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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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302/369

第302話 燃える魔法科学研究所

 午後0時。

 メーヴェンブルクのローテンシュタイン帝国魔法科学研究所は、猛火に包まれていた。

 すべての建物は土台から破壊され、元の姿をとどめないほど崩れ落ち、残骸を舐める炎が残らず焼き尽くそうとしている。

 消防団の懸命の消火活動にも関わらず、研究所内の何か特別なものが燃えているのか、黒煙と炎が治まらない。

 なお、所長のハンス・メビウスと助手のゲオルグ・クラウスは、たまたま、ローテンブルクのメビウス魔法道具店へ、新作の魔法測定器の実験に向かっていたので無事。

 研究所の研究員達は、所長がいない隙にこっそりと抜け出して、ある者は喫茶店でお茶を飲んだり、ある者はウインドウショッピングをしていて無事。彼らは、後日、なぜ犯人を見ていないのかの説明に窮することになる。


 町中を震撼させた大火災は、3時間後に鎮火した。

 まだ白煙がイヤな臭いも乗せて周囲にたなびく中、駆けつけたメビウスとクラウスが、頭を抱えながら状況を見て回った。

 白い建物は、すべて、焼け焦げた無残な瓦礫と化していた。

 ドラゴンが多数飛来して、踊るように踏みつけ、口から吐く炎で余すところなく焼いたとしか思えない惨状だ。


「メビウスさん。放火犯の目的は何でしょう?」

「それをここで聞くかね?」


「あ、すみません。考えれば、自明でした」

「こりゃ、ロム・リュッベンドルフが悲しむぞ。完全に手足をもがれたな」


「どこで、バレたのでしょうか?」

「それがわかれば、先回りして、あの貴重な水晶玉や鏡や諜報道具を隠しておったわ。分散していると感づかれて、すべての建物を破壊しおった! 忌々しい!」


「予備はないのですか?」

「君は、ロムみたいな質問をする奴だな。ないから困っておる」


「水晶玉なら、宮殿にいる千里眼の魔法使いから借りるとか」

「借りるなら、ロムに頭を下げさせろ。わしは、知らんぞ。ただし、あの千里眼の水晶玉は、魔界の様子が覗けるのかまでは保証できんがな」


「魔界の中の情報屋は、無事でしょうか?」

「無事だとわかるくらいなら、わしが魔界と行き来しておるわ」


「犯人の特徴から、何かご存じですか?」

「君は、今度は、警官かね? 金髪紫眼でプレートメールを着用した大剣とサーベルの二刀流なぞ、聞いたことがないわい。しかも、大剣から発せられた雷撃で、建物が吹き飛ぶなんて、冗談みたいな魔力の持ち主は、どこの世界におるのだ?」


 とその時、歩く二人の後ろから中年男性のような声が聞こえてきた。

「あー、メビウスさんですかな? ちょっと聞きたいことがありますので、お時間を」

 二人が同時に振り向くと、太った警官が、ふーふー言いながら、右手に白い紙を持って走り寄ってきた。

「目撃者の証言から、人相書きを作りました。これなんですが、見覚えがあったりしますかな?」


 メビウスとクラウスは、人相書きを覗き込み、記憶にある無数の顔と照合する。

 彼らは、数秒後に目を見開いた。

 ほぼ一致する人物がいたのだ。

「おや? もしかして、恨みを買うような人物にこんな顔をした者がいるとか?」

 警官は眉根を寄せて、二人の顔を交互に下から覗き込む。


「……すっかり忘れておったな、建物を吹き飛ばす冗談みたいな魔力の持ち主を」

「……ええ。まさか、この建物を壊すとは思ってもみませんでしたから、フィルターが掛かっていました」

「ほほう。で、この男の名前は?」


 メビウスとクラウスは、人相書きに落とした視線を、ゆっくりと警官の眼へ向ける。

「「トール・ヴォルフ・ローテンシュタイン」」

 二人は、幽霊でも見たかのような顔でハモった。


   ◆◆◆


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