剣先を向けた。


「ああ、普通の農家の2倍の大きさはあるから、あれは村長の――」

爆破(シュプレングンク)!!」

 獣人が言い終わらないうちに、トールは気合いを込めて魔法名を叫んだ。

 すると、剣先からビームのような強烈な光線が発せられ、瞬時に家に激突。

 たちまち、家は大音響を上げて爆発し、炎に包まれた。

 動揺した馬が、恐れおののく騎兵を乗せているのを忘れ、右往左往する。


 とその時、炎の中から獣人の兵士が何人か飛び出してきた。

 命からがら脱出した彼らは、騎兵の集団を見つけると、武器を捨て、両手を頭の上に載せて歩み寄ってきた。

「投降した者には手を出すな! そして、奴らに仲間の投降を促せ! 同じ目に遭いたくなければ、武器を捨てろとな!」

 トールの言葉に、騎兵は今までとは打って変わって、機敏に行動した。


 捕虜達が、仲間の投降を促しに走る。

 たちまち、周辺に点在する家々から、武器を捨てた兵士が続々と集まってきた。

 中には抵抗して徹底抗戦を叫ぶ者もいたが、立てこもる家がトールの剣によって焼き払われると、慌てて投降した。

 武器は集められ、騎兵の中で一番魔法が得意な者の破壊魔法で、鉄くずとなった。

 捕虜達は、トールが掲げる大剣を前に、天空の魔王への忠誠を誓わされる。

 それに抵抗する者は誰一人いなかった。


「よし、次の村へ行くぞ!」

 トールは、紫色の炎を纏う馬に颯爽とまたがり、馬の(あぶみ)で腹を勢いよく蹴る。

 彼の馬が矢のように飛び出すと、それを合図に、百人の騎兵が一斉に動き出した。

 平原に地響きを立てながら進む彼らは、脇目も振らず、次なる村を目指す。


 電撃作戦のように始まった軽騎兵中隊の侵攻は、噂よりも早かった。

 急を告げる仲間が隣の村へ到着したときには、そこの兵士は武装解除されている。

 トールに導かれた精鋭の騎兵が、魔王不在の土地を席巻していく。

 もう誰も止められない。


 彼らは突き進む。これが、魔界騒乱の序章であることも知らずに。

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