第3話 魔物討伐隊の美少女達
「ヒル? あいつの弱点、まだ見えないの?」
声の主の少女は、シャルロッテ・アーデルスカッツ。15歳。
転生前の名前は、二城カリン。
丸顔。わずかにつり目。細い眉。低い鼻。
金髪で腰に届く長さのツインテールの持ち主。
着用している戦闘服は、上は紺色のセーラー服風、下は細くて紅い横ストライプが2本入った白いミニスカート。これに短めの黒いブーツを履いている。
これは、帝国所轄の魔物討伐隊の制服で、年少者が着るものだ。
動きやすいようにとの配慮からか、膝上15センチとかなりのミニスカートだが、そこだけ見てしまうと、戦闘用らしからぬ服である。
おっと、彼女に蹴りを入れられないように、ジロジロ見るのは要注意だ。
彼女は自慢のツインテールを揺らしながら、それまで岩の右側にて魔物の背中へ注いでいた視線を、同じ岩の左側にいる少女へと移動させ、答えを待った。
その視線の先にいる『ヒル』と呼ばれた少女は、ヒルデガルト・リリエンタール。彼女も15歳。
転生前の名前は、市場アオイ。
丸顔。少し垂れ目。少々太い眉。やや高い鼻。
シャルロッテと同じ戦闘服とブーツ姿で、片膝を立てて腰を落としている。
彼女は、銀髪で短めのショートヘアの癖毛を左手でいじりながら、装着した軍用ゴーグルに右手の指を当て、魔物の背後を上から下まで子細にスキャンする。
ゴーグルの表面には、照準の他に、ごま粒大の白い文字が高速に表示され、スクロールしては消えていく。
そうして彼女は敵の急所を見つけ出したのだが、無表情を保ったまま、少年のようなトーンで、ぼそっと答える。
「シャル。延髄。後頭部のすぐ下」
その短い言葉を受け取ったシャルロッテは、金髪ツインテールを腰の周りで回転させて金色の軌跡を描き、岩の右側から魔物の後頭部付近の様子をうかがう。
しかし、彼女の眉は八の字に変形し、口は尖り、首が45度傾く。
「あの毛むくじゃらのずんぐりむっくり、どこが後頭部かわからないわよ」
「私ならわかる」
「あんたは歩くX線だから、レントゲン写真みたいに急所が見えるかもしれないけれど、私は無理。あそこまで連れて行ってあげるから、『ここ』って指させる?」
それを聞いたヒルデガルトは、目を罰点印にしながら「やだ」と鳴きそうな声を漏らして、ふるふるふると首を左右に動かす。
「あんたねぇ……、一応、魔法使いでしょうが。防御魔法を使うとかして、怪我しないように近づけばいいじゃない」
シャルロッテのもっともな提案に対しても、ヒルデガルトは首肯せず、「でも、怖いもん」と、ちょぴり涙目で訴える。
「んもう……。IQがめっちゃ高いあんたに行動力があれば、天下布武、最強なんだけど」
「ご、ゴメンなさい。でも、『天下布武』はこのときに使う言葉じゃないけれど」
「だから未だに肩章は銀の星二つなのよ、あんたは」
「でも、シャルだって銀の星三つじゃない」
「うっさいわね!」
「シャールー♪ じゃ、私が首根っこをつかむから、その隙にちゃちゃっとやっつけちゃって」
今度の声の主は、シャルロッテ達の隠れている大岩から5メートルほど右へ離れた岩に身を潜める少女だ。
「マリー。どうやってつかむの?」
シャルロッテに『マリー』と呼ばれた少女は、マリー=ルイーゼ・ゾンネンバオム。この子も15歳。
転生前の名前は、参上ナナセ。
面長。ぱっちりした目。きりっとした眉。すらっとした鼻。
彼女も同じ戦闘服を着ているが、背が高いのでちょっぴり大人っぽく見えてしまう。
それには理由がある。
鎖骨の下にある、メロンというか小玉スイカというか、形が良く立派な二つがそう感じさせるのだ。よくこのサイズを包む戦闘服があったものだ。
おっと、こっちもジロジロ見ると、残念な胸のシャルロッテに蹴られるからやめておこう。
マリー=ルイーゼは、見た目は頼れるお姉さんだが、時々、甘えん坊さんのような声を出すので、ギャップが激しい。
先ほどのシャルロッテの疑問に対して、彼女は、オレンジ系の色の髪で腰まで垂れたポニーテールを揺らしながら、ウインクをして自信たっぷりに回答する。
「新体操みたいな長ーいリボンで、ギュッとね。束縛の魔法よ」
シャルロッテは目の色を変える。
「へー。じゃ、よろしく。ついでに急所の位置も教えてね」
「はーい」
「さ、行くわよ!」
「おー!」
「ちょっと待ちなよ、シャル! マリーも!」