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僕と幼馴染みと黒猫の異世界冒険譚  作者: s_stein
第四章 魔界騒乱編

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第286話 左腕に取り込まれる剣

 だが、剣に近づくほど、人を拒絶するような圧力を感じて、トールの歩みが鈍った。

 その圧力は、まるで向かい風を受けているようだ。

 剣は、一層光り輝く。

 それはあたかも、剣が自分の意志を持っていて、手に取る資格のない者を排除するかのように。

 周囲は全くの無風なのに、トールの髪は激しくなびき、頬の筋肉は歪む。服が翻り、腰が浮く。

 彼は重心を低くし、前傾姿勢になって右腕を伸ばし、一歩一歩近づいた。

 強烈な風圧に似た圧力が、上体を起こそうとする。

 目を開けていられない。

 太い柄が、自分の長剣の2倍もあるそれが、徐々に閉じる瞼から消えそうになる。


 彼は、ありったけの力を振り絞って腕を伸ばす。

 柄に中指が掛かった。人差し指、薬指、小指、最後に親指。

 彼は、柄を固く握りしめる。

 そして、体を引き寄せ、今度は柄を両手で握った。

 強烈な風圧で飛ばされそうになるも、彼は渾身の力を込めて引き抜くことを試みる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 咆哮する彼の髪の毛は逆立ち、みるみるうちに金髪に。そして、目の色も燃えるような赤に。

 再び、精霊と同じ金髪灼眼になったのだ。

 そして、彼の全身は、剣と同調するかように、恐ろしいほど光り輝いた。

 数秒後、


 ググググググググググッ……


 低い音を立てながら、剣が徐々に石版から抜け出てきた。


 ところが彼は、慌てて柄から両手を離した。

 なんと、途中で剣の方からせり上がってきたのだ。

 2メートルはあろうかと思われる剣が、石版から抜けて宙に浮く。

 大男の剣だ。

 見上げる彼は、突然、何者かの強い力で左腕を上方向に引っ張られた。


「うああああああああああああああああああああっ!」


 肩から外れそうなほど左腕を突き上げた彼は、叫び声を上げた。

 すると、剣がゆっくりと180度ほど回転。

 そして、柄の方からスーッと彼の左手のひらへ向かっていく。

 柄の先端が手のひらに触れると、幅広の刀身が圧縮されるように狭まり、手のひらから左腕の中へ吸い込まれる。

 徐々に収まっていく風圧。

 左手のひらから剣先が消えると、風圧は完全に治まった。


 と同時に、男と女は、その場にへたり込む。

 金髪灼眼のトールは、腰に手を当て、二人を交互に見た。

「どういうことだ? なぜこうなった?」

 すると、男の方がやっとの思いで喉から声を絞り出す。

「そ、……それは、こちらが聞きたいくらいだ。俺たちエルフの伝承と違う」

「伝承? どんな伝承だ?」


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