表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

299/369

第299話 掠われたトール

 その後、マリー=ルイーゼ達五人と衛兵五人が、扉の向こうにいるはずのトールを探したが、煙のように消え失せていた。

 残っていたのは、通路に残る濡れた足跡。

 たどっていくと男湯に出たが、そちらはもちろん、もぬけの殻。

 彼の脱いだ服が、脱衣所で持ち主の帰りを待っているだけだった。


 凶報は、ヴィルヘルミナとアーデルハイトの耳にも入った。

 黒猫マックスや彼女達が見た銀色の人物の情報を元に、宮殿の敷地内で大がかりな捜索が行われたが、逃走の痕跡らしいものはなく、無駄に時間が過ぎていくばかり。

 新たな賞金稼ぎの犯行か。それとも魔界の人物の犯行か。

 誰もが自分達の考えを言い合うだけで、そこから先には全く進まなかった。


 夜が白々と明ける頃も、捜索は続いた。

 だが、10時間近く経っていて、捜索する誰もが、すでに誘拐犯は逃げ延びた後だろうと思っていたので、真剣味が薄れていた。


 朝8時。

 トールが牢獄と錯覚した秘密の部屋で、丸テーブルを囲む五人がいた。

 それは、ネリー・アンドレーエ情報相、双子の密偵ロムとラム、ヴィルヘルミナとアーデルハイト。

 今日のロムとラムは、民族衣装を着た、お下げが似合う美少女の出で立ちだ。

「二人とも、何か情報が入ったらしいな」

 ネリーが、自分を挟んで左右に座る双子を交互に見て、口火を切った。

「先に、ラムにエルフのことを聞いて」

「あら、ロム姉さんの魔界の情報は後でいいの? 私のは、大したことないわよ」


「だからよ」

「ひどー。……いいわよ。エルフの情報だけど、夜明け前に森の西の外れで、全身が銀色に光る人物が、何か大きなものを肩に乗せて歩いているのを目撃されているわ。おそらく、誘拐犯とトールね。私のはこれだけ。ロム姉さん、オーバー(どうぞ)


「魔界の動きだけど、ついに、天空の魔王の軍隊が、西へ侵攻するための準備を始めたわ。でも、おかしいの。準備しているのは騎兵だけで、百人規模。相手は弱体化しているとは言っても、そんな少人数で西へ攻めたら、負けるのは必須。なぜなら、魔王不在の西の土地に派閥がたくさんできて、兵を集結させているらしいの。なのに、天空の魔王は大部隊を動かす気配がない。何を考えているのか、さっぱりわからないわ。他の魔王達も、この動きがわからず、様子見で動かない」

「とまあ、これが私達の最新情報よ」


 ネリーは、右肘をテーブルにつけて、右手に渋い表情の顔を乗せている。

 口は固く閉じて、への字のように曲がり、鼻からため息を漏らす。

「つまり、トール・ヴォルフ・ローテンシュタインは、エルフの森に連れて行かれたらしい。一方で、魔界では、天空の魔王が偵察目的らしい中隊を編成して、西の様子を窺いに行こうとしている。この2つを結びつけると、どうなる?」

 誰に向かって問いかけているのかわからない質問が、テーブルの上に投げ出される。

 行き場を失ったそれは、もちろん誰も拾わず、皆はただただテーブルの上に視線を落とす。

 2つの因果関係が、さっぱりわからない。彼らの思考はシュリンクする。


 双子は、自分達の仕事を終えたつもりになっており、二人ともさっきから右手の指で、お下げの先をクルクルと回している。

 推理に興味が失せた彼女達がテーブルの汚れを見飽きた頃、アーデルハイトがはたと膝を打った。


「わかったわ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
cont_access.php?citi_cont_id=229234444&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ